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    223rinone

    @223rinone

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    223rinone

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    キスしないと出られない部屋の没。ビくん視点で完成させたやつとはだいぶ内容が異なるけどまあまあ気に入ってはいたので供養。

    強く体を揺さぶられる衝撃で目が覚めた。
    視界に最初に映ったのは、あまり仲がいいとは言えない男が心配そうにこちらを覗き込んでくる姿だった。

    「ビート」
    「んん…」
    「頼む、起きて欲しいんだぞ…」
    「…なんですか…全く。あなた、どうやってぼくの部屋に…」

    入って来たんですか。そう言いかけて、止まる。同時に目も覚めた。
    ホップの姿の後ろに広がる光景は自分の部屋とは似ても似つかない真っ白で何もない空間が広がっていたのだ。

    「は…? どこです、ここ」
    「わからない。オレも寝ていて、気付いたらここにいたんだ」

    ぼくが何も知らない様子であることを認めたホップくんは気落ちしたようにため息をつきながら現状を説明してくれる。
    どうやら彼は夜いつも通り自室のベッドで眠り、目が覚めたらここにいたらしい。真っ白なこの部屋には鍵がかかった扉が一枚あるだけで他には何もない。ぼくが目を覚さぬ間他に出口はないのかと隅々まで探していたそうだ。

    「調べるのも終わったし、ビートなら何かいい案を出してくれるかもしれないと思って、起こしたんだ」
    「出来ればもっと早く起こして欲しかったものですがね」
    「ご、ごめん」

    彼がぼくを起こさなかった理由をぼくは理解はできていた。ぼくはジムチャレンジ時代に彼を酷く打ち負かしたことがある。それ故にきっと彼はぼくのことが苦手なのだろう。密室に二人きり。しかも苦手な相手のぼくとなればあまり起こす気にもなれないというものだ。

    「あの扉以外何もないんですね?」
    「い、いや…厳密に言えば、その、一つだけあるんだ」
    「一つだけ? 見たところ何もありませんが」
    「…これを見て欲しいんだぞ」

    そう言ってホップくんがおずおずと手渡してくれたのは一枚の紙切れだった。

    「起きた時、これが近くに落ちてて」

    なぜそれを早く言ってくれなかったのだろう。ホップくんの行動が理解できなかったが、とりあえずは紙切れを受け取りじっくりと見てみることにきた。何も書かれていない方を向けて渡してきたようで、紙切れを裏返すと文字が書かれているのが見てとれる。

    『キスしないと出られない部屋』

    「…」
    「…」

    ゆっくりと顔を上げてホップくんを見ると、俯いてしまっていた。
    なるほど、だからこの紙の存在を初めに教えてくれなかったのか。

    「これはもちろんあなたが書いたものではないんですよね?」
    「当たり前なんだぞ! 嘘なんて言ってない! 起きたら本当にこれが落ちてたんだ!!」

    焦った様子でこちらにそう訴えかけてくるホップくんの姿に、思わず眉間に皺を寄せてしまう。必死すぎやしないか。

    「煩い人だな。こんな近距離で大きな声を出さないでくれます? 鼓膜が破れそうだ」
    「ご、ごめん…」
    「そもそも疑ってなんかいませんよ。あなたは嘘がつけるほど器用な人だとは思えないし、もし嘘だとしてもこんな内容を書くメリットがあなたにはない。ただ確認のために聞いただけです」

    紙には先ほどの一文以外は何も書かれてはいない。これ以外に紙はないのかと周りを見渡すが真っ白な空間があるのみで何もないことが一目瞭然であった。

    「どうします」
    「ど、どうするって?」
    「しますか、キス」
    「えぇ!?」
    「だってそれしかないでしょう? 手がかりはこの紙だけで出口は鍵がかかっているんですから」

    念のため開くかどうか確認した扉はホップくんが言う通り鍵がかかっていて開かなかった。隠し扉などある様子もないし、本当にこれしか手段はないのだろう。

    「いや、それはわかってる。わかってるんだけど…」
    「だけど?」

    そう言いながらホップくんは何もないのにきょろきょろとあたりに視線を彷徨わせ、どう言い出せばいいものかと考えあぐねていた。

    「…あなた、キスしたことないんですか」

    そう問いかけるとホップくんは一気に顔を赤く染める。なるほど、言いたかったのはそのことだったらしい。

    「お、お前はしたことあるのかよ…!」
    「ありませんよ。でも減るものでもないでしょう?」

    そう言い捨てると信じられないとでも言うようにホップくんはこちらの顔を凝視してきた。やはりこの男、元気で明るく活発なところとは似合わず繊細で面倒臭いところがあるのだと無駄に再確認してしまった。

    「初めては大切にするものだろ!」
    「はあ、あなたの思う普通は知りませんけど、別にぼくにとってはどうでもいいものなので」
    「どうでもいいって、お前な…! そもそもオレとキスするのに抵抗とかないのかよ!」
    「しなければいいならしたくありませんよ。でもぼくはここから出たいので」

    このままダラダラと話していたら埒があかない。さっさと出る越したことはないので、無遠慮にホップくんにキスを仕掛けようとすると
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