ある夜のはなし「てめえら、裏閉めてこい。あと、備蓄の確認も」
おす!と威勢の良い声が重なり、てきぱきと動き出す。部下たちの指示が済んだら次は自分の番だ。調理場に向かって、頭の中で今ある食料で何日凌げるかを計算していく。肉が足りないから豆を使うか、しかしそれだとこの盗賊団の首領であり、ネロの相棒である男、ブラッドリーが満足しないだろう。
こりゃしばらくは猛吹雪でろくに出れねえな、と帰ってすぐブラッドリーが言ったのは数時間前だった。盗賊団にはそれほど強くない魔法使いもいる。ブラッドリーやネロなら吹雪の中でも耐え凌げるだろうが、仲間たちみんなとなると引きこもる方が安全だ。
ブラッドリーが言うには、オズの機嫌がどうにも悪いらしい。オズというのは世界最強の魔法使い、規格外の強さを持つ、伝承に出てくるような、燃えるような赤い瞳をした怪物なのだとか、ネロはあまり見たことがないためよく知らない。
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