酷薄のインフェるノ②「オロロン、オロロン、オロロン、バイ」
「変わった歌だな」
男は幼子を大切そうに抱えながらその歌を謡っていた。
皺が寄った口元に、穏やかな表情を浮かべて。
「この土地に伝わる子守歌です」
「へぇ」
物珍しそうに近寄れば、彼は眉尻を下げて何かを懐古しながら嬉しそうに微笑んだ。
「私が謡うとすぐに寝付くものだから、子守歌を謡うのは私の役割だったんですよ」
「なあ、俺にも教えてくれるかい?」
「はい、もちろんです」
―――これはまだ、俺が刀剣男士になれていなかった頃の話。
◆
「今回の任務もあなたたち二人にお願いします」
「島原の乱か、……厳しい出陣になりそうだな」
「なに、鶴丸と一緒ならば平気さ」
本丸が出来て間もない頃、刀剣男士の数も少なく少数精鋭で歴史改変の阻止に赴かなければならない頃があった。二振りで出陣なんていうものはザラにある。中でも同じ平安刀であるよしみから、三日月宗近と鶴丸国永は中でもより難度が高いとされる地に出陣させられていた。顕現したばかりの刀剣男士はまだ感情が定まっておらず、出陣に支障を来すことが稀にある。特に、自分たちが辿ってきた歴史の地に出陣した時には自らの感情に飲み込まれてしまう者も少なくはなかった。
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