甘い甘い琥珀糖 「やっと終わった~。ありがとうね、リー。」
「いえいえ、このぐらいならいつでも呼んでくださいよ。いつでも駆け付けますんで。」
丁度任務が終わった二人は今、龍門のスラム街に用事があり来ていた。
「ちょうどグレ…鼠王に頼まれていた任務があったけど、それがまさしく探偵の様なものでさ。私は尾行なんてやったこともないから助かったよ。」
「あー、あの人の依頼だったんですね。だから報酬が飴ちゃんってわけですか。」
「意外とおいしいだろ。これを機に禁煙でもしたらどうだい、リー〝先生〟。」
「おや、まさか〝生徒〟からそんな事言われるなんて、こりゃぁ考えないとですな。」
そう言いながら報酬の琥珀糖をなめながら帰宅をしていた。
「そうだ、今日リーの家で泊ってもいいかな?明日、こっちにヘリが来るからそれまで泊まらせてくれよ。」
そう言いながらドクターは飴をなめていると、喋っていたから口から離れてしまった。
「あ、」
だが、その時のは知っている手が飴を取ろうとしていた。
(さすがはリー、反応が早いな。)などと思った。
と、同時に
『バギッ』
とても鈍い音と同時にもう一つの綺麗な蜂蜜色の様な、爽やかな黄色のした琥珀糖が目の前に散った。
その景色はとても美しく、息をのむほどだった。
それが琥珀糖であればの話だが。
出来事は一瞬だった。
きっと遠くにスナイパーが居たのだろう。ロドスは恨みを買うことが多い。だから常に狙われる。私を殺したいと思う人も多く居るだろう。そしてそいつは私を狙い弾を打った。
しかし、その弾は不運にも私を貫かなかった。飴を拾おうとしたリー、そのリーの角に当たったのだ。
すぐに状況を理解した。
それと同時に血の気が一気に引いた。
「リー」
「あぁ……」
「リー大丈夫かおい」
「右に曲がった建物に…行って…」
そういわれ、必死にドクターは倒れたリーを抱え、引きずりながらも建物の間に隠れた。
「リー…リー」
「声がデカいです…少し小さく…いてて…」
「だって…!だ、大丈夫なのか…!」
「大丈夫でさぁ…少し脳震盪が起こってるぐらいですので…あ、そうだ。電話で今すぐロドスに迎えたりは出来ますでしょうか…さすがに出血はひどいようで…」
「わかったから…!今は何もしないでくれ!応急手当をするから…」
「了解しました…」
その後ロドスのヘリはすぐに来て、ドクターとリーが居るところまですぐ向かってきてくれた。
応急処置をしていたため出血はギリギリのところで収まっており、何とかリーは一命をとりとめが、かなりの損傷を負っているため緊急手術となった。その時にはリーの反応はなかった。
それから一週間後。
リーは眠りから覚めた。
「んん…あぁ……いてっ…!」
頭に痛みを感じたリーは同時にその時の出来事を思い出した。
(あぁ、そっか…あの時、角に……災難だったな…角、生え変わらないのに…)
そんな呑気なことを考えてると膝に重みを感じた。
そこには目を真っ赤にして眠っているドクターが居た。
隣の机には慣れない中頑張って剥いたであろう、不格好で水分のないりんご。その横には点滴の数々。その多さにはさすがにびっくりした。
(そんな重傷を負っていたのか…そっか……)
そんな中、
「…リー…」
その声はとても小さく、布団の擦れた音で消えてしまいそうな、繊細な声だった。
「…ドクター…すみませんね…あのような記憶をさせてしまって…」
そう言いながらリーはドクターの前髪を撫でる。その髪は柔らかく、窓からの光も相まって、それは美しいものだった。
「でも、ドクター。私は今回のこと、この傷を恨んだりするつもりはありませんよ。だって…」
『 』
その言葉は布団の擦れる音で消えてしまったが、ドクターの顔は優しく、安心するかのように笑っていた。
「…もう少しだけ、寝ときますか。」
水分のないりんごを一切れ食べた後、彼もゆっくりと横になった。
温かい日差しのかかった部屋。
その色は、蜂蜜色で、鮮やかな黄色の様だった。