命運前夜祭『そろそろ誕生日だね』
『何か欲しいものはある?』
実兄から送られてきたメッセージ。
ぼくは、カレンダーを見る。あと一週間足らずで、ぼくは19歳になる。
『いいイヤホンが欲しい』
ぼくはそう送った。兄からは、すぐに『了解』の返信が来た。
ぼくは鏡を見た。兄が作ったクラゲの被り物、その触手が揺れた。
前まではヘッドフォンを愛用していたけれど、この被り物をしながらヘッドフォンをつけることはできない。できれば、カナル型のイヤホンが欲しい。低音の響く、ちょっといいもの。
幼い頃は貧乏を極めた生活をしてきたから、安かろう悪かろうには慣れているけれど。どうせ今は、二人兄弟にら余りあるほどの金をもらっている。だから、幼い頃の分を取り返すつもりで贅沢したって罰は当たらないだろう。
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