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    もののけたろう

    お世話になってます❗️もののけたろうです❗️🥰

    絵を描く際の記録、または備忘録として、この絵は当時何を思って描いたのか、どんな狙いがあったのか、などの記録を書き留めて行こうと思いました😃

    産まれたての子鹿のような僕の絵を好きで見ていただく方なんていらっしゃる事が不思議😂

    そのため、ここは基本自分の記録用となります🥰

    趣味で詩作とかもしてるのですが、これは全体公開は恥ずかしいので、DMしてくれれば、パスを個人的に教えます😌

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    もののけたろう

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    ショートストーリーです。
    様々なメタファーを散りばめるのが好きで、この作品にも沢山のモチーフがあります😌
    テーマは確固たるものがありますが、物語の結末から先の未来は僕にも分からないです。そうやって描いたほうが、自分の願いも作品に宿ると考えるからです☺️

    球体の鯨その鯨は

    優しい目をしていた


    「今日も虫を踏んで殺してしまったの。悲しいわ。」
    少女の眼球の中には、鯨が泳いでいるそうだ



    深海のように青い濃淡を背景にして

    白く大きな鯨の影は
    静かに波を切っていた


    私は、
    その子の目を覗き込むのだが


    彼女の目からは
    海水が、後から後からと溢れていてあまり良く鯨の姿は見えない

    ついには足元が水浸しになってしまった



    どうか、泣くのを止めてくれ



    彼女にそう言うのだが


    彼女は、「私が泣くのを止めると鯨が死んでしまうの」

    と答えた



    耳鳴りに似た音波が聴こえる

    これは鯨の声だ


    目の中で泳ぐ鯨と
    少しだけでも視線を重ねたい



    「鯨をもっと見たい」から泣き止ませたいのか

    「その少女に悲しんでほしくない」から泣き止ませたいのか




    彼女の目からは
    涙が途切れる事なく流れ続けた


    この勢いで涙が流れていくと、
    家も、街も、きっと全てが水没してしまうだろう



    もう一度、少女の目を覗き込む


    尾びれの一薙ぎで
    海流を生むほど大きな鯨の影は

    彼女の瞳の中で波を切っていた



    「昨日はお花を踏んでしまったの。今日見たら枯れてたわ。」


    彼女が泣き続けるので
    海水は、もう腰まで浸ってしまった




    目の前の小さな子供は


    自らが気付かない内に踏み殺してしまった
    虫に悔悟し泣いている

    自らが気付かない内に踏み枯らしてしまった
    花に怯えて泣いている


    自分の罪が恐ろしくて

    命の柔らかい脆さが恐ろしくて
    泣いている




    そんな優しい彼女だから


    鯨はこの子の目の中に棲みついたのだな

    と思った




    涙は永遠に枯れることはなく

    彼女は何を見ていても、視界の何処かには
    鯨の残滓が映るそうだ




    この子は
    どんな思いでそれを見ていたのだろうか




    鯨は、眼球の海の中をグングンと泳ぐ

    そして
    彼女の流した涙は海となって

    彼女がいつか殺すはずだった生命
    その一切の何もかもを飲み込んでいくのだろう



    水流に飲まれ、私は意識を失い
    気付けば、もうとっくに
    頭のずっと上の方まで海水で満たされていた

    きっともう街は、世界は涙の底だ




    植物も動物も

    彼女の悲しさや苦しさの液体で
    溺れ死んでいくのだろう


    そして

    きっと彼女だけは、鯨と生き続けるのだろう





    彼女はそれを知って泣くのだろうか...




    これ以上は、自分も息が続かない
    身体が海の底に沈んでいく



    私は、最後に
    彼女に

    一緒にいられなくてごめん

    涙を止めさせてあげられなくてごめんよ

    と言葉にならない声で言った



    海面の煌めきは、既に遙か頭上にある

    この星はまるで

    少女の悲しみで満たされた海だった




    やがて、別れの時間になった



    肺に入っていた残りの空気を、泡にして吐き出す




    彼女の姿はもうどこにも見えない


    彼女は、まだ泣き続けるだろう
    自分で創り出した海の中で...





    その時、大きな影が眼前に広がる



    それは、鯨だった



    満面に広がる海に向かって、鯨が彼女の瞳から抜け出て、海面の煌めきを、星ごと覆った悲しみを、何もかもを飲み込むように泳いでいた




    それはまるで生命そのものであった




    私は溢れる程に泣いた

    涙は悲しみや苦しみだけではなく
    人の感情の動きそのものだった




    少女は言っていた

    「私が泣くのを止めると鯨が死んでしまうの」


    ああ、そうか
    この世界はもうとっくに

    他の誰かの瞳の中なのだ




    誰かの涙が波となり、全てを飲み込み、終わってしまった世界でも



    きっと鯨は泳ぎ続ける



    生き続けてくれて
    ありがとう...




    気付けば少女が、宝石のような涙を流しながらそっと私に触れていた





    その少女は

    優しい目をしていた


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