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    ふゆふゆ

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    ふゆふゆ

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    大変お待たせ致しました。
    中白🌟🎈シリーズの主軸の全年齢版です。
    今回は年末から新年のお話なので、今の時期に合わせて全年齢に編集致しました。
    後編は正月明け頃に公開、最終話は🎈の誕生日に合わせたいところですが先になってしまうので後編と同時に公開予定です。
    エロ有り全編は支部でご覧になって下さいませ。

    君と永遠の愛を誓う前に 中編クリスマスが過ぎ、職場や友人、親族などにも伝えて、雫とも打ち合わせをしつつ、本格的な準備に移行した。
    バタバタしつつも年末、二人とも仕事納めだ。
    今年は二人とも風邪は引かなかった。

    「今年は引かなくて良かったね。」
    「まあ、類が栄養バランスが完璧な飯作ってくれてっからな。」

    同棲始める前より健康になってる自覚あんぞと笑う中山に白藤はくすくすと笑った。
    日頃きちんと掃除している為、大掃除自体は直ぐに済んだが。細かい所を言えば。

    「類がきっちり料理してくれてっから換気扇がめちゃくちゃ汚れてたな。去年はあんな汚れて無かったぞ。」
    「一応マメに掃除してるんだけどね、どうしても汚れるんだよね。」

    しめ飾りを玄関に掛けた後にそんな話をしつつ、また室内へ。
    そのまま今日出来るおせちの下拵えをする様子の白藤に手伝うか?と中山は問えば、ありがとと白藤がふにゃっと笑う。
    腕捲りをしながら何を手伝えばいいか問えば、白藤が指示をくれた。

    「ふふっ、去年も手伝ってくれたよね。まあその前にお風呂で無理させられたからだけど。僕、逆上せるって言ったのにねぇ。」
    「ぐっ、悪かったって…。」

    今年はちゃんと自重するっつーの。と中山は唇を尖らせた。

    「それは本当にお願いね?」
    「分かってる。」

    やっぱ去年の引きずられてんな…とぶすっとしている中山に白藤はくすくすと笑い。

    「去年は責任からだけど、今年は何かあった訳でもなく、純粋に手伝ってくれてることが凄く嬉しい。」
    「そうかよ。」

    白藤から顔を逸らした中山の耳は赤く、白藤はまた笑みをこぼす。

    (ああ、好きだなぁ。)
    「ね、司くん。今日お風呂、一緒に入る?」

    白藤の甘えた声で中山は逸らしていた顔を勢いよく白藤の方へ向けた。

    「いや、食い付きすぎでしょ。」

    相変わらず欲に忠実な中山に白藤が吹き出す。
    冗談だったのかよと不服そうな中山に冗談じゃないよと首を横に振った。
    そのまま上目に中山を見た白藤はとびきりの猫なで声で口を開く。

    「えっちもしていいよ?」

    その言葉に目を丸くした中山がマジ?と問い返して来たので、白藤はうん、いいよと頷いたのだった。

    「さっさと下拵え済ませて、風呂行くぞ。」

    明らかに先ほどより生き生きしだした中山に肩を竦める。

    「喜びすぎ。司くん、本当にスケベさんだよ…。」
    「褒め言葉だな。」

    ふふんと鼻を鳴らした中山にまあそんな司くんが好きなんだけどと返した白藤。
    更にムラッとしたが、今はおせちの下拵えを済ませてしまおうと中山は頼まれた仕事に向き合った。
    本日に作れる物は作っておいて、一度タッパーの中に入れる。
    味を染み込ませたりしないとならないものはジッパーへ。

    「全部は作ってしまわねぇのか?」
    「うん、染み込ませたりしなきゃならない物とかあるし。去年のは急遽だったから本当に簡易だからね。今年はちゃんとした物を作るよ。」

    不思議そうな中山に頷く。
    そうなのかと冷蔵庫を見た中山にふふっと笑みを溢した。

    「なら今日の作業は終わりか?」
    「うん。」

    中山の問いに頷いた白藤を確認して、ならとにんまりと目を細めた。

    「風呂行くか。」

    そのまま白藤の腰を抱いた中山にもう!と頬を膨らませる。

    「司くんの性欲魔神!」
    「んなの分かりきってんだろ。」
    「開き直った!!」

    そんな中山と白藤をミモザとスミレは見て首を傾げた。



    去年の様に逆上せてしまった白藤の後始末をしっかりとして、リビングのソファで休ませれば白藤がくすくすと笑う。

    「ふ、ふふっ、」
    「どうした?」
    「ん、ふふっ、だって僕結局、去年と一緒で逆上せてるのが面白くて。」

    笑いだした白藤に問い掛ければ、去年と同様の事になっている事が随分と面白かったらしい。

    「ね、司くん、今日何であんな感じだったの?」

    手を伸ばして来た白藤の手をにぎにぎと握り返す。

    「何でって言われても類とイチャイチャしたかったとしか言えねぇわ。」

    水、まだ飲むか?と問えば、白藤は頷く。
    再度口移しで水を飲ませれば、白藤の喉が動いた。
    そのまま鼻の触れ合う距離で見つめ合い、今度は普通に口付ける。

    「ふふ、そっか。ね、司くん、えっちはもう出来ないけど、まだイチャイチャする?」

    甘えたような白藤に当然と返して抱き締めた。
    翌日と翌々日は足りない物の買い物やミモザとスミレと目一杯遊びつつ、のんびりと過ごし去年とは違う年末を過ごしている。



    大晦日。
    昨日の姫納めの激しさが祟っているのか珍しく白藤がまだ起きておらず、自身の腕の中に居た。
    すぅすぅと規則正しい寝息立てている白藤に中山は改めて顔をじっと見る。

    (睫毛長ぇバサバサ、自然体でこれだもんなぁ。マッチ棒乗りそうだ…。肌も白くてきめ細かいし、唇ちっせぇ、可愛い。)

    頬を撫で、唇を指で押す。
    ふにっとした弾力が押し返してきて、堪らずふにふにと唇を押さえた。

    「んぅ、」

    とろりと寝ぼけ眼で白藤が目を覚まし、中山と目が合う。

    「つかさくん?なぁに…?」
    「はよ、類。」

    寝起き故に舌足らず、その可愛さに堪らず小さな唇を自身の唇で塞いだ。

    「類。もうちょっとだけ寝よう。な?」
    「…ん。」

    こくんと頷いた白藤と共に今一度ベッドに寝転ぶ。
    時刻はまだ午前七時過ぎ。ミモザとスミレのご飯はもう少しだけ後。
    直ぐに白藤から寝息が聞こえだし、中山もうとうとと微睡む。

    (これは去年と一緒だな。)

    思わず笑ってしまった。
    次に二人が起きたのは10時を過ぎた頃だ。
    ベッドから起き上がり、服を着替えだした白藤に中山が口を開く。

    「去年は多分夕方まで寝てたよな?」
    「うん、寝てた。前日にはしゃぎすぎたせいか司くんったら僕のナカに入ったまま寝てて、そのままなし崩しに朝からがっつりえっちして、また寝たもん。」

    まあ今年は司くんが先に起きて僕にちょっかい出してたけど。とむすっと口をへの字に結んだ白藤に中山は悪びれない。

    「最後は類もノリノリだったじゃねぇか。」
    「元は司くんのせいだもん。」

    ぷくっと頬を膨らませた白藤が中山から顔を逸らすので、中山は肩を竦め、立ち上がる。
    そのまま白藤を後ろから抱き締めた。

    「いや、改めて俺の恋人は美人だなと思ってたらついな。」
    「ついってレベル越えてるよ!司くんのえっち!!」

    振り向きべっと舌を出した白藤がやはり可愛く、またデレっとなった所でぐうと久方ぶりに中山の腹が鳴った。
    目を丸くした後に大口を開けて白藤は笑い出す。

    「あはは、久しぶりに司くんのお腹の音聞いた!今日も司くんのお腹は元気だなぁ。」
    「いや、久しぶりだな。」

    朝と言うかブランチにしよっかと笑う白藤に頼むと中山は目を細めた。

    「司くん、何か食べたいものある?」
    「何でもいいぞ。類の料理なら何でも旨いし。」
    「何でもが一番困るのに、もー。今、冷蔵庫に何があったかなぁ。」

    他愛のない話をしながら二人で寝室を出て、ミモザとスミレを出す。
    そのまま2匹のトイレ掃除をした中山は顔と手を洗う為に洗面所へ。
    朝の支度を済ませて、キッチンに立っている白藤を後ろから抱き締めて問い掛ける。

    「何にするんだ?」
    「夕飯がお蕎麦で和食だし、食パン使いきりたいからフレンチトースト。」

    卵をボウルに割り入れかき混ぜている白藤が司くんのはちゃんと甘くない奴だよと微笑む。

    「サンキュ。」

    リップ音を立てて頬にキスすれば白藤はくすぐったいよと笑う。
    だが、中山の頬にキスを返してくれる。

    「ミモザとスミレに飯は?」
    「未だ。お願いしてもいい?」
    「分かった。」

    頷き2匹の皿を出してフードを入れる。
    フードの入れる音を聞きつけた2匹が中山の足元に纏わりつく。

    「わぁった、わぁった!あぶねぇから足元チョロチョロすんな!」

    中山の言葉に2匹はリビングのマットの上へ駆け出す。
    既にお座りして待機している2匹に笑い、まずスミレの前に皿を置き、ミモザの皿は持ったままで手を差し出す。

