某月某日、クロスベル空港にて。
「あ、ロイド君、リィン君っ!久しぶりね、元気だった?」
リベールからの飛行船が到着した空港ロビーにて。
明るい栗色の髪の女性、エステルが、ロビーにいた2人組にブンブンと大きく手を振りながら呼びかける。
その様子に、相変わらずだなあ、と答えたのは茶髪の少し癖っ毛の青年、ロイドで、変わりないよ、と答えたのは、エステルより少し先に到着していた黒髪の青年、リィンだった。
3人は久しぶりの再会を喜び、そのままそこで話に花を咲かせ始める。
「共和国ではテロとか色々あったらしいわね。レンから話を聞いたわ」
「ああ。クロスベルでも対応に追われたけど、どうにか解決したようでほっとしてるよ」
「俺の方も、交換留学でアラミスに行っている生徒の1人が巻き込まれたっていうんで心配したけど、何とかなって良かった。それで、今回俺たちが集まる事になったのは、その時尽力した人を紹介したいから、だったか?フィーから突然連絡が来て驚いたけど」
「私の方はジンさんとレンからね。何でも、裏解決屋さん?とかって聞いたけど」
「俺はレンから連絡が来たな。警察や遊撃士には相談しにくいような事情を抱えた人たちの力になってるって聞いた」
とそこへ、共和国からの飛行船の到着を告げるアナウンスが鳴り、3人は顔を見合わせる。
「確かこの便のはずだよな?ロイド」
「ああ。本人には別の場所を待ち合わせ場所として伝えてあるらしいけど、このまま待ち伏せるんだったか」
「私たちの顔を見たら逃げるかもってジンさんが言ってたけど、どういう事かしら?」
それはまあ、と口を開きかけたロイドの言葉を遮るように、そこへ割り込む声がひとつ。
「だって、あのカシウス・ブライトの娘に今やすっかり有名になった特務支援課のリーダー、それに帝国の灰色の騎士っていう、そうそうたる面子だし。…や、久しぶりだね、リィン。それに、エステルにロイドも」
「あ、フィー。無事に着いたんだな?」
突如会話に割り込んできたのは白銀の髪の女性、フィーだった。しばらく共和国に行っていたため、リィンとも久しぶりの再会だ。
「うん。ジンは向こうで駄々をこねてる人を宥めてるんだけど、一足先にちゃんと着いたって知らせに来たよ」
「駄々を、こねてる?……ええと、俺より1つ上って聞いてるんだが」
「ん。3人の姿が見えた途端に、こんな面子と顔を合わせるなんて聞いてない、俺は帰るって言い出した」
「そ、それはまた、何と言うか……」
「大人げない、で良いのかな?この場合」
そんな話をしていると、何やら言い争う声が少しずつ近づいてくる。
「おら、いい加減腹を括れ、アークライド。大丈夫だ、気さくで良い奴らだから」
「そういう問題じゃねえっ!何で俺が、そいつらと会わなくちゃならんのかって聞いてんだ!」
「それがお前さんのためになると思ったからだな。あいつらと縁を繋いでおけば、今後また何かあった時に、力になってもらえるぞ?」
「何かあるとは限らねえだろうが!」
「むしろ何もない可能性の方が低いと思うがな。それはお前さんだって分かってるだろうが」
「ぐ。…くそっ、あんた本当に食えないなっ」
「やっと来た。遅いよ、ジン。ヴァンも」
「いやー、すまんすまん。こいつがなかなか動いてくれなくてな」
「それで腕を掴んで引きずって来たの?ジンさんってそんな事する人だったっけ?」
「よう、エステル。久しぶりだな。そちらのおふたりさんも、変わりないようで何よりだ」
「ご、ご無沙汰しています……」
「色々大変だったと聞いていますが、お元気そうで何よりです……」
そして現れたのは大柄な長髪の男性と、その男性に腕を掴まれて引きずられるようにして歩く青年だった。
その様子に唖然としつつも3人が大柄な男性、ジンと挨拶を交わした後、視線は自然ともう1人に集まったため、さすがに罰が悪そうな顔で青年は自己紹介をする。
「………ヴァン・アークライド。解決事務所、まあ何でも屋みたいな事をやってる」
「ヴァンさん、ね。あたしはエステル・ブライト。貴方の事はレンから聞いてるわ。どうぞよろしく」
「俺はクロスベル警察、特務支援課所属、ロイド・バニングスです」
「リィン・シュバルツァー。トールズ士官学院第Ⅱ分校の教官を務めています」
「「よろしくお願いします」」
「知ってるよ。お前ら全員有名だからな。リベールの異変解決の立役者にクロスベル再独立の立役者、そして帝国の灰色の騎士。…ったく、何でこんな事になったのかねえ」
ため息をつくヴァンに苦笑する3人。その様子を見るジンとフィーは、これじゃどっちが年下なんだか、と思う。
そして、立ち話も何だし移動しませんか、とのロイドからの提案でぞろぞろと歩き出す一行は、共通の知己、レンの事や、共和国についてのあれこれなど、話をしながら、これだけの面子が集まっても気兼ねなく話が出来る場所、本来の目的地である特務支援課のビルへと向かうのだった。
なお支援課では、ヴァンが無類のスイーツ好きだとあらかじめ聞いていたメンバーが買い揃えたお菓子にエリィ手作りのお菓子も用意されていて、それに目を輝かせるヴァンに他の面子が苦笑し、ジンとフィーは再びどっちが年下なんだか、と思ったとか何とか。
おしまい
発売日にふせったに投げた落書き
いつか、何処かにて
「やあ、エステル、リィン」
「あ、ロイド君!」
「久しぶり、と言う程でもないかな。元気だったか?」
「ああ。まあ、支援要請は引っ切りなしで、忙しくはあるけどな。…君たちも、変わりなさそうだな?」
「ええ。あたしもヨシュアも相変わらず、リベール中を駆けずり回ってるわ」
「俺も生徒たちも変わりはないよ。ところで、今日は何で集められたんだ?」
「ええとね。私たちに引き合わせたい人がいるってジンさんが。ああ、ええと…」
「不動のジン、だったか?共和国の凄腕の遊撃士だよな。かつて君たちとリベールの異変を解決した人で、オリヴァルト殿下の結婚式でお会いした…。わざわざ俺たちに引き合わせたいって、どういう人なんだろう?」
「それが、詳しい事は教えてくれなかったのよね。とにかく会って欲しいって言うだけで。…そろそろ来ると思うんだけど」
「うーん。まあ、それ程の人が引き合わせたいって言うんだ。何かしらの理由はあるんだろう。どんな人なのか楽しみだな!」
和気あいあい、盛り上がっている3人組。そしてその様子を少し遠くから見守る男がひとり…。
「あそこに混ざれってのか?…あいつら全員なんか良いとこの嬢ちゃん坊っちゃんぽい、てかあいつ、灰色の騎士じゃねえか。それにクロスベルの特務支援課のリーダーにリベールの異変解決の立役者…。おいおい、冗談じゃねえぞ?」
リィンが彼の気配に気づくまで後少し。
そしてエステルが後ずさりする彼を取っ捕まえて、ぎゅっと手を握りながらにこやかに自己紹介をし、その様子にロイドとリィンが苦笑する事になるのだが、今はまだ、その事は空の女神のみが知っている。