「はぁっ…またやってしまいました…。」
掃除をしながら今日何度目か分からないため息をするシャドーカービィ。
ため息の理由はひとつ。
日頃の鬱憤やモヤモヤが貯まっていたのだろうか、同居人兼恋人のダークメタナイトに酷くあたってしまった。
それなのに彼は嫌な顔ひとつせず、寧ろニヤリとした表情で逆に機嫌が良かった位である。
多分、これは今晩あたり酷く僕を苛めにくるだろう。
「もう…嫌だぁぁっ!飲まないと…飲まないとやってられないです!!」
そう言いながらも雑巾を綺麗にすすいで干す動作は丁寧である。どんな時でも適当に終わらせる事はシャドーにとってはストレスの原因になってしまう。
それは自分が1番わかっている筈なのに今日はため息とイライラが止まらない。
「はあーっ…。」
2人の共用の冷蔵庫から甘口のワインを取り出す。
お気に入りのグラスに注がれる心地よい音がシャドーのイライラを少し落ち着かせてくれた。
「日が登っているうちから飲んでもいいですよね。今日だけは、今日だけは…。」
ワインを口に含む。
ごくり。と喉を通った瞬間、ワイン独特のコクと香りがシャドーの体を通過していく。
「ふぁあ…やっぱりおいしいです…。どうせダーク様は夕方まで帰ってこないからもう一杯…。」
空のグラスに注がれるワインは、さっきよりもかなり多い。勢いがついたという事は、少しアルコールが回ってきたのだろうか。
「へへ…えヘヘ…。」
頭がふわふわしてきたようで、さっきまでとは違い笑顔が見れるようになった。笑顔というか、何というか…出来上がってしまっている。
「ダークしゃまは……ダークしゃまはいつも
…いつもぼくに…いたずらするんですから…!今日は…今日こしょは……ぼくがビシッといっちゃいますからねぇっ…!」
夕方になり、ダークが日課のパトロール(+鏡の国から飛び出してメタちゃんイビり)から帰ってきた。
「玄関が暗いじゃねーか。シャドー、居るのか?」玄関の明かりをつけ、シャドーが居ると思われるリビングに向かって歩きだす。
そしてリビングに入った瞬間。
「うわぁ…。」
そこには出来上がったシャドーカービィの姿。ワインの瓶の中身も半分は減っている。どう見てシャドーが普段飲む量じゃない。
「おい、シャドー、大丈夫か…?」
背中に手を掛けた瞬間、
「…な…っ!」
シャドーに押し倒されてしまった。
出来上がっていた恋人の力は普段とは違い、
普段なら太刀打ちできた俺が対処できなかった。
「ダーク様…。」
シャドーは、のしかかりながら俺の仮面を外す。
「ちょっ!まっ!シャドー!」
俺は叫んだ。
「ダーク様が…。」
「ダーク様がいけないんですからね…。」
外した仮面を放り投げるシャドー。
ちょっ!それ俺の大事なやつ!
「お仕置き…しちゃいましゅからねぇ…。」
は!?お仕置き?どういう事だ!?
そう思った瞬間、さっきと同じ力で俺の防具を外していきやがる。何て力だ。
「なっ!」
しかもそいつを仮面と同じように投げるときたもんだ。
「うわああぁぁ!」
俺の!俺の大事な防具が…
「くそっ……。」
今日のシャドーにはやられてばっかりだ。悔しい。
「おたのしみはぁ…これかりゃでしゅよぉ…。」
は!?どういう事だ!?しかも呂律が回ってねぇっていうのに!本当に大丈夫なのか!?
そんな不安も、杞憂に終わった。
結果は、派手に抱かれたからである。
抱かれた!?いや、俺が抱いたんだが主導権はアイツにあったっていうか…何というか………普段と違って…良かった。ということだけは確かだ。
その相手が今横で赤面しながら動揺している。昨夜の事でも思い出しているのだろう。
「今さら何恥ずかしがってんだよ。」
「だって…だって…。」
普段見せないお前の姿、結構良かったぞ。
なんて言ったら暫く口聞いてくれないだろうから言ってやらないけどな。