    「ミモザ、お手。」

    しゅばっと中山の手に右手を置いたミモザ。

    「相変わらずきびきびしてんな。お代わり。」

    くっくっと笑いながら続け様にコマンド。しゅばっと左手を置いたミモザ。
    スミレはやはりきちんとお座りしてミモザを待っている。

    (そういや気が付いたら俺の言う事もちゃんときくようになってんな。スミレと番になれたからか?)
    「伏せ。」

    しゅばっと伏せをしたミモザの前に皿を置く。
    手を出し、待て。じっと中山の顔を見るミモザに待てな?待て。と言い暫く。

    「良し!」

    その言葉と共に立ち上がり皿に顔を突っ込んだミモザを見てからスミレも皿に顔を寄せた。
    がつがつ食べているミモザとカリカリポリポリと一粒ずつ丁寧に食べているスミレの頭を撫でて、暫し眺める。

    (やっぱ可愛いな。)

    目を細めて立ち上がる。
    ダイニングテーブル側の椅子に座りテーブルに置いてある新聞を広げた。
    暫く読み進めていたらことんと音を立てて置かれる皿。

    「お待たせ。」
    「サンキュ。」

    サラダとスープ、フレンチトースト。
    中山の分にはハムとチーズが挟まっており、白藤の分は粉砂糖が掛かっており、フルーツが乗っている。
    白藤が自身の前に腰を降ろしたのを確認して、手を合わせて食前の挨拶。一口口に含み。

    「ん、んまい。」
    「良かった。」

    思わず漏れた感想に白藤がふにゃりと笑う。
    自身の分を口に含み、満足そうに頷く。
    食べながら雑談をする。

    「今日、何処か行くか?」
    「んー。夜に除夜の鐘を突きに行くし、お家でゆっくりしてもいいんじゃない?」
    「買い物とかねぇ?買い足さねぇとならねぇもんとか。」

    んー。と白藤が顎に手を当てて考える。

    「食材はあるし、お正月用の食材も大丈夫。日用品も切れている物や切れかけている物も28日の大掃除で確認して昨日と一昨日に買い足したし、ミモザのペットシーツとかお散歩用品も特に切れてないし、スミレのトイレ用品も大丈夫。ご飯もある。うん、大丈夫!」

    頷いた白藤がそれに今日はお節の仕上げと盛り付けしなきゃとやはりふにゃっと笑った。

    「それにミモザとスミレのシャンプーもしなきゃだし。」
    「ゆっくりする暇ねぇな。」

    ふっと噴き出した中山に本当だねと白藤もくすくすと笑う。

    「まあ俺もやれることは手伝うし、それ終わらせてゆっくりしよう。」
    「うん。」

    そのタイミングで食べ終わり馳走の挨拶をして、皿を重ねてシンクに持っていく。
    そのまま腕捲りをした白藤は皿を洗う様なので、中山はテーブルにアルコールを吹き掛け、拭いていく。
    拭き終わり、今度は既に洗い終わった食器を拭き上げて棚へ。

    「何時もありがと。」

    嬉しそうな白藤に俺がやりてぇからやってんだよと中山も微笑んだ。

    「でも僕この時間凄く好き。」
    「俺も。」

    ふにゃっと笑った白藤に目を細め、中山も頷く。
    最後の食器を拭き上げて棚に仕舞えば、白藤がお茶にする?と問い掛けてきた。

    「いいな。」

    同意して湯呑みを取り出す。
    白藤はケトルのスイッチを押して、茶の準備。

    「あ、司くん。ミモザとスミレのお皿。」
    「分かった。」

    食べ終わっている2匹の皿を回収し、シンクへ。
    白藤は茶を入れて、湯呑みをダイニングテーブルに置く。
    また椅子につき、茶を飲みながら他愛のない話をする。

    「何かこんなにのんびりしてるの久しぶりな気がする。」
    「だな、最近式の準備とかでバタバタしてっから。」
    「ふふ、そうだね、うん。僕、本当に司くんのお嫁さんになれるんだね。嬉しいな…。」

    幸せそうに噛み締めて話す白藤にもう既に嫁だけどなと中山も笑う。
    中山の言葉に白藤は目を丸くした。

    「もうお嫁さんって思ってくれてるの?」
    「いや、どう考えても嫁だろ。」

    家事全般をして自分を支えてくれる白藤は中山にとっては既に嫁だ。
    ただまだ籍を入れておらず、式をしていないだけ。証明がないだけだ。

    「…そっか。えへ、嬉しい。」

    照れてはにかみ、頬を掻く白藤が堪らなく可愛い。
    思わず中山も立ち上がり白藤の傍へ向かい、抱き締める。

    「わっ!?」

    驚いたような声を上げたが、直ぐに背中に腕が回される。

    「類、愛してる。」
    「…ん、僕も司くんを愛してる。」

    白藤の耳元で甘く囁けば、きちんと愛を返してくれる愛しい存在。

    (もう俺は類がいねぇと生けていけねぇ。)

    すれ違いで白藤が倒れた時、本当に生きた心地がしなかった。
    そこで自分が何れ程深く白藤を愛しているのかを改めて自覚した。
    自分から避けていた時は気力を失いつつもそれでも我慢出来た。
    だがすれ違いが解消され、入院で家に白藤が居ないだけであんなに気力を失ってしまった事で生きていけない事も自覚した。
    だからこそ帰ってきた白藤が自分に縛りつけたいとずっと自分を好きでいて、捨てないでとねだられた事が何より嬉しかった。

    (あの日、類が言った死にたくなったと言う言葉。それは俺と同じで類も俺が居ないと生きていけない事の証明だ。)

    きっと自分たちはお互いに依存している。
    自覚はあるが、自分たちはそれでいいのだ。

    (類は俺の唯一だから。類もそうであればいい。俺が唯一であれ。)
    「類。」
    「ん?」

    名を呼べば白藤が小首を傾げる。

    (仮に類の運命が俺じゃないとしても絶対に手離してなどやるものか。)
    「本当に愛してる。」
    「…僕も貴方だけだよ、司くん。」
    (本当にお前は…。)

    何かを察したかのように綺麗に微笑む。
     
    (絶対に今、俺が欲しい言葉をくれるな。)

    やはり白藤には永遠に勝てそうにない。
    そう考えて中山は今一度口付けを落とした。
    パッと離れて見つめ合い、また口づける。
    何度か触れるだけを繰り返した。

    「お茶冷めちゃったね。」

    飲んでいた茶は冷たくなって不味くなっている。

    「入れ直す?」
    「いや、いいわ。それより類、そろそろ動かねぇと駄目じゃねぇ?」

    中山が残っていた茶を飲み干して、壁掛け時計を指差す。

    「あっ!本当だ!完全に寒くなる前にミモザとスミレのシャンプー!!」

    白藤も飲み干して、中山の湯呑みと自身の湯呑みをシンクへ置く。
    そしてそのまま先ずはスミレを呼んだ。
    スミレは呼ばれた事で首を傾げ、近づいてきた。
    そんなスミレを抱っこして、白藤は洗面所の方へ。

    「にゃっ!?」

    やっと察してハッとしたスミレは逃げようとするが、駄目ときっぱり言われてそのまま風呂の中へ。
    それを確認して中山は2匹専用の箱からトリミング用品を取り出す。鋏やコーム、バリカンなど。
    因みに2匹のシャンプーが白藤担当になったのは中山が洗うとミモザが吠えてとんでもなく暴れるからである。なお噛みつきはしない。
    因みにスミレはシャンプー自体は比較的に大人しくさせてくれるのだが、風呂場に入るまでに大変よく暴れてくれるのは余談だ。
    白藤に駄目と言われると大人しくなるのだが。
    スミレが風呂場に連れて行かれた事で、次は自分の番だと察したミモザが股の間に尻尾を挟み、耳を寝かせてぶるぶる震えている。

    「いや、ミモザ震えすぎだろ。」

    お前本当にシャンプー嫌いな?と撫でれば何か訴えるかのように情けない声でミモザは鳴いたのだった。
    それから数十分。

    「司くん、お願い!」

    風呂場から白藤の声がして、中山は2匹用のタオルを持ち、洗面所へ。
    風呂場の扉が開いており、抱えられているスミレは随分とほっそりとしている。
    何時ものもふもふからは信じられない程細い。

    「んにゃぁ…」

    悲しそうに鳴いたスミレをタオルで包んで受け取り、ドライヤーを持ってリビングへ。
    白藤も一緒に戻ってきて、逃げようとするミモザを後ろから捕まえた。

    「ほら、次はミモザだよ。」
    「きゃん!!」

    この世の終わりのような顔をしたミモザが助けを求めるように中山を見てくる。
    思わず噴き出した中山は頑張れと返す。
    中山が助けてくれないことを察したミモザはきゅう…と悲しそうに白藤に向かって鳴いていたが、駄目。ときっぱり言われて項垂れた。
    そのまま洗面所へ連れて行かれたミモザを見て、中山はドライヤーをコンセントに差した。
    ドライヤーを持ち、スリッカーでスミレを乾かしていく。
    大人しくドライヤーを当てられながらブラッシングされているスミレに話し掛けた。

