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    炎(ほむら)の華兼役•声のみ()
    石田三成(お市)
    茶々
    大谷吉継

    加藤
    福島
    (毛利)
    (浅井、柴田)

    *完全な地明かりは三成がいる時のみで、それ以外は基本的にスポットなど
    →今でもあなたは私の光

    1場:燃え盛る大阪城と回想
    (照明、音響、火
    布持ってパタパタする)
    茶々出てくる
    茶々「あぁ、炎がここまで。
    燃えてしまった。
    私の城。私の人生。私の………」

    茶々「…思えば。私の人生は敗北ばかり。いつも、炎が………」
    照明、音響、火を布で表現
    →舞台面どうする?
    茶々「実の父、浅井長政を小谷(おだに)城で」
    布をつけた棒二本を用いて場面変化を表す

    浅井「…はやく逃げなさい。…すまないな、こんな父で」
    茶々「(幼い声)嫌。いやです、おとうさま!…わたくしも。わたくしも、最後まで、…」
    SE炎の音
    布のついた棒
    (照明赤、音響、火、布)
    茶々「二人目の父、柴田勝家を賤ヶ岳で」
    布のついた棒振る

    柴田「秀吉は、貴女と娘たちは生かすと言っています。…娘たちを連れ、はようお逃げください、お市様。」
    お市「いいえ。…私も残ります。
    勝家。貴方は最後まで、私を妻としてではなくお兄様の妹として扱うのですね。
    …次は、秀吉に…あの猿に嫁げばよいの?」
    柴田「お市様!」
    お市「あの男。私が欲しくて貴方を殺すのよ。ああ、本当に愚かな男。
    私は貴方の妻です。………長政様とは死ねず。貴方まで生きろと言う。これ以上生き恥を晒し続けろと言うのですか。
    私は、本来ならあの日死んだ身。…もう、疲れました。」

    茶々「(幼い声)わたくしも残ります!…今度こそ…」
    お市「いけません。
    あなたたちには、苦労をかけてしまうけれど。浅井の血は絶やしてはいけない。
    茶々。どうか………妹たちを、頼みましたよ。」
    茶々「(幼い声)わかり、ました」
    (照明、音響、火、布)
    布のついた棒振る
    とまる
    暗転
    スポット
    茶々「………憎かった。

    父を殺され。母を殺され。
    憎くて、憎くて、もう、どうにかなってしまいそう。
    けれど…」

    se.赤ん坊の泣き声
    布で製作したおくるみを抱き上げる
    茶々「(愛おしそうに)…秀頼。
    愛しい子。私の恨みを忘れさせてくれる。私に忘れかけていた幸せを思い出させてくれる。」

    無音

    茶々「そして。

    あの日。
    父、浅井長政が死んだ日。
    共に生き延びた弟、万寿丸(まんじゅまる)…

    寺に預けられ、出生を隠すために佐吉と名を変え。
    何の因果か秀吉に見初められ、元服し与えられた名は………

    石田、三成」
    スポット切り替え

    暗転

    2場:長浜城、石田三成と志
    石田「秀吉様に気に入られ、この長浜に来たはいいが。
    ………秀吉様の親戚などで構成された家臣団の中では、私は余所者。うまく馴染むことができないでいた。」

    大谷「いじめられているのか?」
    石田「いじめられていない!!」
    大谷「ふーん…
    では、この小汚い服は何だ」
    石田「これは…
    っこ、転んだんだ」
    大谷「…そうか。」
    石田「そうかって…
    というか!お前は誰だ!!!!」
    大谷「そんなことはどうでもいいだろう」
    石田「ぜんぜん!まったくもってどうでもよくないのだが!??」
    大谷「大谷吉継だ。
    可愛い名だろう」
    石田「(困惑したように)…これは、どう返すのが正解なんだ…?」
    大谷「………場を和ませる、軽いジョークのつもりだったのだが」
    石田「吉継…私は私以上に口下手な人間に初めて会ったぞ」
    大谷「それは褒め言葉か?」
    石田「褒めてない!!!!」
    大谷「さて。清正!正則!」
    加藤「なんだ吉継」
    石田「うわ!お前たち、どこから出てきた?」
    大谷「いきなりだが…
    こいつと試合をしようと思ってな」
    石田「無視するな」
    福島「なんでいきなり…」
    大谷「喧嘩をすると、友情が生まれる、らしい」
    石田「なんだそのジャンプ脳は!!!」
    大谷「友情・努力・勝利だ」
    石田「だからなんなんだ!!!」
    福島「そいつ、細っこいんだから無理だろ」
    加藤「俺たちが勝って終わるだろうな」
    大谷「そうして絆が生まれる。」
    石田「そんなわけがないだろう!!!!
    そもそも、そーいうのは「お前、強いな」「お前もな」っていうところから始まるのだよ!!!!」
    福島「お前も詳しいじゃねえか!!!」
    加藤「はあ。
    3対1は流石に酷じゃないか?」
    石田「…通常なら、負けるだろうが。私はまだ負けていない。
    やってみないとわからないからな。案外、私が勝つかもしれんぞ?」
    福島「そうなったら、お前にジュース奢ってやるよ」
    石田「…舐められたものだな………」
    大谷「俺たちが勝ったらスタバのフラッペな」
    加藤「期間限定のやつ、今期はなんだった?」
    石田「時代設定を崩すな!!!!」
    攻撃
    たて

