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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    ハッ主、本編前のネタバレ注意。
    ハと主がお互いのことを好きだと意識した瞬間、みたいなところを書きたかった。

    ##6(ハッ主)

    好きかもしれない ぽつ、と、顔が濡れた感触がした。
     あれ、と思って上を見ると、また、ぽつ、ぽつ、と顔に水滴が落ちてくる。
    「雨だな」
     隣で、ハッサンが空を睨みつけるように見上げながらそう言った。
     雨、と口の中で呟く。そのままぼんやりと曇った空を眺めていると、頭の上に何かがばさりとかぶせられ、ボクは驚いた。
     目の前が真っ暗だ。慌てて、目の前を塞ぐ、自分にかけられた何かを手に取って見てみると、それは。
    「……黒い布?」
     何だろう、と思ってそれをしげしげと眺める。その後にふとハッサンを見て、あっ、と思わず声を上げた。
     ハッサンはいつのまにか、いつもは肩に斜めがけしている荷物を手に持って、上半身には何も身に纏わない、裸の状態になっていて、……つまり、この黒い布は。
    「もしかしてこれ、ハッサンの上着?」
    「ん? おう、そうだぜ。雨よけにさ、まあ、ないよりマシだろ。それよりレック、あっちに洞窟みたいなのが見えるぞ。ちょっと雨宿りしようぜ」
     そう言い終わるが早いか、ハッサンはその上着をボクの手から奪い取り、再びボクの頭にかぶせると、ボクの手を握って走り出した。
     雨足はあっという間に強くなり、頭の上にかぶせられた上着に、ぱたぱたと雨粒がぶつかる音と感触がする。
     腕にもその感触が絶え間なく続く。
     でも、繋いだハッサンの大きな手がいつになく熱くて、濡れた腕なんかすぐに乾いてしまいそうな気がした。

     そのまま少し走って、ボクとハッサンは、切り立った岩山にぽっかりと空いた洞窟に飛び込んだ。中はさほど広くはなかったが、ふたりくらいなら十分入れる広さがある。
    「ちょうどいい洞窟があってよかったぜ」
     やれやれ、びしょ濡れになっちまった、と言いながら、ハッサンが自身の荷物のふくろを探る。中から布を取り出し、自分の顔や体についた水滴を拭う様子を、ボクはぼうっと見つめてしまった。
     ハッサンと、たまたま城の中庭で出会って、一緒に旅を始めたのは、ほんの少し前のこと。だから、ボクはこれまで、ハッサンが上着を脱いだところをまじまじと見たことがなかった。
     その鍛えられた逞しい体を改めて目の当たりにして、感嘆のため息が出る。
     格好いい。すごいな、…ボクも、城でトム兵士長に鍛えてもらって頑張ったつもりだったけれど、ハッサンに比べたらまだまだだ。
     そんなボクをハッサンが不思議そうに見る。
    「どうした、ため息ついて。大丈夫か?」
     疲れたか、と聞かれて、ぶんぶんと首を振る。
     その途端に頭からばさりと落ちてきた、ハッサンの上着をボクは慌てて掴んだ。ボクの頭の上で雨に打たれたその上着は、もう水分を含んでかなり濡れている。
    「あの、…ありがとう、ハッサン。ごめん、上着、かなり濡らしちゃって…それに、ハッサンもずいぶん濡れて……大丈夫? 体冷やしたら風邪ひいちゃうから、気をつけて」
    「へっ? ああ、いや、気にすんなよ! オレがしたくてやっただけだし! 頭はともかく体だけは丈夫だからよ、風邪なんかひかねえって! それにほら、水もしたたる何とやらって言うだろ? レックほどじゃねえけど、男前になったか?」
     そう言いながら、ハッサンは冗談めかした表情でにっと笑った。
     そんなハッサンの笑顔を見て、なぜだか胸がどくんどくんと速いリズムを刻む。そして、自分に向けられるその親しさと優しさに、じんわりと涙が滲んだ。
     こんな風にされたことなんてなかった。
     いや、……城には、優しい人もいた。でも、皆やっぱり、どこか、王子であるボクとは一線を引いて付き合ってくれているように感じていたし、家族である父上も母上も、そしてセーラも、もう、言葉を交わすこともできなくなって。
     ボクは、滲んできた涙をごしごしと手の甲で拭いた。そして、ボクもハッサンに向かってとびっきりの笑顔を向ける。
    「ハッサンは水に濡れなくたって、いつでも格好いいよ。強いし、それにすごく優しいし、面倒見もいいし、本当に、ハッサンより格好いい人なんていないよ」
     そう、ずっと、中庭で初めて出会ったあの時から、ボクはハッサンのこと、そう思ってる。何とかしてやろうと思って、と、言ってくれたその時から。そして今も、改めてそう思ったところなんだから。
     ボクがそう言って、微笑みながらハッサンの顔を見ると、ハッサンは、ぽかんと口を開け、目を丸くしてボクの顔を見返してきた。
     そして、だんだんと顔を赤くして、なんだかきまりの悪そうな顔でそっぽを向いてしまう。
     どうしたのかな、と思って、ハッサンと目線を合わせようと移動すると、またふいっと顔を背けられてしまった。そんなハッサンは、なぜか顔だけじゃなく、耳の後ろの方まで赤くなっていて、ボクは首を傾げる。
    「ハッサン? ねえ、どうしたの」
    「いっ、いやっ、別にっ、あの、……その」
     ありがとよ、とぽつりと呟いたその口調は、ハッサンには珍しく、いつになくぶっきらぼうで、ボクはまた首を傾げたのだった。
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