    「スミレ、ドライヤーは平気な癖に何でシャンプーは嫌なんだ?」

    んにゃんにゃと文句を言うようにスミレは何か話しているがやはり何を言っているのかは分からない。
    だが、何となく言いたいことを理解して問い掛ける。

    「シャワーで水掛けられるのが嫌か?」
    「にゃ!!」

    その通り!!と言わんばかりに起き上がり力強く鳴いて中山を見たスミレに噴き出し、そうかと言いながら乾かしていく。
    ミモザは比較的に直ぐに乾くが、スミレは猫故なのか乾くまでに結構な時間が必要なのは余談だ。
    すると洗面所からタオルに包まれた悲しそうなミモザを抱えた白藤がリビングへと戻ってくる。
    そのままペット用のドライヤーを起動させた白藤もスリッカーでミモザを乾かしていく。
    ペット用のドライヤーに関しては初めてシャンプーをした後に乾かす時間を短縮するために買い、随分と重宝されている。

    「今日のミモザも暴れたか?」
    「暴れたねぇ。逃げ回るし悲痛な声で鳴くし。スミレはシャワー掛けたら大人しくなったけど。これは何時もだけどね。」

    何で2匹ともシャンプー嫌いなのかなぁ、もう。海には入るくせに。と息をつく白藤に先程のスミレとの会話を話す。

    「スミレはシャワー掛けられるのが嫌らしいぞ。」
    「そうなの!?」
    「さっき水掛けられるの嫌なのか?って聞いたらその通りと言わんばかりに起き上がって力強く鳴いたから笑った。」

    そうなの?と白藤が目を丸くして、スミレを見ればスミレは肯定するように頷いた。

    「ならミモザもかなぁ…?」
    「わふっ!!」

    ドライヤーを掛けられているミモザも同意するように力強く鳴いて、白藤も噴き出した。

    「肯定かな?本当にお喋りだねぇ、ミモザもスミレも。けど、シャンプーはこれからもするからね?」

    きっぱり言いきられてガーンと言わんばかりに口を開けたミモザが耳を寝かせてしょぼんと項垂れた。
    スミレも同様に耳を寝かせて項垂れ、悲しそうな顔をしている。
    それに中山と顔を見合わせて笑ったのだった。

    「本当に表情豊かで2匹とも可愛いんだから。」
    「いや、本当にそれな。」

    乾いた所でスイッチを切り、今度は2匹に足裏バリカンをして、中山はスミレを抱えて爪切り。
    白藤はミモザの爪を切り。足の毛先を整え丸くして足をクリームパンに。
    汚れが落ちて今朝よりもふっとした2匹の写真を撮って、頑張った2匹にはご褒美のおやつをプレゼント。

    「頑張ったね。えらいえらい。」

    頭を撫でた白藤がそのまま立ち上がる。

    「さて片付けて、お節の仕上げしようかな。」
    「手伝う事あるか?」
    「あとは焼き物作って、もう一度火入れしてお重に詰めるだけだから大丈夫。」

    微笑んだ白藤にそうか、けど手伝い必要なら言えよと返せば、頷いて礼を言う。
    そのままトリミング用品を片付けて、中山は2匹に向き合った。

    「ならミモザ、スミレ、俺と遊ぶか?」
    「にゃ!」
    「わふっ!」

    千切れんばかり尻尾を振るミモザとおもちゃを取りに立ち上がったスミレがクリスマスにプレゼントしたおもちゃを咥えて此方へ戻ってきた。
    ミモザとスミレと遊びだした中山を見て、目を細めた白藤はお節の仕上げに取り掛かった。
    日持ちさせたい為、煮物等々に火入れをして焼き物を作る。
    順番にお重に詰めていった白藤が最後の品を入れて、改めて確認。
    全て綺麗にお重に収まっており、白藤は満足そうに頷いた。

    「よし!完成!」

    蓋を閉めて、明日以降に食べる為に涼しい所へ避けておく。冷蔵庫は固くなる食べ物も有るために白藤はあまり好きではない。
    気がつけば後ろが静かになっており、白藤は振り返り、肩を竦めて頬を緩めた。

    「もう、いくらホットカーペットの上と言えど、風邪引いちゃうのに。」

    そう溢し、寝室から毛布を取ってくる。
    ホットカーペットの上で寝てしまっている中山とその中山の傍で引っ付き丸くなってるミモザとスミレを写真に納めて、毛布を掛けた。
    やはり幼い顔をして寝ている中山の頬にキスを落とす。

    「ふふ、大好きだよ。司くん。」

    目を細めて中山と二匹を見ていると白藤も自然と欠伸が出てきた。

    「ふぁ…気持ち良さそうに寝てる司くん見てたら、僕も眠くなっちゃったな。」

    そう呟けば、ミモザとスミレが目を覚ます。
    2匹は白藤を見て小首を傾げた。
    そんな2匹に人差し指を立ててしぃ…と言い、中山の投げ出されている腕に頭を置いて、隣に寝転ぶ。
    きちんと毛布を一緒に被って、今一度起きた2匹を手招く。
    2匹が再度、白藤と中山の傍で丸くなったのを確認して、白藤も目を閉じた。

    「…ん、」

    中山の意識がゆっくりと浮上してくる。
    部屋は既に暗くなっており、自身の腕枕で白藤が眠っている。
    ミモザとスミレも傍で丸くなり規則正しい寝息を立てていた。
    自然と笑みが溢れる。

    「毛布、類が掛けてくれたのか。」

    自身に掛かっている毛布を見て、腕の中の愛しい存在の顔を見る。

    (本当に愛しいな。)
    「類、愛してる。」

    腕の中の恋人を抱き締めて囁けば、ゆっくりと白藤の瞳が開いていく。

    「…ん、司くん。」
    「起きたか?はよ、類。毛布、ありがとな。」
    「んーん。おはよ、司くん。」

    ふるふると首を横に振った白藤がふにゃっと微笑む。
    そんな白藤に触れるだけのキスをして、ぱっと離れた。

    「部屋、真っ暗…。今、何時…?」
    「ん?7時前だな。」

    起き上がって時計を見た中山に夜、食べる?と白藤が問い掛けてくる。

    「だな。」

    頷いた中山に分かったと微笑んだ白藤も起き上がり、立ち上がった。
    部屋の電気を点けて、キッチンに向かった白藤がエプロンを着けるのを見て、中山も毛布を畳み、一度ソファの上へ。

    「何か手伝うか?」
    「ふふ、ならお願いしようかな。」

    悪戯っぽく微笑んだ白藤にお手柔らかにな?と苦笑気味の中山に大丈夫だよと白藤はくすくすと笑みをこぼした。
    腕捲りをして白藤に近づいて、隣に並ぶ。 

    「じゃあ司くんには、」

    白藤から指示を貰い、手伝っている中山の手元を見た白藤がふふっと笑う。

    「司くん、去年よりちょっとだけお料理に慣れてきてるね。それでも手付きはちょっと危なっかしいけど。」
    「まあそれなりに手伝ってっからな…。」

    天ぷらの衣を混ぜ合わせている中山が照れたように顔を逸らした。
    その耳は赤く白藤はくすっと笑う。

    「何時もお手伝いしてくれてありがと。大好き。」
    「…俺も好きだ。」

    海老の下拵えをしていた手を止めて、中山を覗き込むように上目で見た白藤にまた照れた様子の中山がぶっきらぼうに愛を返してくれる。
    そんな中山にまた笑みを溢して、白藤は下拵えを再開する。

    「そう言えば去年はえっちのし過ぎでふらふらしてた僕を見かねて手伝ってくれたよね。」
    「ぐ、だから悪かったって…。」

    ずっと言われ続けてんなと拗ねたように唇を尖らせた中山の頬にキスした白藤に中山が驚いた様子で白藤の顔を見た。
    悪戯が成功したと言うような笑みを浮かべた白藤はあまりにも可愛い。

    「いや類、お前本当に可愛すぎ。」
    「んふふ、僕、司くんに可愛いって言われるのは好きだよ。」

    やはり悪戯っ子のような笑みを浮かべている白藤が可愛すぎて抱き締めたくなりうずうずとする。

    「司くん、落ち着きなくなったね。抱き締めたいの?」
    「抱き締めさせろ。」

    問われた言葉に速攻で返した中山に白藤は吹き出す。
    そのまま包丁を置いた白藤が中山に向かって手を広げた。
    それを確認して、調理台にボウルを置いた中山が白藤を思いきり抱き締めれば、白藤も中山の背中に腕を回す。
    白藤の髪に顔を埋め、肺いっぱいに白藤の匂いを吸い込んだ。

    「類、マジで良い匂いするな。」 

    噛み締めるように呟く中山に白藤が問い掛ける。

    「僕の匂い好き?」
    「好きだ。」
    「ふふ、嬉しい。僕も司くんの匂い好き。」

    白藤も中山の肩口に顔を埋めて、息を吸い込む。
    煙草と香水、中山本人の匂いが混ざり、とても落ち着くのだ。

    「司くん、好き。」
    「俺も。」

    中山に頬を撫でられて、目を閉じた。



    ミモザとスミレにも味のついてない年越し蕎麦を作り、自分たちの年越し蕎麦と一緒に食べる。

    「ミモザとスミレが居る事が去年と一番違う所だね。」
    「だな。」

    二匹が美味しそうに食べているのを眺めて、自分たちも食事を再開した。
    食べ終わりシンクにどんぶりを置いた白藤が風呂の方を向く。

    「お風呂入れてこなきゃ。」
    「…類。」

    甘えたような声で自身を呼んだ中山に言いたいことを察した白藤は口を開く。

    「今年は一緒に入りません!だって司くん絶対ナマでえっちしちゃうし何回もしちゃうでしょ!去年がそうだったもん!僕、ゴムは絶対って言ったし、一回だけって言ったよ?」
    「チッ。」

