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    ak1r6

    @ak1r6
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    ak1r6

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    何でも読める方向け/色々捏造改変

    #コウヒロ
    kouhiro.

    速水ヒロじゃなかった どうやら、速水ヒロじゃなかったらしいんだ。俺の名前。産まれる前に、母さんが考えた名前は別にあったんだって。じゃあどうして「ヒロ」なのかって言うと、まぁ大した話じゃない。教会に送り届けられた赤ん坊の俺には手紙が添えてあったらしいんだけど、それがぐしゃぐしゃで、シスターは辛うじて読めた母さんの名前の一部を赤ん坊の名前だと思って、それで役所に届け出たんだって。それだけ。母さんは、どうして自分の名前なんか書いたんだろうな。連絡されても困るだろうに。母さんの名前のほかに、何が書いてあったかは分からない。
     小学校で、自分の名前の由来を調べる宿題があっただろう。東京の学校に来たらその宿題が出て、母さんから『本当の名前』のことを聞いたんだ。少し経って母さんにその話をしたら忘れていたから、別にこだわりがある訳でもなさそうだけど。でも俺は覚えてるよ、母さんのくれたものだから。
     俺はときどき、ベッドの中で目をつぶって、その名前で生きてる自分を想像する。
     産まれたときから母さんと一緒に住んでいて、ほかの家みたいに父親がいて、「おじいちゃん」や「おばあちゃん」なんかもいて、母さんは携帯電話の画面で子守をする必要がなくて、俺はプリズムショーの中継を見た事もなく、法月家の世話にもならず、放課後はエーデルローズのレッスンをしないで友達とゲームして遊ぶような……平凡でつまらない人生を送る自分をさ。それで安堵するんだ。俺は速水ヒロで良かった、って。
     はは、コウジは俺の小さい頃のことなんて何も知らないのに、こんな話しても分からないよな。
     何も知らない。お前は俺のことなんか、何も知らないんだよコウジ。
     二人で海に行った日、お前が俺のことを、どんなに輝いた目で見てくれていたのか知っているよ。あのとき俺は、お前にかっこつけたかったんだ。言ったことは本心に違いないけど、いつだって、俺は自分を演じているような気がする。俺はお前が思うような人間じゃないんだ。
     俺は、お前や大人達が俺に何を期待しているのか知っていて、その通り振る舞っているだけだ。
     だから、俺が本当は「違う」んだってことがばれたら、ここにはいられなくなって、どこかへ追い払われてしまうような気がして、ときどきそれが爆発しそうになって、毎日息苦しかった。
     でもお前のいる場所なら、息ができる。
     演じているのは変わらないけど、お前が期待する俺は、お前といる俺は、俺もなんだか好きなんだ。
     さっきの話だけどさ。平凡でつまらない、プリズムショーを知らない人生の話。もしかしたら案外悪く無いのかも、って、最近は少しだけ思うよ。友達が……お前みたいな奴が、隣にいてくれるんなら……。
     ま、でもやっぱり、俺にはプリズムショーの無い人生なんて考えられないよ。プリズムショーがなかったら、コウジとも仲良くならなかったのかもしれないしね。
     明日が無事に終わったら。俺たちのデビュー会見のステージを降りたら、俺たちのユニットの未来の話をしたら、その後お前に伝えてみようかな。お前なら、ちゃんと聞いてくれるだろ。コウジには知っていて欲しいんだ。
     母さんと俺のほかには、誰も知らない特別な名前。

     俺のほんとうの名前は、




    (了)
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    ak1r6

    MENU▶︎web再録加筆修正+書き下ろし約40頁 (夭折した速水ヒ□の幽霊が、神浜コージの息子13歳のもとに現れる話)
    ▶︎B6/66頁/600円 予定
    ▶︎再録は 下記3つ
    酔うたびいつもするはなし(pixiv)/鱈のヴァプール(ポイピク)/せめてこの4分間は(ポイピク)
    【禁プリ17】コウヒロ新刊サンプル「鱈のヴァプール」書き下ろし掌編「ヤングアダルト」部分サンプルです。(夭折した速水ヒロの幽霊が、神浜コージの息子13歳のもとに現れる話)
    ※推敲中のため文章は変更になる可能性があります

     トイレのドアを開けると、速水ヒロがまっぷたつになっていた。45階のマンションの廊下には、何物にも遮られなかった九月の日差しが、リビングを通してまっすぐに降り注いでいる。その廊下に立った青年の後ろ姿の上半身と下半身が、ちょうどヘソのあたりで、50cmほど横にずれていたのだ。不思議と血は出ていないし、断面も見えない。雑誌のグラビアから「速水ヒロ」の全身を切り抜いて、ウェストのあたりで2つに切り、少し横にずらしてスクラップブックに貼りつけたら、ちょうどこんな感じになるだろう。下半身は奥を向いたまま、上半身だけがぐるりと回転してこちらを振り返り、さわやかに微笑む。
    1931

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