様々な武器、少し使える程度の魔道、勝つためのありとあらゆる戦法を使ってきた身ではあったが、それは謂わば実戦経験の積み重ねであり基礎などはなぞるだけ。得意の剣術ならまだしも、他はとても人に教えられるものではなかった。思えば就任してからすぐの頃は教育者として何もかもが足りていなかったとベレトは思う。父であるジェラルトの教育のお陰で読み書きや算術は問題なく出来ていたが、ここではそれは当たり前のことで教師という立場は常に教え子以上のものを求められていた。
報酬を貰うからにはそれに見合った働きをする、というのは傭兵の頃から叩き込まれていた為、ベレトは日々の授業や鍛錬の合間を縫って今まで以上の知識をつけようとガルグ=マクの本を読み漁っていた。ただでさえ口下手で分かりやすく言語化出来ない身ではあったが、本を読めば文章として説明が出来るようになっていく。今まで上手く伝えられなかった事がスムーズに伝わるようになれば生徒達も関心したり驚いたりと様々な反応を見せてくれた。傭兵という職業から教師へと転じてからの変化にはベレト自身でも驚きと、そして今までにない楽しさを見出していた。
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