さんがつ 東北の3月はまだ寒い。それを2回ほど経験して、今日が最後だった。
ごくごく普通の卒業式。肌寒い体育館で名前を呼ばれて立ち上がる。五十音順で並ぶ俺の2つ隣のソイツは、真っ直ぐに立った。
キリッとした眉毛に真っ直ぐ射貫くような目元。張り出た喉仏にがっしりとした身体付きはスポーツマンである事を意識せざるを得ない。
式終盤になるとそこかしこから鼻をすする音とか、嗚咽とかが聞こえてくる。俺は特になんの感情も湧かないままに、ぱちぱちと力なく拍手をした。アイツはどうなんだろうか、と横目で見る。特に表情も動かないままソイツは真っ直ぐ立っていた。そうだよな、お前はそういうやつだよな。変に安心した俺はまた寒くなった体育館でちょっと身震いした。
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