🎁今回、月下さんの元恋人(ペット)から被害を受けた殺人未遂事件も慰謝料請求のみの示談として事が進み、やっとこの今のペットの方々が彷徨く場所での相談をすることも無くなる。
なんだかほっとした様な変な気持ちだ。
そもそもどうしてここじゃないといけなかったのか…
私たちが話をしている間、ご主人様に構って貰えないペットたちはソファの近くでキスをしたり半裸で触り合ったり、小さく甘い声を上げている。
「月さーん♡お話終わった?」
目の前で恒例のイチャつきが始まった。
黒髪を緩く纏めた美しい目鼻立ちの男、依頼人の月下 香とその男に金髪の天使の様な容姿の少年が抱きついて甘えている。
「あぁ、ミト、良い子にしてて偉かったな」
月下がそのミトと呼ばれた少年の頭を撫でると、ミトはとろんとした笑顔を浮かべる。
「あ、あの…私はこれで失礼しますね…」
「えー弁護士先生もう帰っちゃうの?もう少しゆっくりしていきなよー♡」
「お茶のおかわりをいれてきますのでゆっくり待っててください。」
そう言って月下は立ち上がりキッチンへと消えていく。
他のペットの子達はキスに夢中になってるのか柔らかいカーペットの上でコロコロと戯れている。
「ねぇねぇ♡弁護士先生、さっき僕達のこと羨ましそうに見てたでしょ?えっち♡」
ミトは楽しいおもちゃでも見るようにじっと私を見つめる。
「へっ?!?み、見てないです…!と言うか…勝手に視界に入ってしまうと言うか…」
「弁護士先生って初心な反応するから可愛い♡ねぇ先生って恋人居る?この間来た時よりちょっと雰囲気変わったなぁって♡」
す、鋭い……と思わず思ったが
「…いえ、恋人は居ません。」
先日、ごまちゃんとのやり取りを思い出し、つい俯いてしまい。
「?あー!もしかして、セフレでも出来たのー?」
「せっ!!??えっ!??ち、ちがい…その、してはないですが少し似たのは…」
私は混乱してどんどん墓穴を掘っていく。
「あはは♡何何?どこまでしたの?えっちな事なら俺いーっぱい教えてあげるよ♡」
顔を真っ赤にしながら、誰かにこの不安な状態を打ち明けたくてつい口を滑らしていく。
「……き、気になる方に…手、で…下を触って貰ったり、く、口で奉仕した……り…」
「わぁ〜♡弁護士先生大胆♡すごいじゃーん!」
恥ずかし過ぎてぎゅっと膝を握り締める。
でも不思議と軽蔑されず、寧ろ肯定してくれる態度に何だか嬉しくなってしまった。
「じゃあ、次はえっち?後ろは使ったことある?最初は痛いからちゃんと解さなきゃだよぉ?」
「えっ……ち…って…」
そういえば、キスもまだ…いえ、これは好き同士の方がするべきですよね…。
なんだか恥ずかしいやら悲しいやらで、思わず両手で顔を覆う。
「ミト、あまりからかわない。」
紅茶のいい香りが部屋に漂う。月下は新しいポットに暖かい紅茶をいれリビングへと戻ってきた。
「…賀上先生、気になる方がいらっしゃったんですね?残念。もしもこの子達の仲間に入りたい時はいつでも言ってくださいね?」
にっこりと月下は静かに笑う。
なんだか逆らえない様な雰囲気を持つこの子達のご主人様…。私の性癖上、魅力的で惹かれる所はあるけども、私は身の程知らずにも、私一人だけを見てくれる。愛してくれる方が欲しかったのだ。
なので、この方のペットになるのはなんだか怖くてずっと断ってしまっている。
「………こっぴどく振られたら、考えときます。」
月下さんの言ってることはただの気まぐれで、独り者の私をからかっているだけだろう。
私は…ごまちゃんにこの想いを伝える日はきっと来ない。私を好きになってくれる方はきっと居ない。それでも心の中では、人に愛されてみたい。
…と、自分の図々しさに笑ってしまう。
「あ!そうだぁ♡ローター使ったことある?これから初めてゆっくり後ろ慣らせば良いよ!」
はいコレ!と、未開封の袋に入ったピンク色の小さな卵のような物体を出し。
こ、これが…ローター……
「い、要らないです!!遠慮します…!」
「いいからいいから♡中に入れるの怖かったら、乳首に当てたりしても気持ちぃーからさー♡」
なんだかこの子のノリは昔からの友人のあの子にちょっと似てて勝てない……
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と、言うことで無理やり持たされてしまったローター……
帰宅してからつい袋から開けてスイッチを押すとブブブっと鈍い音を立てながら震えるその玩具に、かぁっと顔が熱くなる。
こんなの、ごまちゃんに見られたら……
ど、どうしよう…