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    shoujouboku

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    shoujouboku

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    Webオンリー第3回開催おめでとうございます&ありがとうございます!

    アンネリーゼさんから見たヘルムートちゃん→顧問
    ※いつも通り色々捏造

    #祝砲ホーアー
    ceremonialGunHoar

    Boudoir「すみません、空き部屋の用意が
    整っていなくて…」
    「気にしないで、むしろお邪魔しちゃって
    悪いわね」

    バーゼルラント軍の主力が集う士官学校は、あの内乱の影響でかなりの部分が破壊された。生徒数自体も減少したので一部の施設は別の用途に転用したり、あるいは崩落の危険があるという理由で閉鎖している。
    特に顕著なのは騎兵科が使っていた施設で、事実上一人しか生徒が残っていないため、ほぼ打ち捨てられている状態だ。
    宣伝戦の手伝いをするため総司令部を訪れた私ことアンネリーゼは、そのただ一人残った騎兵科生徒であるヘルムートちゃんが現在使っている部屋を一晩借りることになった。
    ちなみにこの部屋は、寄宿舎とは離れた士官学校本館の一室だ。
    残った兵科の寄宿舎に移らなかったのは、性別の問題だけでなく砲兵科・歩兵科の縄張り意識も関係しているらしい。結局、騎兵連隊長という立場もあって特別に少しいい部屋をあてがわれたのだという。
    それでも普段は一人で使っている部屋に簡易ベッドを追加したので、すこし窮屈ではあった。

    「それになんだか女学生の時を
    思い出して楽しいわ」
    「アンネリーゼさんも寄宿舎で
    生活していたんですか?」
    女の子と同じ部屋の中、喋りながら髪を梳いたり寝巻きに着替える経験は久々で、こんな時だというのに気分が若やぐようだった。
    ヘルムートちゃんもいつもの軍服を脱ぎ、寝巻き代わりのゆったりとしたシャツに着替えている。普段見慣れた直線的な体のラインが少し違って見えて、知らず目を奪われてしまう。いくら同性といえども失礼よね、と慌てて目を逸らした。

    「夜中に呼び出しがあるかもしれないので、
    起こしてしまったらすみません」
    「大丈夫よ、記者だって特ダネがあれば
    叩き起こされるんだから」
    「記者さんも大変なんですね…」
    いくら娘時代の気分に戻ったとはいえ、互いに仕事がある以上、長々とおしゃべりしているわけにもいかない。
    ランプを消すと、部屋は暗闇に飲み込まれた。
    総司令部が近いこともあり、夜中でも空気を通してざわめきが微かに伝わってくる。今こうしている時も歴史は動き続けているのだと思うと、記者としての好奇心がザワザワと刺激された。
    ふと目を横に向けると、天井の方を向いて眠るヘルムートちゃんの横顔がぼんやりと輪郭だけ見える。
    初めて会った時から端正な顔立ちの子だと思っていたが、内乱と現在の混乱を経て精悍さを増したように思う。研ぎ澄まされた刃を思わせる、鋭利な美しさだった。
    「色々あったものね…」
    「何がですか?」
    思わずこぼした声に反応があり、こちらが驚く。
    「ごめんなさい、起こしちゃった?」
    「大丈夫です、まだ眠っていなかったので」
    姿勢は変わらないが、顔をわずかにこちら側に
    傾けた気配を感じる。
    話を聞く意思があるのならば、と私は意を決して
    言葉を続けた。
    「作戦のこと、聞いたわ。国中を駆け回って…
    大変だったわね」
    本当はもう少し詳しい話も聞いているが、軽々しく口に出したい話題ではない。故にどうとでも取れるような、煮え切らない伝え方になった。
    「私が、必要だと判断してやったことですから」
    「バルツァー顧問が命じたことではなかったの?」
    驚いた、作戦立案は責任者である彼だとばかり思い込んでいた。あの焦土作戦を、この少女が?
    「はい、私が提案しました」
    すうっと息を吸うのがきこえる。
    「顧問には感謝しています、私にしかできないことを実行する機会を与えてくれたのですから」
    とても穏やかな声で言われると、それ以上何も言えなくなった。

    前から思っていたが、バルツァー顧問の影響を受けた生徒たちは皆年齢の割に肚が座っている。その上ただ指示を待つばかりではない、自立した精神を
    備えていると感じることが多い。
    だがそういった長所があってなお、この子は少し献身的すぎやしないかと心配になる。
    大学にもそういう娘たちはいた。学問への情熱と師への尊敬を異性への愛に置き換え、全てを委ねようとする若い女たち。ほとんどの場合は親に引き取られていき、適当な相手との結婚に落ち着いていった。
    しかし彼女はただの学生ではない。師と仰ぐ相手を慕い、付き従うことが生死に直結する兵士なのだ。
    (それに父親は戦死、母親は絶縁状態だって
    いうしね…)
    彼女の行動に口を挟む肉親は恐らく皆無だろう。
    とはいえ彼に盲目的に従っているわけではないのはわかる。いま聞いた通り、あの作戦が彼女の意志で成立したことを疑ってはいない。
    (でも彼は「面目ない」と言っていた)
    彼らは罪悪感と使命感で結びつきあっている。一介の教師と教え子の間では普通ありえない話だ。
    また唯の上官と部下でもこうはならないだろう。大人と子供の差が明確であり、指導者と庇護者の役割を兼ねているからこそ生まれた信頼だ。
    学校と戦場が重なりあう特異な環境が生んだ絆としかいいようがない。
    (ただの恋だったらどれほど良かったでしょうね)
    闇の中で眠りに落ちていこうとする少女に、今度は心の中で呼びかけた。
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