    福島「三成!!お前、すごいな!!」
    石田「…私には、お前たちのような強さはない。
    だが…私にしかない強さもある。
    秀吉様はそれを見抜き雇ってくださった。
    私は、その期待に命をかけて応えたいのだ!」
    加藤「お前…思ったよりも根性があるやつだったんだな!」
    石田「…私の志は、馬鹿にはわからんというだけだ。…だが、それでいい。
    私がそうありたいと願い、それを理解してくれるお前たちのようなものがいる。
    …誰にしられずとも。理解されずとも。私は私のやり方で、秀吉様のお役に立つ。」
    福島「いーじゃねえか!
    んで…つまり…どういうことだ???」
    大谷「自分のできることを、それぞれ頑張ろうね、ということだ」
    加藤「正則はバカだもんな!わかんねーよなあ!」
    福島「おいどーいう意味だ清正ァ!」
    加藤「どうもこうも、そのままの意味だ!」
    石田「っ喧嘩はやめろ!!お前たちは揃いも揃って馬鹿だな…!」
    「「俺は馬鹿じゃねえよ!!!」」
    大谷「やはり、友情が生まれたな」
    福島「俺は…俺たちは、最強だ!!!」
    加藤「秀吉様のために頑張ろうぜ!!!」
    手を差し出す
    石田「………ああ」

    暗転
    3場:茶々の輿入れ、三成との再会
    茶々ちゃんの輿入れの話(声のみ)
    スポットのみ
    「茶々様は今日から、秀吉様の御側室になられる」
    「天下人の御側室に!」
    「喜ばしいことですぞ!」
    茶々「…そうですか」
    スポット消す(茶々のみのこす)

    茶々「…何が、喜ばしいものですか。
    憎い男。私から二度も父を奪った男。
    恥知らずにも母を愛し、結局は手に入れられなかった哀れな男。
    そんな男の妻となる。あぁ、この屈辱!!!!!」

    茶々「はよう死ね。はよう死ね。一刻もはやく!!!
    誰よりも悲惨に!惨めったらしく死ねと!!!
    …私は、いついかなる時でもこの呪詛を呟き続けていたというのに…」

    照明
    石田、大谷、茶々、座っている(それぞれ客席側を向いて、茶々とは距離がある)

