すてきなひとりぼっち「禁煙外来ってこと?」
三ツ谷は、そう言って視線を紙袋の中に移すと、コロッケをひとつつまんだ。
「いや、禁煙っていうか、煙草の記憶?なくしたとか何とか」
林も、三ツ谷に差し出した紙袋に手を突っ込み、コロッケを取り出した。そして、大きな口を開けてコロッケを二口で食べきった。
「ンなことできんのか?」
三ツ谷は、コロッケをもぐもぐと食べながら、訝しげに林に問うた。
「ん~…パーちんの食いモンの記憶消してもらえてたら、信じられたよな~その話」
「フカシてんじゃねぇだろーなぁ」
「母ちゃんが友達からそう聞いたってだけだしな」
「…それがほんとだったら、いろいろ便利だよな」
1時間目が終わって早々に、二人は同級生の肉屋の子が持ってきてくれるコロッケを堪能した。林田家が贔屓にしている肉屋らしく、こうして毎日コロッケをこっそり差し入れてくれる。その恩恵に、三ツ谷も林も預かっていた。いつもこうしてコロッケを食べながら、廊下でくだらない世間話をする。それが、三人の朝の習慣であった。
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