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    satoko_enst

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    satoko_enst

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    新刊『LOVE to HATE』の後日談になるため、そちらを読んでいただいた後に読んでいただけたら嬉しいです。※読んでなくても話はわかるとはおもいます!

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    高潔は渇望に穢れる鼻腔を刺激するガソリンの匂い。湿ったアスファルトの生ぬるい熱。頭から止めどなく流れるぬるりとした生暖かな生命。指一本さえ動かせない身体。くぐもって聞こえるどよめき。耳をつんざく鳴り止まないクラクション。割れて砕けた眼鏡。原型を留めていない愛しい人達だったもの。お父さん…お母さん…。目の前の惨状から逃げるように意識がホワイトアウトしていく。

    目覚めると真っ白な天井と微かに鈍い音を立てている業務用エアコン。少し視線を右に移すと腕に繋がれた点滴がある。薬品と消毒用アルコールの香りがここがどこかをぼやけた視界でも嫌でも理解させる。病院。視界とは相反するようにハッキリとした意識は私だけが生きているという事実を突き付け絶望させるのに十分だった。一瞬で愛する両親を失った。突っ込んできたトラック。間抜け面で寝惚けていた運転手の顔をありありと思い出していくと心の奥が沸き上がる黒々とした負の感情で支配されていった。返して、私の大切なお父さんとお母さんを。こんな醜い世界に一人ぼっちにしないで。死が救済だというのなら今すぐ私を殺せ。ろくに動かない左腕を伸ばして点滴を引き抜く。死んでやる。死んでやる。死んでやる。すぐに看護師が駆けつけて私のむなしい抵抗は止められた。
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