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    きゃら

    オベヴォにお熱
    お題箱→ https://odaibako.net/u/kyara_his

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    きゃら

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    夏イベ始まる前に書きたかったCMのワンカットからのオベヴォ

    南国の特異点。
    ブリテンとは全く違う気候のそこで、わざわざマスターたちは水着というものを用意してくれた。
    昼間は日差しで焼けるほど暑く、夜は程よく気温が下がり海風が気持ち良い。そんな場所に適した服だった。
    ゆったりとしたオーバーサイズなパーカーに半ズボン。可愛らしいリボンまで付いていた。
    白色のそれをオベロンに譲った。
    1着しかなかったのだ。自分には似合わないとオベロンに渡した。
    「ヴォーティは?着ないの?」
    「いいよ、俺はいつもの格好で。別に観光するつもりもないし。それにそういう服はオベロンの方が似合ってる」
    オベロンは一瞬嬉しそうな顔をしたものの、またしゅん、と落ち込んだ。
    「でもせっかくの南の国だよ?たまにはハメを外して君だって遊びたいだろ」
    「遊ぶなんて、そんなのガラじゃないし」
    「ガラとかそういうのじゃなくて。君だってはしゃぐ権利くらいあるだろ?」
    真っ直ぐ見てくるオベロンの目から視線を外した。
    なにをしたらいいのか分からない、というのが本音だった。
    遊ぶって言ってもなにをするの?
    ハメを外すってなに?
    頭ではなんとなく理解していても具体的な行動に移すことはできない。やりたい事もないしやりたかった事もない。むしろオベロンが何かしたいのではないか。
    「オベロンがしたいことに付き合うよ。俺は本当に、なにもないから」
    「こんなところに来てるのに?」
    「どこに来たって同じだよ。ここに来たからやりたい事はない」
    オベロンは諦めたようにヴォーティガーンの手を離し、腕にパーカーを掛け直した。
    「着替えてくるの?」
    「うん。せっかく貰ったものだし」
    「そう。それじゃあ俺はホテルで休んでるから」
    「えっ、」
    驚いたオベロンはその場で固まった。
    「なに驚いてんの。こんなに暑いんだから外行くわけないじゃん」
    「デートしてくれないの!?」
    「デートぉ?行かないよ」
    「1日ホテルにいるの!?」
    「1日ってことはないけど、いまは無理」
    「えっ、え、まって、待ってよ」
    ホテルへ向かうヴォーティガーンを追いかけていくオベロンは背後から声をかけられた。嫌でも覚えているその声に、オベロンはキッと目つきを鋭くして睨みつけた。
    「あれ、まだ着替えてないの?」
    「うるさいマスター!僕はいまヴォーティと大事な話を、っていない!?」
    一瞬目を離した隙に逃げ出したらしい。
    なにも知らないマスターは置いて行かれたオベロンの状況も理解できていない。首を傾げて「どうしたの」と尋ねて肩を思いっきり殴られていた。
    マスターやみんなが必要としているオベロンは彼の方で、異聞帯と同様に自分はただ悪役に徹していれば良い。つまるところこの平和ボケした世界に自分は不要ということだ。
    賑やかな声を背後で聴きつつ、少し寂しく感じながらヴォーティガーンはホテルの中へ入って行った。

