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    mochimochi_8118

    ごままぶしのあれそれ!

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    mochimochi_8118

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    ちょっとかっこいいタイトルつけた!
    ヒロアレ小話

    微睡む夢に現の君少し眠ろう、そう思ってリビングのソファに横たわった。バルコニーから差す日が心地よく、意識は緩やかに落ちていく。

    「アレク?……寝てるのか」
    大翔が仕事から帰ってくると珍しくアレクがリビングのソファで昼寝をしていた。余程深く寝入っているのだろう、規則正しい寝息が聞こえる。大翔は興味が湧きそうっと足を運ぶ。2m近い体躯がソファに窮屈そうに丸まっていた。普段ならばここまで近くに寄ると目を覚ましてしまうが、今日は起きそうもなかった。
    (睫毛なげー……本当に外人なんだよなぁ……)
    大翔はまじまじとアレクの顔を見詰める。決して薄いとはいえない彫りの深さに、彫刻のような美しさを感じる。いつもは眉間に皺がより、少し険しい顔になっているが、今はその険もとれ柔らかい表情になっている。大翔は何か上に掛けるものでもと思い立ち上がろうとする。
    「マーマ……」
    静かな部屋に低く掠れた声が響く。大きく無骨な男なのに、酷く心細い声だった。閉じられた目縁から雫が溢れて伝い、じわりとソファに滲んだ。
    大翔はじっとそれを見詰めると、なんだか無性に胸が締め付けられた。思わず伸びた手が流れた痕を拭う。するとまつ毛が震え、ゆっくりと青が開いていく。
    「あ、ご、ごめ……!」
    起こすつもりはなかったと続ける言葉がうまく出ず、大翔はその場でわたついた。目を開けたアレクはパチパチと瞬くと少しだけ寂しそうな顔をした。それもすぐになくなり、寝起きの掠れた声で
    「お帰りヒロト」
    と挨拶をした。狭いソファの中でむっくりと起き上がるとゴキゴキと関節を鳴らす。ぼんやりした様子で目を瞬かせ顔を覆った。
    「……嫌だったら答えなくていいんだけど、夢でも見てたのか?」
    大翔はどうしても聞きたくてアレクに問うた。アレクは大翔の顔を見て、少しだけ視線を反らすと大翔が座れるように横にずれた。座ってくれと言葉にせず、ぽんぽんと隣を叩き少しだけ微笑んだ。
    「え、あ、じゃあ座るぞ……」
    「どうぞ」
    些か緊張しながら大翔は隣に座った。アレクの温もりを感じるソファに胸を高鳴らせながら、居心地悪そうに正面を見る。ちく、ちく、と秒針の振れる音が静かな部屋にやけに響いた。
    「……夢を、見た」
    ぽつり、と独り言を言うようにアレクが話す。大翔はびくりと肩を震わせてしまったが、アレクは気にすることなく、言葉を繋げていく。
    「……私は小さくてまだ、子どもの頃だ。両親が居て、ミーシャが産まれて直ぐだ」
    何も言わずにじっと見ていると、アレクはくったりと体の力を抜いて背凭れに体を預けた。体重差で沈み込んだソファがギシリと音をたてる。
    「私は10歳で、まだ幼かった。産まれたばかりの弟に両親は手がかかってね。両親の手がそちらに向くのは当たり前の事だが、その時の私には分からなかった。ミーシャに両親を取られたと、嫉妬してしまったんだ」
    自嘲する響きのある声でアレクは苦笑する。大きくなってからの彼しか知らない大翔にとって、彼の口から語られる話は興味深いと思った。けれど、どこか懐かしそうに、手に入らなくなった宝物を想起するような、そんな話しぶりに胸が苦しくなった。
    「酷い子どもだった。大嫌い、なんて言って飛び出して……あぁそうだ。私もミーシャの事を言えない……」
    懐かしむように過去を思い出しては、ため息をついて天井を見詰める。肺腑の息を吐ききれば苦い空気が変わりに満ち、幼い頃の記憶の輪郭を鮮明にした。
    「それで、飛び出して隠れていたんだ。公園の大きな物陰に見付からないように、小さくなって。どうせ、誰も探しに来てはくれないだろうと思っていた。日が落ちて、暗くなって。寒くもなってきて……私は要らないのだ、そう思っていた」
    アレクは言葉を切る。それからアレクはのそりと体を起き上がらせ、大翔と目を合わせる。大翔は何も言えずただじっとその様子を見ていた。
    「ここで夢は終ったんだ。そして、起きたらヒロトがいた。……私はそれが嬉しかった」
    アレクは目を細めるとくしゃりと大翔の頭を撫でた。それは撫で馴れている者の動きで、大翔は思わずそのままされるがままになっていた。
    「つ、続きはないのか?それじゃ過去のアレクは救われてないんじゃないのか?」
    少し子ども扱いされたようで恥ずかしく、大翔は誤魔化す様に聞いた。アレクはぱちりと瞬くと嬉しそうに首を振った。
    「いいや、そんなことない。過去の私は私が赦す……ヒロトはそうだな」
    穏やかな青が煌めいて大翔を覗き込むと、
    「今の私を愛してやってくれ」
    そう言ってアレクは大翔の太ももの上にあった彼の手を握った。一回り程大きな手は容易く大翔の手を包むとぎゅっと力強く握り込まれる。大翔は瞬間で真っ赤になると、すっとんきょうな声を上げアレクを見た。
    「なぁっ!?にを!?」
    「ハハ、ジョークだ」
    「はぇ!?え!?嘘!?か、からかうなよ!?」
    一気に湧いた手汗と動揺に、大翔はブリキのように固まり叫んだ。それを見たアレクは思わずといったふうに笑いだした。
    「ふふふ、あははは!……本当にそうであれば心強いのだがな」
    少しだけ低められた声にまた動揺の叫びを大翔は上げるのだった。
    「大丈夫か、ヒロト」
    「大丈夫じゃない!!もぉ、おま、もぉ~~!!」
    「ハハハ!ヒロトは面白いなぁ」






    本当は、幼い姿の私の元には誰も来なかった。
    私はトボトボと星の瞬く夜空の中、家路に着いた。
    余りにも遅い帰りに両親は探していてくれてたらしいが、私の隠れ方が上手すぎたのか。探しきれなかったらしい。
    だから、本当に、目を覚ました時にヒロトが居てくれて嬉しかったのだ。
    こんなこと、きっと言われても困るだろうから、ここに記すに留めておこう。

    本当に愛してくれるのならば、嬉しい、のにな。

    いつかの日記にて アレクサンドル
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