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    らんじゅ

    すぎさく運命論者兼杉下に囚われる者
    色々捏造をする
    とみとが、うめ、らぎ辺りも描くかも
    パスは大体「」の中の英訳です

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    らんじゅ

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    お姉が「夏と言えば浴衣デートだよね」って言うから息抜きに🌲🌸小話
    厄介ジジイと近所のババア、爺婆ネットワークの恐ろしさに慄くすぎさくの話

    #すぎさく
    tooLateBlooming

    浅葱の青海波「おう、お前ら!祭り行かねえのか!」

     放課後、見回りもなく持て余していた暇を杉下の部屋で杉下の唇を食んで潰していると、もはや慣れ親しんだ大声が階下から響いた。杉下は舌打ちをひとつ落とすと、驚いて固まる桜の顔を覗き込んだ。
    「……どする」
    「ま、つり……?」
    「おう」
    そこの広場のちっせえやつ、と窓の外を指して杉下は顎をしゃくる。杉下の唇を食むことに集中していて気付かなかったが、よくよく聴けば風に乗って微かに祭囃子が聴こえて来ていた。桜の火照る頬を杉下の指がするりと撫でると、顎を掬いちゅん、と触れるだけのキスをする。
    「……行く?」
    「……ン、ふく……」
    ふうふうと息を切らす桜は乱れた衣服を正そうとゆるゆる手を伸ばす。それを眺めていた杉下はあ、と短く声を出すと、脱いじまえ、と桜のスラックスを取り払った。


    「ああ!?浴衣!?オメエ浴衣着てたの何年前だと思ってんだ!馬鹿デカくなりやがって!おとんも浴衣着ねえからデケエのないぞ!おかんのはオメエにゃ合わねえがよ!」

     杉下と同じ目をした老人は馬鹿デカい声でガハハと笑いながら杉下に言った。俺じゃねえ!コイツ!と杉下は普段からは想像もつかないほど大きな声で老人に応える。すると老人は「そうだな!お前なら着れるかもな!」とやはり馬鹿の音量で箪笥の中身を物色し始めた。
    これがな、コイツが小5んとき着てたやつ、と出された浅葱色の青海波。だいぶ前のものであろうに、綺麗に手入れされたものだった。
    「小5で遂に丈足んなくなってなあ!あ〜……ちと短いか?お前小5んとき身長いくつだった?」
    「あー……170?」
    「んだら大丈夫だろ!こっちゃ来い!」
    老人は浴衣を桜に合わせると、お前もそんくらいだろ!と馬鹿の音量でニカリと笑いながら手招きをする。
    「は?縮めよ」
    「てめえは野菜食って伸ばせチビ」
    桜がじとりと杉下を睨むと、杉下はいつものようにハン、と口角を片方だけ上げて鼻で笑い肩を竦めた。


     薄暗い広場で祭りの提灯がきらきらと点る中を着慣れぬ浴衣で歩く。足元はサイズの合う下駄はなかったので、いつものスニーカー。身に纏うものがいつもと違うとなんとなくそわそわする。スラックスじゃないからポケットに手を入れて歩けなくて手の置き場に悩んでいると、杉下はすいと桜の右手を攫っていった。指と指を絡ませて、手のひらがぴったりと重なる。重なった手からじわじわと杉下の体温が伝わって、顔が熱くなっていくのを感じた。
    桜はチラリと杉下を窺う。杉下はいつものシャツとジャージで、流石に暑かったのか、一本刺しで器用に髪を纏めていた。項に張り付く一筋が妙に色っぽくてドキドキする。桜が口を曲げてぐぬぬと睨んでいると杉下はふっと息を吐き、肩越しに振り返り「見過ぎ」とはにかむ。パッと顔を背けられてしまったけれど、提灯の灯りでよくわからなかったけれど、アイツの頬は今桜色に染まっているんじゃなかろうか。
    桜の胸がきゅう、と鳴った気がした。すっかり杉下の体温が移った右手にギュッと力を込める。
    「な、照れてんの。おい、こっち向けよ、なあ、京ちゃん。お顔見せて」
    「ダァッ!それやめろ!」
    先日知った嫌がる呼び名をわざと呼んでやると、杉下がバッと勢いよく振り返る。キッと桜を睨むその頬はやっぱり薄紅色に染まっていた。
    ああ、愛しい。桜は往来であることを忘れて、杉下の襟首を掴んで精一杯背伸びをして先程まで食んでいたその唇を食もうとした。その時だった。
    「あれ、京ちゃん?」
    知らない声だったが、それにハッとして桜は杉下のシャツを離す。杉下は「ゲ」とでも言いたげな顔をして声の主を見ていた。軽く会釈をすると、桜の耳元で「近所のババア」と注釈を入れる。
    「あれあれ、随分懐かしいもの着てるじゃないのサ。ええ?京ちゃんはもう浴衣着ないのかい?」
    「バアさん、その呼び方やめろよ」
    「アッハッハ!そうだね、もう高校生だもんね。ごめんごめん、あんひとがいーっつも京ちゃん京ちゃん言うからサ!恋人の前じゃカッコつけたいか!ええ?別嬪さん捕まえちゃって、この色男!」
    「ッハァ!?」
    桜は思わず素っ頓狂な声を上げた。なんて!?知らんひとが今なんて!?一瞬で赤くなった顔でパッと横を見ると杉下は苦虫を噛み潰した顔をしていた。ぼそりと「爺婆ネットワークめ……」と恨めしそうに溢す。
    「うん?あんたが『桜くん』だろ?言ってたよお、京ちゃんが『良い人』連れて来た〜って」
    桜は絶句した。杉下はその横で遠い目をした。
    「……言っただろ。漏れたら最後筒抜けだってよ」
    朧げに言われたような覚えがある。桜は舐めていた。孫がかわゆくてしょうがない、知りたがりで話したがりの“老人”という生き物を、舐めていた。
    デートの邪魔ね、と嵐のような彼女が去った後も桜と杉下は道の端にぼんやりと立っている。片や赤い顔で、片や遠い目で。桜はふるふると震えながらか細い声で言う。

    「……も、とうぶん……おまえんちで……しない……」

    杉下はこの世の終わりかのような顔をしたあと、ぎゅっと顔を顰めて「そりゃあそう」というような顔をして小さく「おう」と言った。

    しばらくは杉下が「今日お前んち行くから」と言う頻度が増えたとか増えないとか。
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