    石田「………いい…天気…ですね…」
    茶々「…そうですね。
    蒸し暑く…嫌になるほどに」
    石田「そう、ですか…
    あ、あちらには滝雲が…こんな時間に見られるとは…
    茶々様は運がいい」
    茶々「………
    あれは嵐を知らせるもの。
    今はこのように晴れていても…すぐに激しい雨となる。まるで、今の天下のよう」
    石田「嵐が過ぎれば、また美しい晴れ間がひろがるものです。
    苛烈な信長公ののち、我らが秀吉様が天下をお治めになられたように………」
    茶々「では、次はまた嵐ですね」
    石田「そういうことではなく!
    …その…
    ここは身内が多いので、新しく来た茶々様は肩身が狭いでしょう」
    茶々「………そうですね」
    石田「…」
    大谷「地獄のような空気だな」
    石田「わかっているのなら………!」
    大谷「お前ほどではないが…俺も口下手だ」
    茶々「先程から、こそこそこそこそと…
    私に聞かせられない話なら、外でしなさい」
    石田「いえ!!
    …っどうする吉継」
    大谷「俺に聞くな。」
    石田「せめて…清正や正則がいてくれれば…」
    大谷「茶々様」
    茶々「なんですか」
    大谷「…….沈黙が怖くないのですか」
    石田「なぜドストレートにきいてしまうんだ吉継!!!」
    茶々「…待って。貴方達、会話を切り出せなくてコソコソしてたの?
    馬鹿なの???」
    石田「なっ、暴言が過ぎるのではないですか!!!」
    茶々「あっはははは!あのサル…秀吉の子飼いだから、人を食ったような奴らかと思って意地悪をしてしまいました。
    ごめんなさいね。」
    石田「い、いえ…
    その…秀吉様は、茶々様を大切に思っておられますよ」
    空気が凍りつく。
茶々、ゆっくりと石田に顔を向ける。
茶々「………たいせつ?」
    石田「あの御方は、人一倍、情に厚いのです。
    私の才を見込んで、ここまで育てて下さいました。」
    茶々「情に厚い?
    …ふふ……」
    (乾いた笑い、口は笑って目は死ぬ)
    茶々「私の父を、二度も殺した男が? 母を辱め、家を滅ぼした男が? その男が、私を"大切に"──?」
    石田、ようやく雰囲気の異常さに気がつく
    石田「……っそ、の…」
    茶々「そんなもの、大切とは呼ばない。
    強欲にも自由に天高く羽ばたく鳥に焦がれ、群れから攫い羽を切って手元に置こうとして。
    結局は失敗して鳥は死んでしまった。身勝手な愛を押し付けて、自分を愛さぬもの、自分の愛を阻むものを悉く殺して。
    愚かで醜悪な男にとっての"大切"など、なりたくもない」
    石田「…あの方は、愚直なのです。
    …蝉も、愛されるために命を燃やして鳴いております。 今を懸命に生きること。
    ──それしか、できぬのです」
    茶々「………」

    茶々「(ため息)
    愛に溢れたあの暖かな日々はもう戻ってはこない。
    …私は、すべてを失った。 父を。母を。…誇りさえも。
    私には、あの男の愛しか縋るものがない。それが、どうしようもなく厭わしい。

    いっそのこと、両親の元へ行けたら、と。幾度願ったことでしょう」
    大谷「……奪われた者にしか、わからぬ痛みもある。
    我らに貴女の苦しみを、怒りを計ることなどできません」
    茶々「皮肉なものですね。 奪った側の者たちが、今さら私に同情を?」
    石田「……っ、そんなつもりでは!
    ただ…」
    茶々「わかっています。
    ──けれど、どう足掻いても、私の胸のうちには、あの男への憎しみしかない。
    それでも。 私のこの心を、恨みを少しでも鎮めたいのなら…

    先程のように。──貴方が私を笑わせなさい。ひとときだけでも、私の憎しみを忘れさせて。」
    石田「………えっ」
    大谷「……無理だな」
    石田「なっ、なぜ最初から無理前提で!」

    暗転
    4場:大谷の病と友情
    スポット大谷
    たて
    刀を振りながら一回止まる
    腕をじっと見る
    明転
    大谷「妙だ」
    石田「?なんだ」
    大谷「体が動かん」
    福島「おいおい吉継あっさり負けたからって」
    加藤「(被せるように)疲れているんじゃないか?最近は戦い詰めだったからな。しばらくはしっかり休め」
    大谷「………気のせい、か?いや…
    (気を取り直して)大丈夫だ。続けよう」
    刀を振り上げ、そのままぽとりと落とす
    加藤「いやいやいやいや!少し休んだほうがいい!
    ほら、刀を置け」
    刀を奪う
    大谷「む…
    …わかった。」
    大谷のみのこる
    自分の手をしげしげと見つめる
    大谷「…やはり、思うように体が動かんな」

    刀を拾い振る

    時間の変化
    照明で表現

    ピタッととまり、刀を落とす
    よきところでたおれる(崩れ落ちる感じで)

