無題パパ活🎹くん
🎷と会う前の🎹くん。男にも貢がせてポイしてたら良いなって話
「貢がせて下さい!!!」
「……はぁ?」
ライブがあった日の事である。
その日限りのライブメンバーと別れ、自宅へと帰っている雪祈に声を掛けて来たのは太った中年の男だった。
ヨレヨレのスーツを着た男は雪祈のファンらしい。ライブで一目惚れしただとか、好きになったとか、聞くに堪えない言動を繰り返している。
無視して帰るか、警察呼ぶかどちらかにするか悩んでいる時、男は叫んだ、雪祈に貢ぎたいと。
「貢ぎたいの、俺に?俺男だけど?」
「し、し、知ってます」
「貢ぐだけでいいの?俺あんたみたいなおっさんとキスもセックスしたくないけど」
「そ、そんなこと、しようと思ってないです。貢ぎたいです、雪祈くんに。雪祈くんの、役に立ちたいです」
雪祈はにんまりと笑みを浮かべた。
女相手に金を出して貰うとすると、デートをしたり興味のない話題にも乗らないといけないし、面倒だがセックスだってしなければならない。
だがこのおっさんは何もしなくて良いと言う。
それは中々、都合の良い相手ではないだろうか。
「ふーん、あんた俺の役に立ちたいんだ」
「そうです、お金ならあります。ほ、欲しい物何でも買ってあげられます」
「いいね、最高」
スマホを取り出して男に近づく。
雪祈が近づくと「ひえ…」と情けない声を出しながら男が半歩後退る。
「何だよ、逃げんな」
「いや、あの、雪祈くんやっぱり綺麗だなって思って」
「うわキモ。まあいいや、連絡先くれよ。欲しい物あったら呼ぶから」
「!!そ、それって…!」
「そ。俺に貢いでもいいって事」
オドオドと目を逸らしてばかりだった男の顔がパァァっと明るくなった。貢いでいいよと言われてそんなに嬉しそうな顔をするのが面白くて、雪祈は笑った。
「ありがとう、ありがとうございます」
「おっさんの貯金全部使ってやるからさ、これからもよろしくおっさん……いや、こういう時はパパって呼ぶべきか?」
「う゛」
パパと呼んだ瞬間、男は顔を赤くしてうつ向いた。東京は変な人多いから心配…とボヤいて母さんの言葉を思い出す。雪祈はしっかりしてるから大丈夫だろうと笑っていた父さんの言葉も思い出す。
母さん、変な人います目の前に。父さん、俺はしっかりしているから変な人を思う存分利用します。
「パパ、早速欲しい楽譜あるから買ってくれる?」
「も、もちろんです…!た、頼ってくれて、僕は嬉しいです」
気持ち悪、と思わず呟いてしまうが、そんな暴言ですら男は嬉しそうに笑みを浮かべた。
鳥肌が立つ程気持ち悪いが我慢をすれば、有益な男だと雪祈は理解した。
これが雪祈とパパの出会いだった。