    手でバッテンを作った白藤に舌打ちをした中山に眉を吊り上げる。

    「もう、やっぱりそのつもりだった!えっちも無しにしちゃうよ!?」
    「ぐ、それは勘弁。」

    降参の意を示し両手を上げた中山にハッとした白藤は怒ったように返す。

    「無しが嫌なの?もー本当に司くんスケベだよ!!」
    「誉め言葉だな。」

    ふふんと鼻を鳴らす中山にまた開き直る!と白藤が怒るが、まあ司くんらしいけどとふわっと笑い、そのまま風呂場へ。

    (あー、マジで可愛い…。俺の嫁さんマジで可愛い。)

    白藤の可愛さに悶えつつ、テレビを点けた。
    年末恒例の歌番組はやはり去年と似たようなアーティストが多い。

    「あ、やっぱ出てる人、去年と似てるね。」
    「ああ、去年丁度一緒に風呂入った時に歌ってた劇団だ。」

    そう言いつつ、シンクの前に立った白藤が食器を洗い出したのを確認して、隣に並んで洗い上がった食器を拭いて棚へ片付ける。
    そのタイミングでお決まりのメロディーとお風呂が湧きましたと言う機械音声。

    「司くん、先に入ってきて?」
    「なら、言葉に甘えて。」

    風呂場に向かった中山を見送り、最後の食器を閉まった白藤はソファの方へと向かった。
    何となく流して番組を見ていたら、中山が上がってきて、入れ違いに白藤も風呂へと向かった。



    じゃあ除夜の鐘、突きに行くかと中山に問い掛けられまた頷く。
    中山はベッドに沈んでいた白藤の腕を引いて起こした。

    「動けるか?」
    「…ん、何とか。」

    少々フラついている白藤の腰を支えて、改めてちゃんと着替えて寝室から出た。

    「ミモザ、スミレ。」

    白藤が二匹に声を掛ければ二匹は耳を反応させて起きる。

    「ちょっとお出かけしよっか。」

    その言葉に二匹は立ち上がり、一目散に玄関に向かって行く。
    それに中山と顔を見合せて笑ったのだった。
    2匹にリードを着けてお散歩用品もきちんと持って、自宅を出る。
    車の後部座席に2匹を座らせれば、大人しく座っている2匹の頭を撫で、中山は運転席、白藤は助手席に乗り込む。
    シートベルトをきちんと締めて、車を発進させた。
    昨年と同様の神社へやってきた。
    車から降りて、ミモザとスミレも同様に降ろせば、2匹は初めて見る風景にキョロキョロと辺りを見回す。

    「ミモザとスミレは初めてだからな。」
    「今年も一年よろしくお願いいたしますって神様にお祈りするんだよ。」

    白藤が2匹の頭を撫でながら微笑む。
    2匹は小首を傾げて、その可愛さに目を細めた。
    スミレが中山の肩に乗り、ミモザは白藤に引かれて歩き出す。

    「除夜の鐘、何れくらい並んでるかな。」
    「まあ去年とそんな変わらねぇんじゃねぇか?」

    やはり少しだけフラついている白藤の腰を支えた中山にありがととふにゃりと笑った。

    「大丈夫か?」
    「うん、大丈夫。これも去年と一緒だね。」
    「去年と違うのはミモザとスミレが居るのと、着く前から類の意識がはっきりしてるとこだな。」
    「本当だね。」
    (去年はその前日の夕方からずっと激しいえっちしてたせいで、僕疲れてぽやぽやしてたもんな…。そう考えると僕、随分と体力がついたのかも。)

    懐かしくて思わず笑ってしまった白藤に何考えた?と中山が問い掛けてくる。

    「ん?去年の事。去年は司くんのせいで、ずっとぽやぽやしてたなって。」
    「う゛、」

    思わず苦い顔をした中山がばつが悪そうに顔を逸らす。そんな中山に白藤はくすくすと笑う。

    「やってる事はあんまり変わってないけど、今年はちゃんと自重してくれてたもんね。ありがと。」

    中山の肩に軽く頭を寄せて甘えたように言えば、類可愛すぎ。と中山が額に口づけてきて、白藤はくすくすと笑った。
    そのタイミングで最初の除夜の鐘が鳴り、ミモザとスミレがびくぅっと跳ね上がる。
    尻尾を膨れさせ威嚇したスミレと警戒して吠えたミモザを宥める。

    「初めてだからびっくりしたねぇ、大丈夫だよ。いい子、ミモザ。」
    「っ!?スミレ、敵は居ねぇから落ち着け!!っででっ!爪!!刺さってる!刺さってる!!」

    白藤はミモザを撫でて落ち着かせる。
    中山はスミレを宥めるが、スミレは聞いていないようだ。

    「これから暫くこのおっきい音するけど、大丈夫だから。ね。」
    「くぅん…」

    少し落ち着いたミモザを見てから、中山の肩に乗っているスミレも撫でて落ち着かせる。

    「スミレも。司くん痛いって。大丈夫、怖くないよ。ね。」
    「んにゃ…」

    スミレも爪を引っ込めて、白藤の優しい声で徐々に落ち着いてきた。
    不安そうな2匹を落ち着かせた白藤に流石だなと中山は返す。

    「ミモザもスミレも賢いから。」

    ふわりと微笑む白藤はやはり美人で魅力的だ。
    こんなに美しい相手が自分の嫁になるのだと言う事実がこんなに幸せだとは。

    「司くん?」

    思わず見惚れていた中山に不思議そうに問い掛けてくる。

    「…やっぱ類は美人だなと思ってな。」

    そんな類が俺の恋人で、嫁さんになってくれるんだと思うと誇らしくなった。と目を細めた中山に白藤が一瞬で赤くなる。心臓が早い。

    「…きゅ、急に何で?」
    「何でかか…。」

    問われた事に少しだけ考えてみる。そして先程の白藤の事を思い出し、そう思った理由を思い付いた。

    「…さっき類がミモザとスミレを宥めたろ?それで、類なら絶対いい親になるよなと思ったんだ。ずっと言ってるが、本当に俺には勿体無さすぎるんだよ。けど類は俺を選んでくれた事が誇らしいんだ。」

    その言葉は嬉しいのに、親と言う言葉にちくりと胸が痛む。だから思わず問い掛けていた。

    「…ね、司くんは子ども、欲しい?」
    「ガキ?何で?」

    白藤の言葉に目を丸くした中山。
    白藤は目を伏せて、腹を撫でる。

    「…親って言ったから。僕はどう頑張っても司くんの子ども産んであげられないから。」
    「ああ、そう言う事か。」

    納得した様子の中山は白藤の耳元で囁く。

    「ガキが欲しいのは類の方だろ?俺こそ悪いな。ガキが欲しい類の希望は叶えてやれねぇし、お前を手放してやれねぇんだ。」
    「…司くん、」
    「確かに類になら、」

    それを強調して中山は続ける。

    「俺のガキを産んで貰いてぇなと思う事もあるが、俺は類がいればそれで良いんだ。」

    類は?と問われた言葉。

    「…僕も。僕も司くんがいればいい。」

    こくんと頷いた白藤は続ける。

    「ごめんね、司くん。司くんの言った通り、子どもが欲しいのは僕。」

    謝って中山の肩に顔を伏せる白藤はまだ続けた。

    「だけどそれは僕の子どもじゃなくて、司くんの子どもが欲しいし、僕が司くんの子どもを産みたいんだ。けど無理だから…。」
    「うん。」

    白藤の話を聞きながら、中山は白藤の頭を抱え込む。

    「だから親って言葉にちょっとだけ胸がチクッとした。けどもう大丈夫。僕には司くんとミモザとスミレが居れば良い。」
    「ミモザとスミレが俺らの子どもの代わりでいいだろ?」
    「うん。」

    頷いた白藤の目尻には少し光る物がある。

    「けどね、司くん。こう言ってるけど、僕、女の子が良かったとは思ってないんだよ。」
    「ああ、それもきちんと分かってる。」

    中山の肩から顔を上げて、しっかりと中山の顔を見た白藤の目尻の涙を拭って、目を細めた。

    「くぅん…、」
    「…にゃぁ、」

    心配そうなミモザが白藤の脚に手を掛けて立って鳴いており、スミレも中山の反対の肩に居た筈なのに、白藤の頭に頭を擦り付けて鳴いた。
    そんな二匹を見て、白藤はミモザを抱えて、スミレの頭を撫でた。
    抱き上げられて顔が近くなったミモザが白藤の頬をペロペロと舐めて、スミレは白藤の手に更に擦り付く。

    「心配掛けてごめんね、ミモザ、スミレ。もう大丈夫だよ。」

    本当に?と言わんばかりの顔の2匹に白藤が頷く。
    そんな光景に今一度目を細めた中山が前方を指差す。

    「ほら、次。俺らの番だ。」
    「本当だ。ミモザ、スミレ、次だから音、凄く大きいよ、気を付けてね?」

    白藤の言葉に首を傾げた2匹だったが、除夜の鐘を突いた瞬間に痺れたような動きをして、耳を寝かせた。
    思わず大口を開けて笑ってしまった中山につられて白藤もふるふると笑いだす。

    「あっはっはっ!吃驚したな、ミモザ、スミレ!!」
    「んっ、ふふ…、今のミモザとスミレ、凄く可愛かったな、んっふふっ、」

    耳を寝かせたままぶすっとした2匹に中山と白藤は更にツボる。

    「んっとに、表情豊かで可愛いな、お前らは!」
    「本当にね!もー笑いすぎてお腹痛いし、涙出てきた!」

    目尻に浮かんだ涙を拭った白藤は先程より楽しそうでミモザとスミレも安心する。
    その瞬間に彼方此方から新年の挨拶が聞こえてきだす。
    中山が時計を見れば、針は天辺を越えていた。