    波の音と涼しい風に目を覚ますと、外はすっかり陽が傾き始めていた。
    サンセットのオレンジ色の浜辺の人はまばらになっており、サーヴァントたちの姿も少なくなっている。
    オベロンはまだ帰ってきていないのかと暗くなった部屋の明かりをつける。
    隣のマスターの部屋も静かで、日中から遊びに行ったまま帰ってきていないようだった。
    ふらふらとまたベッドに戻ろうかとしていた視界に大きな包みが入り込む。
    昼間戻ってきた時にはなかった箱だった。
    綺麗にラッピングされた箱は少し重いが食べ物ではなさそうだ。マスターたちが作っている同人誌というものかとも思ったがそれにしては箱が大きすぎる。
    大きなリボンの根元にカードが挟まれてるのに気がついて、なんとなくそれを手に取って裏返した。
    メッセージカードを見たヴォーティガーンの眉間に皺が寄る。
    宛先が書かれたカードは見覚えのある筆跡で、わざと魔力の痕跡を残していた。考えるまでもなく身体が知っているその魔力はオベロンのものだ。
    彼は日中別れた後、わざわざ寝ている部屋にこの箱を届けにきたのだ。ヴォーティガーン宛であるにも関わらず本人に声もかけずに。
    なにを考えているのか時々わからなくなるが、彼はこれを受け取った相手の反応を考えているのだろうか。
    とりあえず中身を確認しようとリボンを丁寧に解いて箱を開けた。
    入っていたのは服だった。普段着ているような白いブラウスだが少しだけ生地が薄い。素肌が見える事はないものの、なんとなく心許なさがある。
    それになんだか丈もずいぶん長い。サイズを間違えているのか?オベロンがそんなミスをするとは思えないけれど。
    肌触りはよく、軽くて動きやすさはあったがやはり生地が薄い。
    部屋の姿見で細目になりながら届いた服に袖を通した。
    控えめなフリルはヴォーティガーンの好みを反映しているようだった。ゆったりとしたシルエットも悪くない。丈は長くて膝丈まであった。
    姿見で見た印象と首から上の頭を見てヴォーティガーンは顔を顰めた。
    「………俺、じゃないだろ」
    あまりにも自分の雰囲気とかけ離れている。
    清楚。清純。清廉。パッと浮かんだのはそんな言葉。
    けれどそれを身に纏っているのは死に損ないの羽虫だ。服の裾や袖から伸びている手足は決して色白の柔肌などではなくて、ギシギシと音のなる異形のものだ。
    なぜオベロンはこんな服を用意したのだろう。まさか似合うと思って用意したのか。
    メッセージカードには「18時に浜辺で」と書かれていた。
    服の入っていた箱に添えられたカードだ。服を着てこいという意味である事は流石にヴォーティガーンだって理解している。だからこそこの姿を見せたくなかった。
    せっかくオベロンが用意してくれた服なのに、醜いと思われないだろうか。似合わなかったね、と笑われないだろうか。
    もだもだと鏡の前で裾を弄りながらヴォーティガーンは悩んでいた。
    約束の時間まで気がつけばもう10分もなかった。

