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    しおぬる

    @ShiowoNuru

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    しおぬる

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    1914許嫁、思い出しながら続き書き始めました

     その日、五歳離れた幼馴染たちはふたりで川遊びをしていた。
     互いに夏休みに入り、総士の自由研究の材料集めという名目のもと、ふたりの家から少し離れた涼しい山中の川辺で、今は一騎お手製の弁当をつついている。定期試験を終えた一騎と久々に会えたこと、夏の始まりに一騎とピクニック……じゃない、一騎と一緒に、普段は来ない場所に来られたことが嬉しくて、うっかりこどものようにはしゃがないようにしながらも総士の心は弾んでいた。
    「上流だから、石が大きくてとがっているな」
     ほどよい塩味の鮭おにぎりを飲み込んで、あくまで勉強のために来ているのだという風に振る舞う。理科の授業ではこのあいだ習ったばかりだが、すでに昔図鑑で読んで知っていたことを言ってみた。
    「流石だな、総士。その分足とられて転んだら危ないから。ちゃんと長袖長ズボンだし、靴もしっかりしたやつ履いてきてるけど、気をつけような」
    「ああ」
     そうやって注意する割に半袖半ズボンにサンダルの一騎に、まあ、一騎は転ぶなんてどんくさいことしないだろうし、と思いつつ、守られることが必要ない存在のように総士の両目には映った。そんな一騎に対して僕は守られるばかりで。さらりとした長袖のパーカーを見つめながら、はやく一騎と同じになりたい、と、総士は今日も思う。
     そのためには、まず、小学四年生としての本分を果たさなければ。おにぎりに続いてだし巻き卵、から揚げ、プチトマトのピクルスなどなどをおいしく食べ終えて、午後の探索を始めた。

    「……ふう、こんなものか」
    「うん、いいんじゃないか。お疲れ様、総士」
     資料となるような様々な石の採取を終えて、総士は大きな岩へ腰かけた。一騎も隣へ身体を預ける。
    「こちらこそお疲れ様、ありがとう一騎。結局バケツいっぱいに集めてしまって……一騎がいなければ持ち上げられずに途方に暮れていたかもしれない」
    「役に立ててよかったよ。正直、どの石がどうとか俺より総士の方が知ってるだろうから、突っ立って終わりになっちゃうかと思ってた」
    「食事を用意して、僕のことも見守っていてくれただろう」
    「まあ、それは当然のことだし」
    「……」
     やっぱり、これだ。総士だって学校では委員会活動に参加するようになったし、家でも乙姫と織姫の兄としてしっかり面倒を見ているのに、一騎はいつまで経っても総士をこども扱いする。実際、中三から見たらこどもなのは総士だって当然わかっている。けれど、この五歳の差は一生縮まらないのだと思うと、最近、時々、無性に寂しくなってしまうのだった。
    「……じゃあ、日も傾きそうだしそろそろ帰ろうか」
     ああ、今日が終わってしまう。今日が終わったら、高校受験を控える一騎となかなか遊べなくなってしまう。まだ、一緒にいたい——そう俯いた総士の視線の先に、きらめくものがあった。黒や茶色の石のはざまに、乳白色に光る石を見つけた。
     これを持ち帰れば、きっといつでも今日のことを思い出せる。
     そう思って、手を伸ばした。

    「——っ!? 総士!!」
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    CottonColon11

    DONEこちらはパロディボイスの発売が発表された時にした妄想ネタを、言い出しっぺの法則に則って書き上げたものです。
    つまりボイスは全く聞いていない状態で書き上げています。ボイスネタバレは全くないです。
    ※二次創作
    ※口調は雰囲気
    ※本家とは無関係です
    科学国出身の博士と魔法国出身の教授が、旅先で出会うはなし 高速電車で約五時間乗った先の異国は、祖国と比べて紙タバコへの規制が緩い。大きい駅とはいえ喫煙所が二つもあったのは私にとってはとても優しい。だが街中はやはりそうもいかないようで私が徒歩圏内で見つけたのはこのひさしの下しか見つけることはできなかった。

     尻のポケットに入れたタバコの箱とジッポを取り出す。タバコを一本歯で咥えて取り出して、箱をしまってからジッポを構える。……ザリ、と乾いた音が連続する。そろそろ限界だと知ってはいたが、遂に火がつかなくなってしまった。マッチでも100円ライターでもいいから持っていないかと懐を探るが気配は無い。バッグの底も漁ってみるが、駅前でもらったチラシといつのものか分からないハンカチ、そして最低限の現金しか入れていない財布があるだけだった。漏れる舌打ちを隠せない。
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