    「類、明けましておめでとう。」
    「うん、明けましておめでとう、司くん。今年もよろしくね。ミモザとスミレも。」
    「ああ、ミモザとスミレもよろしくな。」

    二人の言葉に二匹も返事をするように鳴いた。

    「じゃあ次は参拝だね。」
    「だな。」

    また参拝の列に向かって並んで歩きだす。やはりナチュラルに白藤の腰を支え、白藤の歩幅に合わせて歩く中山に胸がきゅんと鳴った。

    (本当に司くんは狡いなぁ。さらっとこう言う事しちゃうんだから。)
    「…本当に貴方が大好きだよ、司くん。」

    聞こえないような小さな声で呟いた白藤に何か言ったか?と返した中山に何でもないと首を横に振って白藤は笑った。
    案外列はさくさく進んで行く。
    その中で、振袖風の衣装だったり、紋付き袴風の衣装を着ている犬や猫が居るのが目に入る。

    「来年はミモザとスミレには着物衣装作っちゃおうかなぁ?」
    「自分で作んのか?」

    目を丸くした中山にうん、やってみたいなって思って!と白藤がふにゃりと笑う。

    「…いや、類、お前本当にやれねぇことねぇだろ。」
    「そんなことないって、やれる事だけだよ?」

    それが転じて、リングドックとリングキャットにする為に二匹にタキシード衣装を白藤が作るのはもう少しだけ先の話。
    自分たちの順番になり、きちんと流れに沿って、昨年の礼と今年の願い事。

    (この先も全員で健康に楽しく過ごせますように。そしてずっと司くんと居られますように。)
    (今年は結婚式も控えてる。これから先も類たちを守れる力を持ち続ける。そして絶対類を傷つけねぇ、間違えねぇ。)

    一礼をして列を離れ、今年のお願いについて話す。

    「僕は今年はみんなの健康とやっぱり司くんとずっと過ごせますようにって。司くんは?」
    「俺は類たちを守れる力を持ち続けたいと類を傷つけねぇようにって願ったと言うより、決意表明だ。」
    「司くん…。」

    目を丸くした白藤が頬を染めて微笑む。

    「ありがと。」

    そのまま中山の肩に甘えるように頭を乗せた白藤が今度ははっきりと中山に聞こえるように話す。

    「…僕、貴方を好きになって本当に良かった。司くん大好き。」

    白藤が愛しすぎる。

    「俺は愛してる。」

    そう返し、そのまま白藤に触れるだけのキスをして、ぱっと離れた中山に白藤が更に顔を赤くする。

    「…此処外でこんなにいっぱい人が居るのに、もう。」
    「俺らの事なんか誰も見てねぇって。」

    顔を覗き込むように見ている中山に少しだけ頬を膨らませた白藤をそのまま抱き締めて、その背中で中山はしぃと人差し指を立てた。
    理由は幼い少女が此方を見ていた為だ。
    少女は持っていた少し大きなうさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱き締めて、幼さ故にまろい頬をほんのりと染めて、こくんと頷いた。少女の母親に呼ばれてそちらを振り向く。
    もう一度中山を見た少女は口元にぬいぐるみを寄せたままバイバイと言うように手を振った。

    「あのわんちゃんとにゃーちゃん連れてるお兄ちゃんとお姉ちゃん、王子様とお姫様みたいだった…。」

    少女がそんな事を後程母親に話しているとはいざ知らず、その手に振り返して、白藤から離れる。

    「今年は甘酒どうする?」
    「飲みたいな。」
    「じゃあ貰いに行くか。ああ、あのテントの豚汁も旨そうだな?スゲェ良い匂いしてねぇ?」

    そうだね。と白藤も目を細める。

    「今年は去年より来たのも早いしね。」
    「だな。」

    じゃあ貰いに行くかと笑う中山に白藤は頷いた。
    出店を冷やかしつつ、食べたい物を食べる。

    「去年はこんなの買わなかったのにね。」
    「だな。この時間に食うのって罪悪感しかねぇけど、たまには悪くねぇよな。」
    「たまにはね?」

    悪戯っぽく笑い合う。
    この時間が何より幸せで、これから先も続けていきたい願うのは中山も白藤も同じだ。

    「ま、けどそろそろ一回帰って仮眠取って、朝日見に行くか。」
    「うん。」

    頷いて自宅へ向かって車を走らせた。
    帰宅して、歯磨き。パジャマに着替えて二人でベッドに入る。
    ミモザとスミレもついて来た為に2匹を手招けば、2匹はベッドに上がってくる。
    足元で丸くなった2匹に目を細め、アラームをきちんと設定する。
    そのまま見つめ合い、そのまま触れるだけのキスをして、微笑み合う。

    「お休み、類。」
    「うん。お休み、司くん。」

    挨拶をして中山の腕枕に頭を置けば、中山は白藤を抱き寄せて髪に顔を埋めて、息を吸い込む。

    (また嗅がれてる。)

    少し苦笑しつつ、白藤も中山の匂いを肺いっぱいに吸い込めば、落ち着いてきて、目蓋が落ちてくる。
    中山は既に寝息を立てており、その寝息にも安心する。

    (司くんの心臓の音、落ち着く。)

    中山の胸元に頭を寄せ心臓の音を聞いていたら白藤も自然に寝入っていた。



    アラームの音がする。白藤の意識が浮上してきた。

    「…ん、」

    アラームを止めて、起き上がる。

    「…ふぁ。」

    欠伸を一つ溢して、隣で眠っている中山を揺り起こす。

    「司くん朝だよ、朝日見に行くんでしょ?起きて?」

    ベッドの軋みでミモザとスミレも目を覚ましたようで、挨拶するように鳴く2匹におはよと返して、頭を撫でる。
    喉をゴロゴロ鳴らしてスミレが手に擦りつき、ミモザももっと言わんばかり頭を押し付けてくるのに可愛いなぁと呟く。
    一頻り2匹を撫でて、未だ寝ている中山にもーと言いながら先に着替えよと白藤がベッドから降りる。
    身支度を整えて、今一度寝室を覗く。
    やはり未だ寝ている中山に肩を竦めて、揺り起こす。

    「司くん、起きて。朝日昇っちゃうよ。」

    生返事で起きてくれない中山に去年自分がされたように触れるだけのキスをしてみた。
    その瞬間、大きな手で頭を抱え込まれる。

    「んむっ!?」

    ぎょっと目を丸くした白藤の唇を舌で抉じ開けた中山は白藤の舌を絡めとる。

    「んんーーーっ!!」

    ぎゅっと中山のパジャマ代わりのスウェットを握る。
    白藤の口の端からどちらの唾液が分からない唾液が垂れて、顎を伝いシーツにシミを作った。

    「んぅ、ぁ、んんっ…、」

    ちゅぽっと音を立てて、唇を解放されてくったりと中山に凭れ掛かった。
    白藤の目がとろりと蕩けているのを見た中山は可愛いと言いながら、顎に伝っている唾液を舐めとった。

    「…ぁ、も、ばかぁ、」

    ぴくんと小さく身体を跳ねさせた白藤に今一度と触れるだけのキスを落とし、にんまりと悪戯っぽい笑みを浮かべた。

    「はよ、類。」

    思わず胸が高鳴り、顔が熱くなる白藤は少しだけ拗ねた様に頬を膨らませておはよと返す。

    「…司くん、業とでしょ。本当はアラーム鳴って、最初に揺り起こした時点で起きてたよね?」

    むすっと口をへの字にした白藤に中山はさぁな?とすっとぼけた。
    その中山の反応で起きていたことを確信した白藤は絶対に業とだと頬を膨らませた。
    中山はそのままベッドから降りて、着替え始めたので、白藤はベッドに座ってそれを見る。

    「何でこんなことしたの…?」
    「ん?何でだと思う?」

    白藤の方を振り向き、にんまりと笑った中山にもしかしてと白藤は口を開く。

    「去年、司くんが僕にキスして起こしたから?」

    白藤の言葉ににっと口角を上げた中山は正解と笑い、もう一度白藤に触れるだけのキスをして、離れる。
    そのまま鼻が触れ合う距離で話しだす。

    「俺が起きなかったら、類は何してくれっかなと思ってな?」
    「もー、僕がキスしてなかったらどう起きるつもりだったの?」
    「タイミング見て起きるつもりだったぞ。」

    またにんまりと笑った中山にもう!と腕を軽く叩く。
    叩かれた中山は楽しそうに笑った。
    顔洗ってくるわと洗面所に行った中山に司くんはと頬を膨らませる。
    ベッドの上で三角座りをしてぽつりと呟いた。

    「けど、本当に好きだなぁ。」

    そして自分で呟いた言葉に目を細める。

    (これから夫婦になるんだけど、夫婦になってもずっと司くんに恋してたいな。)

    そんな事を考えた元旦。
    リビングの方から行くぞー。と言う声がして、うん!と返事を返した。
    ミモザとスミレにリードを着けて、家を出る。
    辺りはまだ暗い。
    頬を撫でる風が冷たく思わず寒いと声が漏れた。

    「類。」

    手袋を外した中山が手招く。
    中山に近付けば、手袋を指差した。
    それでしてくれる事を察した白藤は手袋を外して自分から中山の手を握った。
    よく分かったなとにんまりと笑みを浮かべた中山に分かるよと返して、甘えるように中山の肩に頭を置く。中山のダウンジャケットのポケットに入れられた繋がっている手はとても温かった。
    今度は白藤の肩に乗っているスミレがにゃあと鳴く。
    そして白藤の頬に擦り寄り、尻尾を首に回した。