    走って出てくる
    加藤「!!?
    おい!」
    福島「吉継!!!大丈夫か!?」
    石田「…なんだ、これは」
    福島「おい!身体中が真っ赤だぞ」
    加藤「ここも…ここも、奇妙な斑点が浮かんでる…まずいんじゃないか?」
    石田「臭い、な」
    大谷「膿のせいだ。風呂には毎日入っている。
    …最近は入るたびに身体中が痛み、血が滲む」
    手を借りて立ち上がる
    加藤「医者にかかったほうがいい」
    大谷「医者には、すでに手遅れだと
    (苦く笑う)この身体では、刀もまともに持てんな。
    …三成にすら敵わんだろう」
    石田「…冗談が言えるようなら、大丈夫そうだな」
    照明絞る
    大谷「………全身に痣が広がり、痛みで夜も眠れず。呼吸すらままならん………」
    手をかざす
    大谷「膨れ上がった顔。歪に曲がり歪んだ体」
    ふらふらと歩く
    (声のみ)
    声「なんと醜い」
    声「まるで化け物のようだ」
    声「うつるのではないか」
    声「恐ろしい…恐ろしい…」

    大谷「………いつしか、人目を避け醜い姿を隠し。」
    白い布を口元につける
    照明戻す
    大谷「もう俺のそばに近寄るな。
    病がうつるかもしれんぞ」
    加藤「俺らはそんなの気にしないって」
    大谷「(遮るように)お前たちが俺を今にも死にそうな病人のように扱うのにはもううんざりだ!!!

    気遣いはいらん。
    …俺を、これ以上惨めにさせてくれるな」
    加藤「………悪かったよ」
    福島「だけど、お前は刀や槍しかねえ俺らと違ってできることがあるじゃねえか!」
    大谷「…刀も振れん。戦に出ることはおろか、満足に動くこともできん。
    こんな俺に何ができる」
    石田「まだ、筆を持つことはできる」
    大谷「…この状態の俺を、まだ働かせようというのか」
    石田「?
    お前がそれを望んでいるように聞こえたが」
    大谷「(驚く)は、

    (ほんの少し笑う)………俺の負けだ。」

    暗転

    5場:茶々の罪悪感と夢
    Mちょっと不穏な感じ宇宙的な
    照明
    子供の泣く声
    浅井(声のみ)「──茶々
    なぜ、泣く?」
    茶々「泣いてなど、いません」
    浅井「そうか。
ならば──なぜ、ここにいる?」

    茶々「わたし、は…
    あの男の妻になどなりたくないと、はよう死ねと恨みながら…
それでも、妻となり側にいる」
    声「生きるために、汚れたか」
    茶々「違う……!!」
    声「浅井の血を引く女が、浅井を滅ぼした男に身を捧げたか。
    母の仇に、心を預けたのか。」
    茶々「違う!
違う違う違う!!!
    ちがう、の、です…
    わたし、は…」

    赤子の泣き声
    茶々「…秀吉。私の子。あの男の血を引く子。
    ………いとおしい、子」
声「あァ、情けない」
声「哀れな女」
声「裏切り者」
    声「なんという恥知らず」
    ⭐︎

    6場:夜の話生きる意味


    茶々「…こんな夜更けに、どこへ」
    大谷「………眠れなかっただけです」
    茶々「それなら、私と少し話してくださいな。」

    照明
    夜の縁側
    縁に腰掛け話すふたり
    茶々「…死んだら、楽になれると思いますか」
    大谷「…まだ…生きるのは、辛いですか」
    茶々「辛いですよ。
それでも、生きなければならないのでしょう?」
    大谷、静かに頷く
    大谷「…生きることは辛く苦しい。
    ──死ねば、楽にはなるでしょう。」
    茶々「そう…
    ええ。そうでしょう」
    大谷「だが………
    それでも。
    生きている間にしか、できないこともあるのです。」
    茶々「…生きることを赦される日など、来るのでしょうか」
    大谷「…(慎重に、言葉を選ぶように)
    俺はただ……
死にたくなった時には、"まだだ"と思い直しています。」
    茶々「"まだだ"……?」
    大谷「まだ、やれることがある。
まだ、筆を持てる。頭が動く。
    まだ。まだだ、と。」
    茶々、笑う。
    茶々「──貴方は、強いのね」
    大谷「俺も貴女のように諦めたいと願いました。…ですが、三成達に言われたのです。
    だからこそ、俺は生きる。
この醜く歪み、動かぬ体で、赦されるために生きるのではなく…許されなくても、俺の生を望んでくれる、友のために。
    …たとえ地獄でも、生きてやる、と。」
    茶々「地獄でも、それでも生きる…

