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    1ki_4

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    2/20発行予定、一縷の光明のpixivに乗せてない部分のサンプル。

    様々な世界線のドラみつと食についてのお話。

    本編では、原作中で生死等明言されていないことは好きに捏造しております。
    こちらはページ数に合わせての修正前のものです。

    一縷の光明「三ツ谷、もっと食いてぇ」
    「もうちょっと待って」
    「オウ」
    自然と二人で走りに行こうとなったこの日、夕飯を一緒に食べてから深夜に出ようという話になった。ルナもマナも友達の家でお泊まりの予定で二人きり。さっと漬け込んだ胸肉を揚げていく傍から二人でつまみ食いをしていた。
    衣がカラッと揚がり、脂濃くない胸肉特有の繊維強めの肉質にしっかり味が染み込んでいる三ツ谷家の唐揚げは揚げたてが一番柔らかく美味しい。冷めてしまうとこれが硬くなってしまうから好みが別れてしまう。三ツ谷は冷めてからも好きだがドラケンに一度揚げたてを食べさせたら気に入ったらしい。行儀悪いがつまみ食いしながら揚げるのが定着してしまった。ルナもマナも、マイキーも八戒もいない、二人きりの時だけの楽しみだ。
    「なぁ、から揚げ持ってこうぜ」
    「嫌だよ。作り置き用じゃないから今食べたい」
    「三ツ谷の飯はいつ食ってもうまい」
    「いつ食べても美味しいなら一番美味い時に食べてよ」
    揚げ箸でひとつ肉をつまみドラケンの口元に寄せれば大口を開けてかぶりついた。
    「あっつ!」
    「気をつけなよ」
    「おせぇ……」
    でも美味い、というドラケンに笑ってしまう。三ツ谷はこういった時間が好きだった。二人きりでも三人でも、十二人でも、大切な仲間となんでもない時間を過ごすことが何よりも大切だった。
    東京卍會を作る前から毎年大晦日に皆で集まり元旦の初日の出を見に行っていた。大晦日でも何でもない日の今日、日の出を見に行く。
    十月の末日、三十一日。明日で場地が死んで一年になる。マイキーも誘ってみたがマイキーは場地の母とかち合わない早朝に墓参りに行くと言っていた。朝起きれるのか、と聞けば起きれなかったら夜に行くからいいとの事だった。
    血のハロウィンを経て、東京卍會の内部は大きく変わった。稀咲が参番隊隊長として定着し、花垣が一番隊の隊長となり、八戒がチームをやめようとするなどバタついた状態が続いていた。
    八戒と大寿が対峙したあの日、三ツ谷は自分の愚かさを痛いほど身にしみていた。二人には話したことは無いが大寿に、黒龍に追い込まれたあの時に三ツ谷は本気で死ぬことを覚悟した。喧嘩の中で人が死ぬなんて滅多にないがそれがない訳では無いということを血のハロウィンの一見で身に染みていたからだ。幸いなことにマイキーとドラケンが駆けつけて間に合ったから、柚葉に刺された大寿も含め取り返しのつかないことにはならなかった。
    あの一件の後に三ツ谷はマイキーとドラケンからかなり怒られた。いなくなるなと言った約束を守るのか、俺の隣に並ぶのは忘れたのか、と。マイキーとの約束はつい最近のものだから怒られるのもあまんじて受け入れるが、ドラケンの言う事については正直なところそんな昔のことお前が覚えてたのか、と耳を疑った。
    「明日で一年か」
    「もうとも思うしまだとも感じるね」
    「まだ慣れねぇ」
    「皆そうだよ。だって場地は東京卍會のルーツだからね……慣れないし慣れたくないよ。それに、俺は慣れなくていいと思ってる」
    マイキーが突拍子もないことを言っては誰かが呆れ、わがままを言っては必死に宥める。昔から変わらない光景は今でも続くが、今は誰かではなくドラケンが、と表現するのが正しいだろう。あの頃は六人で、呆れたり驚いたり、皆で振り回されてきた。今はもう三人だけになってしまった。パーちんは戻ってきたけど、パーちんはチームよりも優先することがあった。パーちんなりの意地のはり方で、それについて口出しすることはなくともきっとドラケンもマイキーも同じだろう。三ツ谷にとって最優先は東京卍會で、東京卍會が全てなのだ。
    「だって無理だよ。俺は慣れない。慣れないまま、今この手の届く範囲で守れるものを守るんだ」
    「三ツ谷、やっぱりお前はいいやつだよ」
    「は、なに急に」
    「別に、思ったから言った。俺も、同じ気持ちだ。東卍は今変わり始めてる。俺のカンだけどこの流れは東卍が大きくなっていくには止められない」
    「そうだね」
    「だから好きでいられるように、この手からこぼしたくないものは絶対離さねぇ」
    「あぁ……」
    パチッと油が爆ぜた。揚げすぎてしまい、色が濃くなってしまった。
    「ごめん、揚げすぎた」
    「いいよ。焦げたわけじゃないだろ。全部食う」
    「俺も半分食べるから」
    揚げすぎた唐揚げは衣が硬かった。それでも中の肉は柔らかった。これはこれで美味いと感じ、ドラケンに視線を向ければドラケンもこちらを見ていた。
    「美味いな」
    ニカリと笑うドラケンは副総長ではなく、等身大の、十六歳のガキの顔をしていた。きっと、自分も同じ顔をしていると、そう思った。


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