    「スミレも温めてくれるの?」
    「にゃあ!」
    「ふふ、ありがとう。」

    擦りついているスミレの頭に白藤が顔を寄せる。
    ゴロゴロ喉を鳴らすスミレに目を細めた。

    「わふっ!」

    文句を言うようにミモザが鳴く。

    「何だどうしたミモザ。」

    中山が問えばミモザは中山の足に手を掛けて立ち上がった。

    「お前も抱っこされてぇの?」
    「わんっ!」

    中山の問い掛けに肯定するように鳴いたミモザにしゃあねぇな。と中山が溢して少しだけ屈み、ミモザを抱えた。
    中山の腕に抱っこされて満足そうに鼻を鳴らしたミモザに二人とも思わず吹き出した。

    「自分だけ距離が遠いのが嫌だったか?」
    「わふっ!」

    また肯定するように鳴いたミモザにそうかよと中山は目を細めた。
    手を繋いでぴったり引っ付く二人と白藤の肩で白藤に擦りついているスミレ。そして中山に抱き抱えられて満足そうなミモザで海へ。
    海道を歩きながら海を見れば、水平線から朝日が昇りだしていた。

    「あ、ちょうど良いタイミングだね。」
    「だな。」

    今居る所でも充分に綺麗でその場に立ち止まる。
    浜辺には恐らく他の人間も居るだろうが、此処は誰も居らず、実は穴場なのかも知れない。
    堤防にミモザを降ろせばスミレもミモザの傍に飛び降り2匹は尻尾を絡める。
    そんな2匹に目を細めて、自分達も寄り添い合う。

    「綺麗。」

    白藤がそう呟くのにそうだなと返して、名前を呼ぶ。

    「何、司く…ん、」

    ちゅっとリップ音を立てて白藤にキスをする。
    ぱっと離れて、鼻が触れ合う距離で見つめれば、白藤は顔を赤らめ、今一度目を閉じる。
    それを確認して、横目でミモザとスミレを見れば、ミモザとスミレも鼻チューをしており、目を細めた。
    そして今一度、白藤に自身も口付けた。
    その後に中山が白藤の腰を抱き、白藤も甘えるように中山に凭れて、日の出が昇るのを眺めていたが、くしゅっと白藤が小さくくしゃみをした。

    「潮風で此処は冷えるし、類が風邪引く前に帰るか。」

    辺りも随分と明るくなってきている。

    「うん。」

    こくんと頷いた白藤が2匹に帰るよと声を掛ければ、2匹は返事を返すように鳴いて立ち上がる。
    そのままスミレは来た時のように白藤の肩に飛び乗り、白藤の首を暖めるように尻尾を回す。
    ミモザはじっと中山を見上げており、中山がお前もまた抱っこか?と問い掛けた。

    「わふっ!」

    頷くように鳴いたミモザに仕方ねぇなと中山が今一度ミモザを抱き抱える。
    また満足そうに鼻を鳴らしたミモザに白藤と顔を見合わせて笑った。
    来た時と同じ様に白藤の手を掴んでダウンジャケットに手を入れてくれた中山に白藤ははにかんだ。
    自宅へ戻ってきて、2匹の足を拭き上がらせる。
    2匹はリビングの方へと駆けて行き、そんな2匹に肩を竦めた中山が玄関を上がれば白藤が自身の名を呼び、振り返る。

    「ん?」
    「改めて明けましておめでとう。今年もよろしくね。」

    はにかんだ白藤に一瞬目を丸くして、ふっと笑った中山はこちらこそと白藤に今一度キスを落とした。

    「さて、どうする類。もう一回寝るか?動き出すにはちょっと早いだろ?」
    「そうだね、寝ちゃおうかな。」

    悪戯っぽく笑った中山に白藤も悪戯っぽく笑い返す。
    手洗いうがいをきちんとして、今一度寝室へ。
    後からミモザとスミレもついて来ており、ベッドに入った二人を見て、2匹もベッドの上へと上がってくる。
    そんな2匹の頭を撫でれば、2匹が大きな欠伸をして、丸くなった。
    それにまた顔を見合わせて笑い、自分たちも寝転ぶ。
    いつものように中山が腕を伸ばして、白藤はその上に頭を置く。

    「お休み、類。」
    「うん、お休み司くん。」

    中山の心臓の音を聞き、そのまま寝入った白藤を見る。甘えるように自身に引っ付く温もりに中山も目を細め、その温もりを抱き締めて目を閉じた。
    次に起きたのは大晦日と同じで10時頃。
    先に起きたのは白藤で目を擦る。

    「…今、何時…?」

    携帯を見て、10時とぼそっと呟く。
    ベッドの軋みでミモザとスミレも起きたらしくベッドから飛び下りた。

    「そろそろ起きなきゃ、かな。」

    中山を見れば中山はまだ寝息を立てており、白藤はそんな中山に目を細める。

    「お正月だしもう少しだけ寝かせてあげよ。」

    小さく呟き、中山の頬にキスを落として、ベッドを揺らさぬように静かに降りる。
    今一度振り返れば中山はまだ寝息を立てていたので、ほっと息を吐く。
    音を出来るだけ殺して寝室を出る。
    寝室を閉める前に今一度中山を見て、目を細めてドアを閉めた。
    顔を今一度洗い、しゃっきりした頭でキッチンに立つ。
    ミモザとスミレも白藤の足元に座り、白藤見上げた。

    「さて、先ずはミモザとスミレのご飯だね。ちょっと待ってね。」

    2匹の頭を撫でて、2匹のご飯を用意する。
    何時もの場所にご飯を置いて、お年玉の様におやつも添える。

    「今日は元旦だし、芸は良いかな。」

    お座りしているミモザに食べて良いよと頭を撫でれば、やはり言葉が分かっている様子で皿に顔を突っ込んだ。
    そんなミモザを見て、スミレも同様に皿に顔を寄せて、カリカリポリポリと良い音を立てながら食べだしたのを確認して、目を細めた。

    「さて、お雑煮作ろうか!お義母さん特製のがめ煮もね。」
    (司くんどんな反応してくれるかなぁ?)

    白藤は中山の反応を想像してにんまりと笑った。
    トントンと規則的で小気味の良い音が聞こえる。

    (…スゲェ落ち着く。)

    ふわりと鼻を掠めるのは味噌の良い香りだ。

    「…ん、」

    中山の意識がゆっくりと浮上していく。
    ぼんやりする意識でベッドから起き上がった中山だったが、ガチャと寝室の扉が開けられる音でそちらを向く。

    「あ、起きた?おはよ、司くん。」

    扉を開けたのは一番愛しい相手。
    その愛しい相手の足元には可愛いペットたちの姿。

    「司くん、まだぼんやりしてるね?よし!!ミモザ!スミレ!ミッションだよ!司くんを起こして!!Go!!」

    白藤の言葉を聞いたミモザとスミレが突進してくる勢いでベッドに上がってくる。
    その勢いで中山は後ろに倒れ、その腹の上でミモザとスミレはどすどす跳ねた。

    「ぐっ、まっ、ちょっ!起きた!起きたから腹の上で跳ねんな!!ぐっ!!」

    中山の言葉で跳ねるのを辞めた2匹は起きた?と言わんばかりに腹の上で小首を傾げる。
    中山は起きた、起きたからと2匹の頭を撫でた。
    頭を撫でられた2匹はそのままベッドから降りて、白藤の足元にお座りして起こしたよ~と言わんばかりだ。

    「ミッション大成功!はい、ご褒美!」

    そのままおやつを上げた白藤に目を細めた。

    (俺と類に本当に子どもが居たらこんな感じなんだろうな…。俺が寝坊して、子どもが腹の上に乗ってきてパパ起きてと俺を起こす…。俺を起こすことに成功した子どもがママ、パパ起こしたよ!褒めて!とか言って、良く出来たね!って類に褒められんだろうな。)

    そんなことをぼんやりと思ったのは多分、初詣での会話のせいだ。
    中山は白藤とミモザとスミレさえいればそれで良いと本気で思っているが、こんな時はふと考える。
    自分と白藤の間に子どもがいたらと。

    「…ったく、朝からヒデェ目に合った。」

    くしゃっと髪を掻き乱す。

    「ふふ、おはよ、司くん。」
    「はよ、類。」

    悪戯っ子の笑みを浮かべた白藤が可愛く、挨拶を返して白藤にキスを落とした。

    「お雑煮出来てるよ。あとはお餅だけ。司くん何個食べる?」
    「あー、3個。」
    「分かった。」

    微笑んだ白藤がまたキッチンに立つ。
    そんな白藤を見て手伝いあるか?と問う中山に大丈夫だよと白藤は笑った。
    それを聞いて、中山は椅子に座る。
    ことんと置かれた雑煮は昨年とは違い白味噌だ。

    「今年は類の所の雑煮、ちゃんと作ってくれたんだな?」
    「うん、去年の約束だもんね。」

    目を細めた白藤がお節とあとこれとがめ煮も机に置き、祝い箸を差し出す。

    「今年もがめ煮作ってくれたのか?」
    「うん!今年のは自信作!食べてみて!」

    椅子に座った白藤を確認して、手を合わせ食前の挨拶。
    先ず雑煮を食べようとした中山だったが、白藤の視線はがめ煮。
    それからそんなに先に食べて欲しいのかと気付いた中山は先にがめ煮に箸を伸ばす。
    中山が口に運ぶのを白藤はわくわくとして見ており、何故そんなにわくわくしてるのかと首を傾げたが口に入れて理由が分かった。