    父様と母様と、共に生きたかった。
    私は…父様と母様に、生きていて欲しかった。
    ………たいせつなことを、思い出しました。

    (ぽつりとつぶやくように)あの方達が、私の不幸を願うはずがない。そんなこと、わかりきっていたはずなのに。どうして忘れてしまっていたのでしょう。

    ありがとう、吉継。貴方のおかげで、今日はよく眠れそうです。」

    7場:秀吉の死と変化
    (声のみ)
    「太閤豊臣秀吉が死んだ。」
    「幼い秀頼を支えるため、合議制の五大老が結成されたが…」
    「五大老の一人となった徳川家康は数々の禁制を破り力を強めていた」
    「対抗となって家康を抑えていた前田利家も死に。」
    「これではいつか徳川が豊臣を、天下を乗っ取る日も近いのではないかと日本中が右往左往。」
    全員「さあ、どうする三成」

    明転

    石「兼続に家康を挑発する文を送らせた。
    激怒した家康は、近場の伊達を上杉討伐に向かわせるでしょう」
    茶々「…そうですか」
    石「…最上が障壁となるだろうが…
    西で私達が、北で上杉・伊達が家康を挟撃する」
    茶々「なぜ、私にこの話を?
    …秀吉は…あの男は、秀頼を家康に託したでしょう?
    貴方が動かずとも…」
    石「家康はいけません。最近の家康の動きは目に余るあの男は豊臣を滅ぼします。
    秀頼様が生き残れる保証もない。
    秀頼様は…八歳におなりですが………
    力をつけ続ける家康に対抗するにはあまりにも弱い。
    秀吉様亡きあと…豊臣をまもるには、こうするしかないのです…」
    茶々「!
    …秀頼の…そう。あの子のために。
    ここで戦い力を削げば、秀頼の脅威が減る。もうじき迎える元服まで時間を稼ぐと。そのためなら、自分すら切り捨てられると。
    …貴方は、そう言うのですか。
    家康に勝つためではなく…
    自分が泥をかぶって、野心家の汚名を着てまで家康に挑み秀頼を護って…豊臣の家を残そうとしている、と…

    …はぁ…
    私に貴方の苦手なところを補え、と。そう言うのね…」
    石田「わかってくださったようで何よりです」
    茶々「まったく貴方という人は…!とんだハズレくじを引かされた気分ですよ!」
    石「貴女は付き合ってくださるのでしょう?」
    茶々「貴方の人望がなさすぎるのが原因ですからね」
    石「私の考えは、馬鹿にはわからぬというだけのこと…」
    茶々「わかりにくすぎるんですよ!言葉足らずにもほどがあるでしょう!
    …そんなんだから、結果だけを求める冷血漢に誤解されるのです。
    たしかに貴方はとてつもなく賢いし、才能がありますが…他人を見下さずに…もっとこう…やりようはあると思うんですよね…
    あなたが賢すぎるだけで、別に周りが劣っているわけではないのですから、バカとか言わないの」
    石田「…私を信じてくれる…私の志がわかるものだけが。信頼し合い、背中を預けられるものだけがいればよいのです。」
    茶々「だーかーらー!!!
    ほんと、もう…!
    やりますよ!やってやりますとも!
    …ですが、私も豊臣での立場は弱いので!!!期待しないでくださいね!!!」

    暗くする
    スポット
    三成はける

    茶々「…あの男を憎み。豊臣の家を憎み。
    はよう死ね、はよう滅べと願い続けたというのに。

    ようやく、滅びる。ながい…ながすぎた私の復讐が終わる。
    ………
    けれど………私に残った家族。
    私の弟が、私の息子を救おうとしている。

    私は、弟…三成が尊敬し信頼したあの男に絆された。その血を引く我が子、秀頼を…この家を、あいしてしまった。
    負けると知って、それでも戦うのだというあの子を,支えたいと思ってしまった。
    (苦く笑って)…力を尽くさずに、いられましょうか。」

