この男は感情の起伏が極端だ。快か不快の二極を一直線に行き来する。まるで雨が天から地に落ちるように。そして天地はころころと変わる。今も、さっき迄ころころと笑っていた陽気が、すっと外套を無造作に脱ぎ捨てたみたいに落っこちた。「今日の約束はやめ?天気が悪いから?」「…いや雨も風も凄いしこの後雹か霰に成るかもしれないって話だし雷も鳴ってるし」「だから?」「だから…」そんな顔してほしい訳じゃない。「…危ないから、散歩は駄目だ。」雷に負けないくらい想い切ってぴしゃりと言ってやれば、男の機嫌も地に落ちる。「そんなの、」とうとう男の視線も俯いた。「つまらなくてしにたいです。」「それは…!」大袈裟だろ、とは言えなかった。本当に、この世をいきることに興味が無いような声を零すから。「外は駄目だけど、別のことしよう?おまえ、絵でも描けば良いじゃねえか?お、おれもなんか描くから…!」「…気分じゃないです。」うう…。