へし→←薬で実(→←?)薬な話 黒猫のような短刀がするりと布団の中へ潜り込んできて、浴衣の裾から伸びた足首がふくらはぎに絡んだ。子供のなりをしている割にひんやりとした細く薄い身体は、二振で一組の布団に納まっても何の問題も無く布が足りてしまう。
「なあ、長谷部。あんた一体どうしたんだ」
懐に擦り寄りながら問う声に、ぐっと口を噤んだ。何のことだ、と問い返すまでもなかった。理由は自分でも痛いくらいに分かっている。だからこそ、身の置き場がない心地がする。相手の背へ腕を回し返す事も出来ず、布団の中で手持ち無沙汰に彷徨わせている。
「すれ違ったって目も合わせないんだ。そうまでされたら、いくら俺っちだって何も思わないわけじゃないぜ?」
「それは……。すまないとは、思っている」
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