    暗転
    8場:説得

    茶々「あなたたちは、家康につくのですか」
    加「…俺も、戦いたくはない。
    確かに、家康殿は秀吉様の死後勝手をしている。
    だが…秀吉様は家康殿に秀頼様を頼んだんだ。三成は…秀頼様を利用して、豊臣の家を乗っ取ろうとしているようにしか見えん!」
    茶々「………そう、思うのですか」
    福島「俺にはわからねえよ…
    …せめて、利家殿が生きていたら…」
    茶々「豊臣をまとめ、家康を牽制できた…かもしれませんね。
    ですが…すでに死んだものの話など。今となっては意味のない考えです」
    加藤「三成では家を守り切ることなどできん。
    あいつは病の友ですら家大義のためと言って駒のように扱う。
    そんな男が何を護れる。…まして、太平の世などつくれるものか。」
    福島「家康殿は、豊臣を存続させると約束してくださった。
    …茶々様は…」
    茶々「私は、三成を支えたい。
    ………あの子、きっとこれからこういうふうに仲間と戦うことになるのでしょうから」
    加藤「…あいつを、頼みます」

    【けすかも
    (毛利は声のみ)
    毛利「毛利は、三成殿に従います。ですが…毛利も一枚岩ではない。
    …祖父や小早川の叔父上であれば違ったのかもしれませんが。戦局次第では…」
    茶々「かまいませんよ。
    貴方は、大阪城で私たちといるだけでいいんです。西で毛利がどうしようと、秀頼と総大将の貴方だけは決して動いてはいけない。そうすれば…
    たとえ負けたとしても、三成が勝手にやったことになる。
    …それが、三成の策です」
    毛利「
    三成殿は…秀頼様のために死ぬおつもりなのですか?」
    茶々「ええ。しかも、忌々しいことに…私は生き延びて、どうにかしろと言うのです。
    …責任を取って一緒に腹を切るくらいは、してあげるのに」
    毛利「…やめてくださいね。
    家康殿が激怒するのが目に浮かびます。
    豊臣のせいで貴女が死ぬとなったら、あの方は全力で潰そうとするでしょうし…
    手を貸した毛利もただでは済まなくなります」
    茶々「それなら、それで…
    あの男が苦しむというのなら、死に甲斐もあるというもの」
    毛利「………家康殿も哀れだ…」】

    暗転
    9場:関ヶ原

    法螺貝
    声のみ
    「慶長5年、9月15日」
    「関ヶ原の戦い」
    se
    大谷「おお、始まったようだぞ!
    布陣は我らに有利。陣営の数も我らが上…
    さぁて………どれほど裏切ることか…
    まったく…お前には人望がなさすぎるんだ…」
    石田「…今更言っても仕方のないことだろう」
    大谷「そう拗ねるな。
    この戦…まぁ、まず負けるだろうが。しかしまだ負けてはおらん。
    やってみないとわからない。勝てるかもしれんぞ?
    そうなったら、どうする」
    石田「………そうなったらそうなったでいい。
    勝っても負けても、秀頼様の損にはならん。」
    大谷「あの小早川がのさばるぞ?」
    声「………小早川殿が…指示に従わず、松尾山に…」
    大谷「ふむ…裏切りを隠そうとすらしない、とは…なめられたものだなぁ、三成」
    石田「うるさい…」
    大谷「あれもかつては秀吉様の後継に名が挙がったほどの男。家康ほどではないにしろ…相手をするのはなかなかにめんどくさい。
    さて…では、牽制役を送るか…」
    石田「ほう…政治も戦も同じ、と………」
    大谷「いいや?
    あくまでも机上の空論。
    お前は政治はうまいが戦は…弱すぎる」
    石田「さっきから!!!いちいちいちいち!
    ちくちく言葉はやめろ!地味に傷つくから!!!
    私のことが嫌いなら東軍につけばいいではないか!」
    大谷「そうかっかと拗ねるな。俺はお前を嫌ってはいない。
    死ぬために戦うなんていう前代未聞の貧乏くじを引かされたのだ。嫌味くらいは許せ。」
    石田「…人が気にしていることを…」
    大谷「(驚いたように)なんだ。お前、人徳のなさを気にしていたのか!
    それならそうと言えば良いものを。改める気配すらないから、治らんものだと思っていたぞ」
    石田「だから…」
    大谷「(遮って)さぁて、そろそろ本腰を入れて戦を始めるか。
    島津に伝令を…」
    声「島津…進軍拒否…」
    大谷「何!???」
    声「小早川、裏切りました!」
    石田「牽制役は…」
    声「皆裏切ったとのこと!!!」
    大谷「っでは、毛利に…」
    声「毛利、動きません!!!」
    大谷「毛利は総大将!!!動かんなどありえんだろう!!!」
    石田「………いや。
    当主の輝元が総大将として大阪城にいる。
    どちらの味方となっても生き残れるのだ。
    …言っただろう。勝っても負けても、秀頼様の損にはならぬ、と。」
    大谷「…お前!!!もしもの時はと決めていたな!??
    本当に負ける気で戦に挑むとは!!!この気狂いめ!!!!!」
    石田「………それで、秀頼様が生きられるのなら。豊臣の家が続くというのであれば。
    私は喜んでこの命を捧げよう」
    大谷「は、ははは!
    まったく…お前の忠義には驚かされる。