    「…ん?お袋の味?」

    去年のがめ煮とはほんのり違う味がして、懐かしい味に目を瞬く。
    今年、実家のがめ煮を食べたのは、白藤を紹介する為に実家に連れて帰った時だ。それと似た味がする。

    「ふふ、でしょ?お義母さんから司くんのお家でのがめ煮の作り方教えて貰ったんだ、メッセで。」

    ほらと白藤が自身と中山の母とのやり取りのメッセを見せてくる。
    レシピが添付されており、白藤は悪戯が成功したと言わんばかりに携帯を口許に寄せてくふくふ笑っていた。

    (いや、待て、類可愛すぎだろ。)
    「他にもね、お義母さんに司くんがお義母さんのお料理で好きだった物のレシピ教えて貰ってるから今年の僕のお料理、楽しみにしてて?」

    猫のようににんまりとした笑みを浮かべた白藤が可愛すぎる。
    だが一つ言っておかねばならないと中山は口を開く。

    「類、一つだけいいか。」
    「?」

    きょとんと小首を傾げた白藤もやはり可愛く、可愛いなと思いながらも続けた。

    「確かに俺の好きなお袋の料理の再現も嬉しいが、俺が好きなのは類が作る、類の料理だから。そこは勘違いすんなよ?」

    そう言えば白藤は目を丸くして顔を赤くした。

    「今年のがめ煮も嬉しいが、去年に類の作ったがめ煮も美味かったから。だから、お袋の料理の再現だけじゃなくて、類の料理もちゃんと作ってくれよ?」

    愛しそうに目を細め、白藤の頬を撫でた中山に白藤が更に顔を赤くする。

    「…わ、分かった。」
    「良し。」

    頷いた中山はそのまま雑煮に手をつける。
    汁を飲み、頷く。

    「ん、類の所の雑煮も美味い。白味噌だからか、すげぇ上品。京都の雑煮、中に入ってる野菜とか餅も丸いのって意味があんのか?」
    「うん、角が立たず円満に過ごせますようにって願いなんだって。博多雑煮は勝男、嫁ぶりとか験担ぎの意味合いが多かったけど。」
    「へぇ、いいな。角がたたずに円満。」

    目を細めた中山に気に入ってくれた?と白藤が問う。

    「ああ、悪くねぇな。」

    ふっと笑みを溢す中山に白藤が伺いを立てるように問う。

    「けど、来年はまた博多のお雑煮にするね?」
    「それでいくなら再来年はまた京都か?」
    「駄目?」

    白藤の言いたいことを理解してくれた中山に上目遣いでまた伺いを立てる。

    「いや、それも悪くねぇな。来年も再来年もそれから先も交互に故郷の雑煮を食べれるようにずっと一緒に居るって事だもんな?」

    微笑んだ中山はやはり白藤の言いたいことを理解してくれて、白藤はうんと頬をほんのり染めてはにかんで笑った。
    そんな白藤はやはり愛しく、中山は名前を呼ぶ。

    「何?」
    「愛してる。」

    中山の声は何処までも優しく愛しそうで白藤の顔がまた赤くなる。

    「うん、僕も。これからもずっと一緒に居てね、司くん。」
    「当たり前だろ。類こそ何処にも行くなよ?」
    「行かない。司くんより好きになる人なんて絶対に現れないもん。」

    なら良しと中山はにっと笑った。

    「司くんこそ何処にも行かないでね?」
    「行くわけねぇだろ。俺はもう類がいねぇと生きていけねぇよ。この先も愛すのは類だけだ。」
    「ふふ、嬉しい。」

    はにかんだ白藤を抱き締めたくなったが、今は食事中だ。

    「飯食ったあと抱き締めさせろよ。」
    「うん、いっぱい抱き締めて?」

    甘えた白藤の声に中山もまた笑みを深めた。
    食事を済ませて、何時ものように並んで片付け。
    片付けが終わったタイミングで、白藤がお茶にする?と問い掛けてくるので、中山は頷いた。
    茶を入れて、今度はソファの方へ。

    「類。」

    中山が白藤を呼び、自身の前を叩く。
    言いたいことを理解した白藤が中山の前に座れば、中山はそのまま白藤の腹に手を回して抱き締めた。
    顎を白藤の肩に置く中山に甘えるように白藤は凭れ掛かる。

    「…落ち着く。」
    「ふふ、僕も。」

    暫く抱き締めて、抱き締められていると。ミモザとスミレも二人の傍へとやってくる。
    そのまま今日は膝では丸くならずに傍で丸くなった2匹の頭を撫でた。

    「ね、司くん。今日どうする?」
    「そうだなぁ、映画でも見るか?」
    「ふふ、それも良いね。」

    ならと白藤が中山の腕を軽く叩いて、それに従い白藤を解放する。
    そのまま立ち上がった白藤がキッチンの方へと行くのを見て、中山もタブレットを取りに一度ソファを立ち上がる。
    タブレットを取って来て今一度ソファに座れば、白藤が蜜柑が入った籠を持ってきてソファの前の机に置いた。
    タブレットを片手で持ちながら中山が今一度自身の前を叩けば、白藤も素直に中山の前へ座る。
    先程と同じ体勢になった2人は中山が持っていたタブレットで見る映画を吟味する。

    「あ、」
    「どうした?」
    「これ、」

    白藤が指を指したのは中山が異動前に携わったミステリー小説が原作の映画。
    中山が担当であった作家の作品で、公開されたら観に行こうと言っていた作品。
    だが公開されたタイミングで中山の内示があり、すれ違ったので結局観に行けなかった。

    「結局見に行けなかった作品だね…。」
    「これ見るか?」
    「いいの?」

    大丈夫?とは口には出していないが不安そうな白藤を中山は抱き締める。

    「もう割り切ってる。まあ文学に未練がないかって言えば嘘になるが…。」
    「…司くん、」

    不安そうな白藤にそんな顔すんなよと中山は目を細めて白藤の頬を撫でて、額に口付けた。

    「けどもう大丈夫だ。実はな、未だオフレコだが、」

    中山が楽しそうに語った言葉に白藤は目を丸くした。

    「本当に?」
    「ああ。」

    にんまりと笑って頷いた中山に白藤は司くん凄い!!と抱きついた。
    そんな白藤を抱き締めて、中山は目を細める。
    中山から語られたのは中山が担当している漫画家の作品がアニメ化と実写映画化の同時企画。
    2.5次元での舞台化も決まっているらしい。

    「類が俺の傍に居てくれたら、これから先もメディアミックス化や重版や売上も増えるって確信あんだよ。」
    「どうして…?」
    「これは言ってなかったな。文学の時からだが、類と結婚を前提に付き合いだしてから、実はスゲェ仕事が好調なんだ。」

    初めて聞かされた言葉に白藤は目を丸くする。
    だが考えたらプロポーズをされてから、中山は随分と煙草の量は減っていたし、イライラしている事も減っていた気がする。

    「…そう言えば、セフレみたいな時は僕に当たるような自分本意なえっちの仕方だったし、司くんずっとイライラしてたのに、プロポーズされてから全然そんな事無くなったね…?」
    「それは本当に悪かったと思ってるし反省してる。」

    抱き締めながら項垂れた中山に白藤はあ、責めてる訳じゃなくてとあわあわ。

    「ただそうだったなって思っただけなんだ。司くんイライラすると煙草の量増えるし、凄く分かりやすくイライラしてるから。」

    それを言われてふと思う。

    「そういや付き合い始めの猫被り、完全に見抜いたのは類が初めてだったな…。」

    一番初めの出会い、注意してきた白藤に一目惚れをした中山は自分の性格の悪さをおくびにも出さず、慎重に口説き倒した。
    白藤本人は中山より先に中山を意識してくれていたようだが、付き合っていく上で中山はとにかく慎重になったのだ、久々の自身の恋だから。
    今までの相手は相手からの告白に付き合っただけで、中山本人の性格を隠す必要も無かったのだが、白藤だけは自身が口説いたのと告白したのもあり、絶対バレてはならないと気を張っていた。
    だが、ある日のこと。
    その日はまたも日野の事でイライラしていた中山はそれでもそれを完璧に隠して白藤に接していた筈だった。

    『中山さん、疲れていますか?何かあったんでしょうか?凄くイライラされてますよね。』

    自身の笑顔は完璧で弊社の人間や友人にもバレていなかった筈。
    だから白藤に言い当てられて、思わず笑顔が引きつった。

    『何でですか?』
    『あ、いや、笑顔が疲れてると言いますか、何て言ったらいいのでしょうか。』

    苦笑気味の白藤が頬を掻く。
    それからも白藤は完璧な笑顔を浮かべていた中山の状態を簡単に当ててくるのだ、嬉しい時も悔しい時も悲しい時もイライラしている時も。
    それは今になって分かったが恐らく白藤が人を良く見ているからであったのだろう。
    そして自分をきちんと見て愛してくれていたから。
    それから直ぐに自身の性格もバレてしまって、自身の性格を肯定してくれた甘えもあり、中山はイライラを白藤にぶつけるようになった。
    白藤は物言いたげな顔はしていたが、中山に身体を従順に明け渡してくれた。

