呪縛俺は母親に捨てられ、商品として育てられてきた。齢4の小さな子供、言葉の意味など分からないと思ったのだろう。母は言った「もういらないのよ、後は可愛くなくなるだけだから」俺は聞いてしまった、いつものような声で鼻で笑いながら話す母の声を。母は俺を愛していなかった。
そんなこととはつゆ知らず、俺は何日も檻の中で母親の帰りを待った、ただ「おかえりなさい」を言いたくて、「会いたかったよ」を言いたくて。しかし母が姿を表すことは無く、3ヶ月目にして捨てられたと言うことが分かり、それから1ヶ月泣いて過ごした。檻に入れられて4ヶ月目でようやく立ち直れる兆しが見えた。それからは頭を空っぽにして生きた。悲しみたく無いから、もう辛くなるのは嫌だから、そうやって見たいものだけ見て、現実逃避をしながら生きてきた。
それから何年も経った10月にある人に助けられ、俺は檻から出ることになった。檻から出て、友達ができ、親友と呼べるような人も出来た。
しかし、いつも思う。母親のあの言葉を、彼らが自分を捨てるはずがない、アイツがおかしかっただけだ。そんなことは分かっている、でもあの言葉が何度も何度も頭に浮かぶ、忘れようとしても忘れられない俺は一体何年間この言葉に縛られるのだろう。アイツのあの言葉、そう、それは紛れもない…
呪縛 -END-