僕だけが知る昔話誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろうか。
僕はたまたま見つけた写真を見つめて、率直にそう思った。
もう小さな図書館が作れそうなほど本が積み重なる小さな家の中、整理をしている途中で見つけた、ボロボロに掠れたアルバム。
もう写真が追加されることもないだろうそのアルバムをそっと開いた先に、偶然『その人』が映っていた。
……いつのまにか皆が……あの人も、いってしまって。それから時が経つにつれて、いつからか『誰かに会いたい』なんて思わなくなっていた。
……『今の世界』で、誰かに会うなんて、くだらないことだから。
……あの人は。今の現状を見たら、どんな風に言うのだろう。
……きっと、あの人は何も言わない。けど、悲しい顔をするんだろう。
回想に想いをはせている僕の耳を、誰も喜ばない爆音が劈く。
……無事にここでこうやって過ごせるのも、あとどれぐらいだろうか。
僕は爆音を魔法でシャットアウトしながら、窓から見える狭い庭に植えられた樹に目を向ける。僕はぼそりと、それに向かって想いを吐き出した。
……ねぇ。そこにあなたがいないことは、とっくにわかり切っているけれど。
「……せめて、あなたがこの酷く醜い世界を知ることが無かったことに……少し安心してしまうのは、変……?」
それに答えるように、爆撃音がどこからか響いてくる。
……あの人と違って、まだこうやって生き続けてしまっている僕は。
きっとこれから先も、これまでのように……こうやって終末に進み続ける世界を、他人事のように眺めているのだろう。
……あの人がいた、少し不自由でも楽しかった思い出も。
……あの人がいたころの、綺麗で輝かしい『平和な世界』が回っていた時代も。
……なにもかも、今となっては。
もう随分と昔の話だ。