    眩しい夕焼けもずいぶん海の向こう側に沈んでしまった。
    約束の時間はすでに30分以上過ぎている。もしかして贈り物に気付かなかったのか、まさか起きていないのか、なんて不安もあった。
    月が登ったら大人しく部屋に戻ろう。それまではこの浜辺で彼を待つつもりでいた。
    陽の下に出たがらないのなら陽の落ちた夜に誘えばいい。
    太陽の下にいるべきはどちらか、なんて非常にくだらなくてナンセンスな問題だ。いつまで経っても彼は自分で動くことをしない。望むことをしない。
    彼を縛るブリテン異聞帯はもうない。彼に命令するものはもうなにもない。誰に従う必要もなくなったのに、彼はいつもぽつんと一人でこちらを見ている。
    手を差し伸べても彼は困った顔をするだけで、応えてくれない。
    きっとどうしたら良いのかわからないのだ。
    そんなこと考えなくて良いのに。
    背後からの小さな足音に、オベロンは必要のなくなったサングラスを外しながら振り返る。
    「やっと来た」
    せめて彼がまた顔を暗くしないように、笑って見せた。
    大きな麦わら帽子を目深に被った彼は一瞬誰だか分からない。顔を見せないようにしているのだ。
    けれどもオベロンには彼の姿がハッキリわかる。見えている手足が普通のものでも絶対わかった。
    ヴォーティガーンはほんの少しだけ目線を上げてオベロンを見つめると、再び帽子のつばを下げた。
    「照れているの?似合っているよ」
    オベロンが右手を差し出した。
    「ほ、ほんとうに?」
    「本当さ。僕が選んだのだから嘘なわけない」
    意地悪で選んだ言葉に、ヴォーティガーンは素直に反応をしてしまった。
    「俺の、ために選んだのか」
    「そうだよ。君だけなにもないのは可哀想だったから」
    「そんなことない。あの服だって、本当はオベロンに…」
    「ヴォーティ」
    少しだけ帽子を抑える手に力が込められている。
    「僕は君と歩きたい。そのために君に似合うと思った服を贈ったんだ。よく見せておくれ」
    戸惑いはヴォーティガーンの緩慢な動きで分かった。
    ゆっくりと焦らしているかのように時間をかけてヴォーティガーンは帽子を脱いだ。
    ようやく見えた月明かりに照らされたその姿にオベロンは目を細めた。
    「ほらね、やっぱりよく似合ってる」
    ヴォーティガーンの左手を取ると彼の手を引いて浜辺へ誘い出した。
    「夜は涼しいだろう。君もこのくらいならちょうど良いんじゃないか?」
    「……そう、だな」
    「人も少ないし」
    「ん、」
    俯いたままのヴォーティガーンにオベロンは手を離して海へ向かって駆け出した。
    突然手を離されたヴォーティガーンはオベロンの行方を探そうと顔をあげる。オベロンの姿を捉える前にその顔にまだぬるい海水がかけられた。
    「な、」
    突然水をかけられたヴォーティガーンは驚きながらその方向へ慌てて視線を向ける。イタズラに成功したような無邪気な顔をしたオベロンが、また海水を掬って立っていた。
    「オベ、」
    名前を呼ぶとまたその顔に水をかけられた。
    前髪から濡れて、せっかくのブラウスもびしょ濡れになっていた。
    「オーベローン!」
    2度も水をかけられたヴォーティガーンもついに海へ飛び込んで思いっきりオベロンへ水を浴びせかけた。
    「やったな!?」
    「お前が先に仕掛けたんだろうが!服が濡れた!」
    「浮かない顔をしているからだよ!」
    バシャバシャと音を立てて暴れながら声を上げて笑った。
    新しい服をびしょ濡れにして、最後は2人で海に倒れ込む。
    オベロンの上に乗っかったヴォーティガーンは自然と身を屈め、オベロンはその顔を寄せると塩味のするキスをした。
    「こんな場所で自分の役割なんて考える方が無駄だよ」
    どうせひと夏の幻のようなものなのだから。
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    きゃら

    DOODLE思ってたより長くなった続き
    「オベロンはほかのやつもそうやって優しくするのか」「しないよ。君だけ」「そんなに俺は弱々しく見えるのか?俺だってサーヴァントなんだし、さっきは血が出るのは嫌だと言ったけど別に後処理が面倒なだけで、痛いのが怖いとかじゃないからな!?」「そんなふうに考えてないよ」「好きな子に優しくするのは当たり前だろ」「わからないな」「なんでもしてあげたいんだよ。わかるだろ」「わかる」「僕は君に楽してもらいたいんだよ。苦しんだり我慢したりしてほしくないんだ。わかりましたか?」「それでオベロンになんのメリットがあるんだ」「メリットとかじゃないって」「だって俺はお前に、好きに、なってもらいたい、から…」「好きになってもらいたくてなんでもしてあげたいの?」「そうだよ。でも俺はお前が好きだし、別にお前が優しくしなくたってそれは変わらないよ。だったらお前は俺に優しくするだけ損じゃないか?お前が何か耐えてるならそれを俺だってなんとかしたいと思うに決まってる」「本当に我慢なんてしてないんだよ」「それは分かってるけど、でもさ…」「今まで君を抱いてきた奴は君のことなんか好きじゃなかったんだよ。好きな相手じゃなくてもこういうことができるのは君が1番知ってるだろ」「…」「僕は君が好きだから優しく抱くんだよ。君を気持ち良くするのに我慢なんてするわけないじゃないか」「………本当に?」「それとも実はヴォーティが激しいのが好きなのかな?」「そんなことない!それは無いから!」
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