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    ya__ma__do__ri

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    ya__ma__do__ri

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    銃理です ジュにペロリンチョされるリ

    随分とまぁ可愛らしい姿になったものだと彼を抱き上げる。

    勿論、普段なら叶わない行為だ。上背も体重も己より大きい筋肉質な成人男性を軽々と持ち上げるなど不可能と呼んで差し支えない。現在の毒島はまるでゲームセンターやアミューズメントパークで景品として売られているぬいぐるみである。もとより幼い顔立ちは更に幼児的柔らかさを増し、ハロウィーンの仮装が一層年齢不詳の外見に拍車をかけている。大腿の上に乗せ白い頬を撫でると、予想通りの柔さを感じた。あまりにも強く突くと破いてしまいそうであるが指先の心地よさが堪らない。入間は手袋を外して直接毒島の頬の感触を堪能し始めた。焼き立てのパン、蒸し上がった直後の饅頭。入間は昼餉を食べ損ねていたが、仕事で抜く事も多々あり慣れてしまっていたのと、現在の状況に驚いて己の肉体が空腹を訴えている事に気付かなかった。そして彼は朝もまともに食べていなかった。働き、山道を登り、疲れを感じた若く長身の肉体はエネルギーを求めていた。先程から頬を優しく撫で、突き、こねくり回す入間の頭はぼんやりとしており、翡翠の瞳もとろんとしている。結論を言えば糖分を求めていた。和菓子より洋菓子が好みである。
    猫を抱くのと同じ要領で毒島の腋の下に手を差し込み持ち上げる。今更だが奇妙な事に体重すら軽く、この皮膚の下には肉や血や骨や臓器やらではなく、綿が詰まっているのではなかろうか。綿というか、綿菓子というか、スポンジ生地というか。この青の瞳もキャンディーなのかもしれない。だって、甘い香りがするんだ、さっきからずっと。
    悪魔の仮装だと考えられる毒島の姿には角が生えていた。毒島から見て右側にはオレンジと青紫のリボンが少々雑に巻かれている。それを取ってしまえば、もう包装紙を外したチョコレートだった。入間は角に鼻を寄せ嗅ぐ。重すぎず軽すぎない甘ったるい香りがしていて、直下からの声を耳に入れているにも関わらず、さも当然のように角の先端を齧った。
    「じゅうと!」
    小さな固形は舌の上で転がり、唾液と混ざり合い、熱で融けていく。子供の時分から度々味わってきた濃厚な甘さと香りが咥内に広がった。眼前の食物が旨いと知ったならば空腹の者が取る行動はひとつだけ。食べるのだ。先が欠けた角に舌を這わして、咥えて、ストローのように吸う。入間の上品な形の口から、下品とも捉えられる水音が鳴る。空腹で、甘くて旨くて、唾液が溢れてくる。チョコレートと混ざり合った粘液が糸を引いて垂れていった。
    「やめろ、やめてくれ、ア、あァ」
    甘味を得手としない毒島は匂いも良しとしないはずである。頭では避けようとしつつ、しかし常なら拒絶する自身の肉体がさほど匂いを拒まない。現在の毒島の肉体は、通常の彼が求めない甘味そのものに塗り替わっているのであった。その事実が、思い通りに動かない肢体が、彼を混乱させていた。何より、明確な受け答えをしてくれない入間。疲労や寝不足、不摂生で低血糖症の入間に応急処置としてラムネやチョコレートバーを渡した事があった。今回の症状も恐らくそれなのだ。
    角を食むのを辞めようとしない彼に対して、背筋が粟立つ。角以外も菓子になっているとすれば、このままでは、手足も胴も頭も中も、食べ尽くされる。毒島は直感で分かった。小官は銃兎に全て食べられる。あの形の良い唇とよく回る舌と整った歯を使ってチョコレートの角を吸われ、キャンディーの目玉を舐められ、スポンジの臓器を噛まれるのだ。腹の底が戦慄いた。
    「あ、ぅ……、じゅう、と」
    どうやら角に痛覚は通っていないらしく、ただそこにあったものが失われた感覚だけが残っていた。甘さと粘性を含んだ温い液体が米神から頬へと伝っていく。水音が聞こえなくなった。食べる箇所が無くなったのだ。毒島は入間の手の甲を叩いた。小さく跳ねた手が毒島をチェアに降ろし、取り出したハンカチでべたつく側頭と顔を拭う。貴殿の口許も拭けと言うと目を覚まそうとするかのように力強く擦った。
    突如、毒島の中で内臓が一気に膨らむような感覚が起こり、瞬きの間には元の状態の姿に戻っていた。グローブを嵌めた大きな両手、重量のある脚、温度のある胴とそれを包む慣れ親しんだ軍服。手を伸ばし、確認する。角は綺麗さっぱり消失していた。
    「すみません、私、ちょっと頭冷やしてきます」
    口早に告げて木々の方に向かう入間の背を見送りながら、白昼夢だろうかと毒島は腰をチェアに据えたままでいた。彼は腹が減っているから、早急に食事を用意しなくてはいけないのに。腹の底に籠る熱と、未だ僅かに鼻腔に残ったままのあまい香りに、夢ではなかったのだろうと口角を上げていた。
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    ya__ma__do__ri

    CAN’T MAKE銃理です ジュにペロリンチョされるリ
    随分とまぁ可愛らしい姿になったものだと彼を抱き上げる。

    勿論、普段なら叶わない行為だ。上背も体重も己より大きい筋肉質な成人男性を軽々と持ち上げるなど不可能と呼んで差し支えない。現在の毒島はまるでゲームセンターやアミューズメントパークで景品として売られているぬいぐるみである。もとより幼い顔立ちは更に幼児的柔らかさを増し、ハロウィーンの仮装が一層年齢不詳の外見に拍車をかけている。大腿の上に乗せ白い頬を撫でると、予想通りの柔さを感じた。あまりにも強く突くと破いてしまいそうであるが指先の心地よさが堪らない。入間は手袋を外して直接毒島の頬の感触を堪能し始めた。焼き立てのパン、蒸し上がった直後の饅頭。入間は昼餉を食べ損ねていたが、仕事で抜く事も多々あり慣れてしまっていたのと、現在の状況に驚いて己の肉体が空腹を訴えている事に気付かなかった。そして彼は朝もまともに食べていなかった。働き、山道を登り、疲れを感じた若く長身の肉体はエネルギーを求めていた。先程から頬を優しく撫で、突き、こねくり回す入間の頭はぼんやりとしており、翡翠の瞳もとろんとしている。結論を言えば糖分を求めていた。和菓子より洋菓子が好みである。
    1917

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