透は、一枚の絵を見つめていた。
「なんか別人みたい。樋口」
普段通りの部屋の丸テーブルの上には、透が普段読まないようなジャンルの雑誌。その中の一ページを飾っていたのは、円香のグラビア写真だった。
「今すぐ捨てて」
「えー」
円香は露骨に眉を顰める。透に「見せたいものがある」と言われて部屋まで来たら、自身の水着姿が一面を彩るページが目に入ったのだから当然だ。透はどうやら、事務所に来ていた献本をかっぱらってきたらしい。
そのグラビアの撮影自体は滞りなく済んだし、カメラマンのリアクションも悪くなかった。しかし円香は、まるで卒業アルバムを勝手に見られたかのような顔で、対照的にとても楽しそうな透を睨みつけていた。
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