    …俺も、ようやく覚悟が決まった。」
    石田「………吉継」
    大谷「こうも周り中敵だらけとは…人徳のなさ過ぎる友人を持たねばなかなかできん経験だぞ?」
    石田「私の感動を返せ!」
    大谷「まぁ待て。お前はいつも判断がはやすぎる。
    お前に感謝している、と言っているのだ。
    …俺はここで死ぬ。この身体ではすぐに捕まるだろう。だが、それではつまらん。

    お前は俺を生かしここに連れてきた責任を果たせ。」
    石田「…お前たちの死が。私の恥が、秀頼様の安全に変わり、豊臣をながらえさせる。
    無駄にはしない。…必ず追いつく。」
    三成去る
    暗転
    大谷「ここでお前の分まで生きてやると言わんのがお前らしいが。

    ………ゆっくり来い、三成。」

    暗転(or照明、大谷はける)

    10場:敗北、処刑
    声「関ヶ原………
東軍の勝利でございます」
声「石田三成、敗北
西軍の将たちは敗走、処刑されております」

    スポット
    茶々、石田の縄を切る
    石田「何をなさっているのですか」
    茶々「…逃げないのですか」
    石田「私が死ぬことで、ようやく関ヶ原が終わる。ここで私だけが逃げることはできません。
    …それでは、この戦いで死んでいったものたちがうかばれない」
    茶々「………
    貴方は、小谷城落城の後、寺に預けられた私の弟。
    …秀吉に父と母を殺されたと知って。それでも豊臣のために死ねるというのですか。」
    石田「…それは、貴女も同じでしょう。」
    茶々「貴方に生きてほしいという私の願いを、わかってはくれないのですか」
    石田「私がこうして死ぬことで、秀頼様を…貴女を、護れるのです。
    私の気持ちをお察しください、姉上」
    茶々「はぁ………こういう時に限って饒舌なのね。
    ………先に地獄で待っていなさい。私も…秀頼も。そちらへ行くのでしょうから」
    石田「なっ、おふたりはだめですよ?!私がなんのために…」
    茶々「何を今更。私たちのせいでどれほどの命が失われたか、知らないわけではないでしょう。貴方たちの命の上に、私は生きているのですから。
    貴方が集めた西軍のものたちをはじめとして…父上たちや、母上も。………会いたくない顔ぶれにも会わなくてはいけないのは癪ですが。
    あちらへ行ったら、あの猿の憎たらしい顔をぶん殴ってやりなさい」
    石田「はは…それは…随分と恐ろしい…」

    茶々、移動
    三成のスポット消す
    se.ずしゃっと
    茶々「……終わった。
    終わって、しまった。
けれど…これで、ようやく私たちは……『負ける』ことができた。」

    11場:再び燃え盛る大阪城
    照明


    茶々「関ヶ原から、15年。
    貴方が命を賭して稼いだ時間。
    ………私の人生は、敗北と共に。いつも、炎が…
    せめて貴方だけでもと思っていたけれど。…それも、叶わなかった。

    けれど。貴方が命を賭して護った秀頼は。あの子だけは…」
    照明(スポット)

    花のようなる秀頼様を 鬼のようなる真田が連れて 退きも退いたり鹿児島へ

    茶々「真田では、なく。鹿児島でもなく。
    けれど、遠き地へ逃げた秀頼の死の知らせは、まだ届かない。

    …大阪城が、燃えていく。
    燃え尽きれば、死体も何も残りはしない。
    すべての真実を知るのは、最早私だけ。
    それでこそ………あの子は、生きられる。
    三成が命を懸けた希望が未来に繋がる。

    あぁ、私の人生は。
    ………三成の。あの子の死は。

    無駄では、なかった」



    茶々「けれど…ひとつだけ。
    もし、また生まれ変わるなら──
    今度こそ、
    恨みなど知らず。憎しみなど抱かずに、ただ幸せに……。

    (風に乗ってかすかな笑い声が遠くへ消える)
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