デリヘル呼んだらホストが来た① そのときの幻太郎は屍であった。作家という職業で生計を立てている以上、避けては通れない〝締め切り〟というゴールを立て続けに三本越えた夜、幻太郎の理性は完全に崩壊していた。だから、 魔が差した。そうとしか言いようがない。
「う……」
最悪の気分で幻太郎は薄目を開けた。一瞬、耳鳴りがひどいのかと思ったがそうではなく玄関のチャイムが連打されているらしい。ピンポーンピンポーンという音が頭の奥まで響いてイライラする。
「くそっ、非常識な……こちとら締め切り明けなんですよ」
悪態をつきつつ幻太郎はのそりと布団から這い出して玄関に向かう。完成した原稿を送り出してから何時間眠っていたか確認していないが、外の暗さを見るにまだ夜なのだろう。幻太郎は怒りをこめてやや乱暴に戸を開けた。
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