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    れい🖋

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    おまけ本の中身1(イヌココ )

    ハワイのおまけ話1 いちご柄 いちご柄

     女子高生らしき二人組が話すのを聞いた。
    「そうそう、ギーユーの新作パジャマ、かわいくない? いちご柄!」
    「あれ私も欲しい」
     普段なら、そんな声を聞いたところで会話の内容すら頭に残らないのに、結婚してからの乾はそういった「かわいい」に敏感になった。
    「……駅ビルにあったはず」
     そう呟いた彼は、休憩時間に駅前に行ってその店を目指し、いちご柄パジャマの前でしばらくしゃがみこんでいた。
    「絶対着てくれない。オレにはわかってる。しのごの言ってそのままにする。そこでオレは考えた」
     彼は、目当てのパジャマと、他にもいくつかの衣類を掴んでレジに向かった。

     今日の九井は休日のはず。いつもなら、夕飯でもと誘い出すのにそれをやめて、乾は買ったばかりのいちご柄パジャマを手に家路を急ぐ。
     玄関に出迎えてくれた九井にキスをしながら家に上がり込み、手にしていた荷物を彼に渡した。
    「なんだこれ?」
    「オレからプレゼントだ」
     それだけで怪訝そうにする九井がいる。わかっている。何しろもう五年。一緒に暮らして一緒に過ごせば、彼のことなどお見通しだ。
     袋を開いて中身を取り出した九井は、そのいちご柄のパジャマを広げて眺め、ふーん、と言った。
    「……わざわざ買いに行ったのか? いつ?」
    「今日の休憩中」
    「そうか。サンキュー」
    「え?」
     乾が驚くと、九井が視線をよこした。
    「え? って……オレに買ってきたんだろ?」
    「うん」
     おかしい。いつもと反応が違う。九井は、パジャマを適当にたたんで持ち、脱衣所に向かった。洗濯機を回しているのが音でわかる。
     綺麗に洗って乾燥まで済ませたいちご柄は、その夜九井を包んだ。何も言わず、黙ってパジャマを身につけている彼は随分滑稽に見えたが、本人があまりに当たり前の顔をしているので、なんとも言えず、乾は落ち着かない気持ちで彼と同じベッドに入る。
    「……ココ」
    「なんだよ」
    「……似合ってる」
    「そうか」
    「……なんも言わねえのか。いつもなら、なんだこれ、とか色々文句言うだろ?」
    「……文句言われたくて買ってきたのか?」
    「違う」
    「オレに着て欲しいから買ってきたんだろ?」
    「うん」
    「ならこれでいいだろ? なんで不満そうなんだ?」
     一度は嫌がって、でも最終的には着てくれる。そういうつもりでいたので、拍子抜けしてしまった。黙ってベッドに横たわっていると、九井が身体を起こす。いちご柄のパジャマを身につけている癖に、余裕のある視線で隣から乾を見下ろす。
    「変なヤツだな。オレにだって、オマエの願望を叶えてやりてぇくらいの気持ちはあるんだぜ? それに……」
     九井が、胸元に手をやった。ボタンを外しながら続ける。
    「どうせオマエがすぐ脱がせるだろうと思ったんだけど……もう寝んのか」
     ボタンを外して開いた胸元に自分の手のひらを滑り込ませて笑いかけてくる九井を見上げて、どうしてこのまま眠られようか。眠りかけた全身が瞬時に覚醒した。

     ちょうどいちご模様の奥に小さく硬くなった乳首がある。布越しに指でつまみ、くりくりといじってから押しつぶすと、それだけで、ぶるりと九井の身体が震える。
    「ん、あ、しつ、こい」
     手を押しのけようとするので、パジャマを左右に開いて、つんと尖った乳首に唇を寄せた。唇で柔らかく食み、時々歯を立てると、その度に身を震わせる。高い声を上げて身をよじって逃げる身体を組み敷いて、舌先で突いてはくわえて吸い上げ、と繰り返す。
     ガチガチに硬くなった下腹に手を伸ばし、パジャマの上から形に沿わせて手のひらで撫で上げ、焦れて身を捩る九井に急かされて、惜しみつつもいちご柄のズボンを彼から剥ぎ取った。硬くなった性器がぶるんと顔を出すのを見て興奮を抑えられず、急いで自分も寝巻きを脱ぎ捨てる。ズボンを下ろしたところで、九井がこちらを見て、目を見開いてから笑い出した。
    「オマエ、なんだそれ」
    「なんだって……」
     乾が視線を落としたのは、自分の下着だ。いつもなら黒やグレーのボクサータイプを身につけるが、今日は、形は同じだけれど、全体にいちごが散りばめられたものを履いている。
    「いちごだ。いつからそんなにいちご好きになった」
    「好きなんじゃねえよ。ココがゴネたら、オレも履いてるって言うつもりだったのに、オマエがゴネねえから……」
    「そんなアホみてぇな理由で……?」
     九井が、身を縮こまらせて、ゲラゲラと笑いだす。せっかくいいムードだったのに、と一瞬不満を募らせたが、笑う彼があまりに幸せそうに見えて、感極まって彼に身体を重ねて強く抱きしめた。
    「かわいいだろ?」
    「……ああ、かわいいな……くく」
     笑いを噛み殺しつつ、背中を抱き返してくれる。散々笑って抱き合って、幸せだなぁ、と思う耳元で、九井の薄い唇が囁く。
    「ほら、挿れろって」
    「……うん」
     乾を待つ後孔に性器を押し当て、奥深いところで身体を繋ぐ。最初の頃の、苦しそうな様子は一切なく、九井が小さく喉を鳴らして、気持ちよさそうに目を細めた。
    「……すっげ、いい……」
     心行くまで抱き合って互いを満たし、裸のまま朝を迎える。

     朝、先に目覚めた九井は、いちごのズボンだけを履いて、上半身は裸のままでキッチンに立ち、油ハネに「あち」と言いながら朝食の支度をしている。乾はまだ眠いまま起き上がると、そばに散らかっていた、いちごのパンツだけを身につけてテーブルに着く。
    「コーヒー飲むか」
     いちご柄ズボンの男に聞かれて、
    「うん」
     いちごパンツの男が答える。
     今日もいつもと同じ、でも昨日より少し幸せな一日が始まろうとしていた。



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