海外版一人隠れん坊風よーり(?) 家中の明かりを消した内の一室のテレビを点ける。液晶の砂嵐に好きなだけノイズを歌わせ「彼」を迎えに行く。寝室に横たえた人形を持ち上げて微笑み掛ける。
「さあなわぁぶ見つけましたよ。」
そのやわい腹に鋏を突き立てる。
「次はおまえが鬼です。」
人形をベッドに戻したら部屋を出て浴室に向かう。空のバスタブに自身を沈め、目を閉じて暗い冷たさに心地良く身を委ねる。
やがて扉の開く音が聞こえるので目を開ける。寝室の方からだ。
それから順番にがちゃりがちゃりと他の部屋の扉を開けられて行く、部屋の中を一室一室確認するように、そしてが徐々に近付いて来る音がする。
それが浴室の前の部屋からした時点で、隣の部屋に入った彼と入れ違いで風呂場を出る。
その儘リビングのソファに座り、足を組みながら砂嵐の液晶を眺める。今頃は風呂場を確認して居るであろう相手の立てる物音もノイズ音に混ざるが、紛れること無くはっきりと耳に届く。
それがもっと、もっと近付いて来る。
ノイズ音は不快な筈だが長く聞いて居れば微睡みが誘うようだった。
それが強制的に引き下げられる感覚。背中にひやりとした空気が張り付くようなバスタブよりも冷たい気配。
「見ぃつけた。」
人形の腕が人の腕のような大きさで動き、人の通常よりも激しく後ろから捕えられる。
「だめだろぅ、ちゃんと隠れてなくちゃ?」
押さえられた腹は、鋏で彼を刺した箇所だ。
砂嵐はいつの間にかやんで真っ赤な画面を映すばかりだった。
腹どころか全身真っ赤だ。液晶が映して居るのが砂嵐なせいでどろどろと体を伝い落ちるようだった。
それをぼんやり見上げて居た。微睡んで居たわけでは無い。
呆れたように竦めた赤い肩は、しかし赤く反射して尚ミストグリーンの釦だけは困ったようにこちらを見下ろす。
「こんな遊びはよせ。」
記憶の声に違い無い。なんだか本当にその目も釦だったような気がして来た。
「こんな誘いをして迄、遊びたかったのですよ。」
次はわたしが鬼ですよね、返事は敢えて聞か無かった。探しに「来て」仕舞った時点で、人形の方からこの遊びを終わらせることは出来無いのだから。