天使暁星塵×淫魔薛洋俺は薛洋。悪魔だ。まあ、このツノと羽根を見れば分かるよな。
とはいっても、男の欲を食い物にして生気を搾り取る淫魔ってやつだ。
俺が肌を見せて誘惑してやると、男共はみんな顔を真っ赤にして涎を垂らす。全く簡単な仕事だ。
そのまま喰らい尽くしてカラカラになるまで搾り取ってやる。にやにやと気色悪い顔で俺を見てきた人間が、干からびて絶命する顔を見るのは愉快で仕方がない。
でも不細工な男の精といえば、不味くて仕方がない。その上短小だったらもっと最悪だ。
俺は綺麗な若い男の味が好きなんだ。そういう奴の精は甘くて蕩けるように口の中に広がっていく。
それに、俺に好き放題されて綺麗な顔を歪ませるのを見るのも、たまらなくいい気分だ。

ある日俺は最高の獲物を見つけた。
そいつは長く黒い髪に白い服を着て、目はムカつくくらいに透き通ってた。
そいつを組み敷いて食ってやったら、それは美味いんだろうな、と思った。
それにそのお綺麗な格好と澄んだ目を見るに、いかにも汚いことなんて何一つ知りませんと言わんばかりの出で立ちだ。
こいつを組み敷いて汚してやれば、さぞ愉しいことだろう。
奴のアソコは、一体どんな形をしているだろうか。俺に無理矢理呑み込まれたら、一体どんな顔を見せるだろうか。
あれこれ想像していると、自然に口元が歪んだ。
今に見てろよ。そのお綺麗な顔を欲でぐちゃぐちゃにしてやるからな。
俺はこっそりそいつの後をつけると、寝泊まりしている場所を突き止めて夜を待った。
草木も眠る頃、俺はこっそり奴の寝所に忍び込んだ。窓の鍵は開いていて、簡単に侵入することできた。まさか俺に狙われていることも知らずに無防備なことだ、と哀れに思った。
案の定、奴は寝台で呑気にすやすやと寝息を立てている。俺は「獲物」の顔を上から覗き込み、じっくりと観察した。
真っ白な肌に長い睫毛。通った鼻筋に薄い唇。腹が立つくらいに綺麗な顔だ。
奴に跨り、服を肌蹴させると意外と逞しい胸筋が露になる。きっと逸物も立派だろうと想像を巡らせると身体の奥がじわりと疼いた。
形のいい唇を眺めていたら無性に口付けがしたくなって、衝動的に奴の唇を奪った。
柔らかい唇に触れた瞬間、唐突に天地がひっくり返った。俺は何が起きたのか分からずに、呆然と瞬きをした。

「寝込みを襲うとは、いけない子ですね」

眠っていたはずの男はいつの間にか起きていて、唇を奪った瞬間に押し倒されたのだとようやく気が付いた。

「おいアンタ、何す...んんっ！」

あろうことか奴に押し倒されたまま、今度はこちらが唇を奪われた。そのまま舌をねじ込まれる。

「はぁっ...んん...っ」

卑猥なことなど何一つ知らないような顔をしておきながら、奴は執拗に俺の口の中を滅茶苦茶に掻き回してくる。相手の好きなようにされるなど、冗談ではない。それなのに、ぞくぞくと身体が熱くなってくる。
どうにか逃れようと暴れても、両手をがっちりと縫いとめられてびくともしない。

「大人しくしていてくださいね。貴方のような者を懲らしめるのが、私の仕事ですから」

奴はにっこりと微笑んでいるが、こちらを見据えてくる両眼に捉えられると、背筋がぞくりとして動けなくなった。人間の癖に何故、いや、こいつは人間じゃない。
まさか、この俺が気付ないほど完璧に人間に擬態していたとはーー
奴の背中にはいつの間にか真っ白な両翼が生えていて、大きな翼の先が俺の頬を弄んだ。
天の遣い...俺がこの世でもっとも嫌う忌々しい存在だ。嫌でも分かる、奴はその中でも強大な力を持つ者だと。
一旦捕らわれてしまえば、簡単に逃げられるような相手ではない。
俺は寝台に縫いとめられたまま、その穏やかな眼にぞくりと身体を戦慄かせた。