檸檬と砂糖檸檬と砂糖
料理が好きだ。
美味しいものが好きだから。料理している間はそれだけに集中出来るから。
籠にたっぷり積まれた檸檬を一つ手に取って鼻先を近付ける。
少し苦い柑橘の瑞々しい香りが快い。
流しで丁寧に檸檬の身を洗って、その表皮を削る。今日作る菓子に檸檬は欠かせない。
常温に戻したバターをボウルに入れて白っぽくなるまで良く混ぜる。色が変わって来た所に砂糖を加えてふんわりするまでとにかく良く混ぜていくのがポイントだ。
今回使う砂糖はレヴォネ領で初めて採れたてん菜から作られた砂糖だ。「俺」の世界ではてん菜糖と呼ばれる茶色い砂糖で、上白糖よりもミネラルやオリゴ糖を多く含んでいるらしい。
今回作る菓子は上白糖でしか作った事がないから上手く出来るか少々不安に思いながらひたすら混ぜる。
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