かぜっぴきのみねお 元気が取り柄の年下の恋人が、どうやら風邪をひいたらしい。
のんびりとした部署にしてはめずらしくたて続けに急を要する仕事が入り、それをこなしているうちにいつの間にか終業時刻を過ぎていた。今日は峰雄の家に行く日だった、と慌てて携帯電話を開いたのは午後七時をまわった頃。「風邪をひいたので今日は会えそうにありません。申し訳ございません」と妙に他人行儀なLEAFのメッセージを受信していたのはその四時間前、午後三時のことだった。
「風邪か、めずらしいな……」
連絡が遅くなったことに対する謝罪と体調を気遣う文面を作りながら、半端に残った缶コーヒーを飲み干した。メッセージを送信し、てきぱきと荷物をまとめて職場を後にする。普段であれば仕事かよっぽどのことがない限り数秒もかからずに既読がつくのだが、しばらく経ってもメッセージ画面に変化はない。これはなかなかの重傷かもな、そう思ってわたしは年下の恋人――榎本峰雄の自宅まで急いだ。
1601