    「結局、セフレみてぇな時も俺は類に甘えてるだけだったんだよな、類は何処までも優しかったから…。」

    当時を思い出したのか少し苦笑した中山は白藤を見る。

    「なあ、類は何で俺の笑顔の仮面の下。その時の感情を見抜けたんだ?最初の俺の猫被りは完璧だったろ?」
    「それは否定しない。司くんの笑顔は完璧で全く感情を見せてなかったけど、少しだけ揺らぎはあったんだよ。本当に微々たる物でしっかり見ていなきゃ分からないくらいだったけど…。」

    白藤が両手で中山の頬を包む。

    「僕の方が先に司くんを好きになったから、だから分かったんだと思う。」
    「類。」
    「司くんの本来の性格が分かって、そこからセフレみたいになったけれど、それでも受け入れたのは僕自身が司くんを好きだったから。」

    ずっと心は痛かったけどね…。と目を伏せた白藤を強く抱き締める。

    「本当に悪かった。」
    「ふふ、もう良いよ。今はいっぱい愛してくれてるもんね。」

    また抱きつき返してきた白藤がそれで、さっきの続きと話し、中山を覗き込むように上目で見てくる。

    「僕にプロポーズしてから仕事が好調になったの?」
    「そう。やりたかった作家の担当になれたり、重版やメディアミックスも増えた。異動も裏を返せば俺の仕事ぶりが評価されての引き抜きだからな?」
    「そっか、立て直しに欲しいって言われたんだもんね。けどそれは司くんの努力があってだよ?」

    ふわりと微笑む白藤に目を細めた。

    (類のそう言う所なんだよな…。)
    「異動になってからちょっとセックスレスになったろ?」
    「司くん慣れないことで忙しそうだったからね。」
    「まあオナニーしてる類が可愛くてそのまま久しぶりにセックスしたが。」

    それは忘れてよ!!と顔を赤くして叫んだ白藤に、これも関係あんだよと中山は返す。

    「僕の、一人、ぇ、ぇっちが関係あるってなに…、」

    赤い顔でじとっとした目をした白藤の頬を包み、可愛い顔がぶしゃいくになってると中山は笑い、続ける。

    「あの後から仕事がスゲェサクサク進んだんだぞ?」
    「…え?」

    まさかの言葉に白藤が目を点にする。

    「初動も良い感じで、弊社の少女漫画も逼迫から今は徐々にうなぎ登りになってきてる。そこからのさっきの話だ。類はもしかしたらあげまんなのかも知れねぇな?あげまんの特徴にも類はスゲェハマッてるし。」

    中山の言葉に白藤が思わず赤くなる。

    (僕、あげまんなの…?司くんの運気上げれてる…?)
    「だったら凄く。嬉しい、かも…、」

    純粋に嬉しそうな白藤はやはり可愛い。

    (俺の嫁可愛すぎだろ!!)
    「何でだ?」
    「だって、司くんの運気を上げれてるって事だもん。こんなに嬉しい事無い。」

    白藤が可愛すぎて、思わず白藤を抱き締める。
    更に白藤をその場に押し倒したくなってしまったが、そこはぐっと堪える。

    「司くん?」

    ぎゅうぎゅうと抱き締める中山に戸惑いながら名前を呼んだ白藤。噛みしめるように中山は口を開く。

    「…類、お前マジで可愛すぎんだけど。何でそんな可愛いんだよ…。」

    色々耐えている様子の中山に中山の考えている事を理解した白藤はおずおずと赤い顔で問いかけてくる。

    「…司くん、もしかしてえっちしたいの耐えてくれてるの…?」
    「…元旦だからな、」

    ふぅと息を吐いた中山の目はギラギラしており、そんな中山に白藤もムラッとしてしまう。
    もじっと太ももを擦り合わせた白藤は甘えた声で中山を呼ぶ。

    「司、くん、あの、ね、」

    耳元で囁かれた言葉に中山が目を見開く。
    潤んだ瞳と赤い顔で中山を見てくる白藤に名前を呼び、中山は白藤に口付けた。



    服を着替えて改めてタブレットからテレビに映画を映し、再生を押す。
    2匹は今度は引っ付いて寝息を立てていた。
    因みにその映画の舞台が福岡の博多につき、方言が出てきて、白藤は先程の事を思い出して顔が赤くなる。
    それに気づいた中山は悪戯心が湧き、また耳元で低く囁いた。

    「さっきん事、思い出したと?類のスケベ。」
    「ぁっ♡」

    思わず喘いでしまった白藤が赤い頬でむくれて、アホアホ!!とバシバシ中山を叩き、そんな白藤に中山もケラケラと笑った。

    「けど俺ん方言好きっちゃろ?」
    「好きやけど、今はアカンの!!司くんいけずや!!」

    むぅと頬を膨らませた白藤が可愛く、悪い悪いと謝って口付けた。

    「機嫌直してくれよ、な、類。」
    「もういけずせんでな…?」
    「今日はもうしぇんて。」

    ちゅっと白藤の額に口付け、もう一度触れるだけのキス。
    パッと離れて、改めてテレビを見た。
    映画を見ながら蜜柑を揉んで剥き出した白藤にこれは去年と一緒だなと自然と笑みが溢れた。
    笑っている中山に気付いてどうしたの?と問いかけてきた白藤に去年と一緒だなと思ってなと中山は笑う。

    「…あ、そっか去年もこうしておみかん剥いたね。あ、司くんあーん。」
    「あ。」

    去年と同様に剥いた蜜柑を差し出されて中山は口を開く。

    「ん、甘ぇな。美味い。」
    「本当?」

    白藤も一粒もぎって口に運ぶ。

    「うん、ちょうどいい感じ。甘さと酸っぱさが凄くバランス良いね。」
    「な?」

    目を細めて頷く。
    白藤が中山に食べさせてその後に自分で食べて交互に繰り返しながら蜜柑を食べるのに幸せを噛みしめた。

    「?」

    原作の良いところを度々カットしている映画に中山がむっとなり、そんな中山にクスクスと笑う白藤。
    だがストーリーは中山に似ているあの劇団の座長で俳優の彼の演技でカバーされていい具合に仕上がっている。
    ヒロインは人気アイドルの彼女だが、悪くはない。 

    「そう言えばこのヒロインのアイドルさん、日森さんにちょっと似てるね?」
    「ああ、言われてみればそうかもな。そういや、あの座長とヒロインのアイドルって幼馴染みらしい。」
    「そうなの!?司くんと日森さんと似てるね!?」

    そんな雑談をしながら見ていれば、エンドロールが流れだした所でふぁ…と白藤が欠伸をこぼす。

    「眠いか?」
    「ちょっと…」
    「寝ていいぞ。いい時間で起こしてやるから。」

    ぽんぽんと頭を撫でられて白藤がうとうとと船を漕ぎ出す。
    そのまま中山に凭れかかって規則正しい寝息を立てだした白藤に中山は愛してる、類。と髪に口付けた。
    それから数時間、ゆっくりと白藤の意識が浮上してくる。
    白藤が身動ぎをしたことで中山は読んでいた電子書籍を閉じる。

    「…ん、」
    「起きたか?はよ、類。」

    覗き込んで来た中山に寝ぼけ眼だった白藤ははっとして起きる。

    「もしかしてずっと抱えてたの!?」
    「ん?ああ。」

    頷いた中山に重かったでしょ!?と言えば、中山はいいや。と首を横に振る。

    「類軽ィし。けど悪い、寒くなかったか?お前を起こさねぇようにって思うと毛布取りに行けなくてな。」

    一応部屋の温度は上げたんだが。と返す中山に胸がきゅんとして白藤は中山に抱きつけば中山が腕を回して抱き返してくれた。

    「…司くん、大好きだよ。」
    「ああ、俺も類が大好きだ。」

    噛みしめるような大好きに中山も同じように返して、抱き締める腕の力を強める。
    そのまま見つめ合いまた触れるだけのキスをした。



    翌朝。
    先に起きた白藤は改めて中山の顔をじっと見つめている。
    昨年は同時に目が覚めた筈だが、今年は白藤だけだ。

    (司くん、本当に格好いいな。そう言えば去年は起き抜けにそのままなし崩しにえっちしたんだっけ…。その後のお風呂でもまた…。)

    少しだけ昨年を思い出し思わず顔が赤くなったが、それで少しだけ魔がさした白藤は中山を呼んでみる。

    「司くん?」

    呼んでも反応がない中山に少しだけ悪戯したくなった白藤はまだ寝息を立てている中山の唇に自身の唇を寄せた。



    あの悪戯の後に起きた中山に逆襲され、風呂に運ばれた。
    動けなくなってしまった白藤は現在中山に後ろから抱きしめられて湯船に浸かっていた。
    中山は背中から抱きしめた白藤の肩に顎を置いて意地悪く問い掛けた。

    「な、類、何で今朝はあんな事したんだ?」
    「…去年の朝の事、思い出しちゃって。」

    そのまま下を向いて顔を赤らめた白藤は身を捩って中山に向き合っておずおずと口を開いた。

    「昨日にちゃんとえっち、出来なかったから。魔が差しちゃった…、」

    そのまま中山に抱きついて来た白藤を抱き締め返す。

    「ごめんなさい、司くん。」

    落ち込んだ様子の白藤の声が愛しい。
    中山は目を細めた。

    「謝んなくて良いから、寧ろ俺は大歓迎だったぞ、あんな起こされ方。」
    「…本当?」
    「ああ、類も俺の性欲の強さ分かってんだろ?」

    身体を起こした白藤がおずおずと問いかけて来て、中山はにんまりと笑い、そのまま白藤にキスをした。
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