一縷の光明「三ツ谷、もっと食いてぇ」
「もうちょっと待って」
「オウ」
自然と二人で走りに行こうとなったこの日、夕飯を一緒に食べてから深夜に出ようという話になった。ルナもマナも友達の家でお泊まりの予定で二人きり。さっと漬け込んだ胸肉を揚げていく傍から二人でつまみ食いをしていた。
衣がカラッと揚がり、脂濃くない胸肉特有の繊維強めの肉質にしっかり味が染み込んでいる三ツ谷家の唐揚げは揚げたてが一番柔らかく美味しい。冷めてしまうとこれが硬くなってしまうから好みが別れてしまう。三ツ谷は冷めてからも好きだがドラケンに一度揚げたてを食べさせたら気に入ったらしい。行儀悪いがつまみ食いしながら揚げるのが定着してしまった。ルナもマナも、マイキーも八戒もいない、二人きりの時だけの楽しみだ。
1924