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    steam_mameko

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    『嫁が可愛い過ぎて辛い隊長リンクある夜のお話』(テキスト版)

    ✼✼✼

     向かい合ってしっかりと抱き合い、深く深く繋がってゼルダが果てると、リンクも後を追うように欲を吐き出した。
     ふたりの弾む呼吸が、静かな部屋に響く。
     達した余韻に幼子のような声を細く長く引きながらいまだ抱きついて離れないゼルダの背中を、リンクは愛しげに撫でた。すっかり身体を預けてくる様子も、彼女が達する際、背中に強くくい込んで来る指先もたまらなく好きだ。
     とにかく可愛い。ゼルダが、ゼルダのなすこと全てが可愛くて仕方がない。ベッドに潜り込むまでイライラとした居心地の悪さを抱えていたが、ゼルダへの愛しさですっかりそれも洗い流されてしまった。
     あのとりつくしまもない感情が嫉妬だと気づいたのは、いつもよりも乱暴にゼルダのパジャマを脱がした後だった。
     彼女が勤めている食堂に閉店間際に迎えに行くと、ゼルダは最後の客だとか言う若い男に酒を勧められてほろ酔いだった。随分と親しげに言葉を交わしながら笑っている様子に大人気ないとは自覚しつつも、早く帰り支度をしろとせっついて連れ帰って来てしまったのだ。
     帰り道、その男や他の客と何があったのかをご機嫌でしゃべり続けるゼルダに苛立ち、腹の底にふつふつと湧き出て来るものを抑える余裕もなく、シャワーを終えた彼女をベッドに引き込んだ。
     たっぷりとくちづけて、意識をこちらに向けさせる。そうする事で一度スイッチが入ってしまえば、ゼルダはリンクに、リンクからされること全てに夢中になる。それもわかった上でリンクは少しでも早くゼルダと夫婦の時間を持ちたいと焦っていた。
     相手は店に来た客なのだからゼルダが親切にするのは当たり前だ。当たり前なのだが元々人気があり彼女目当ての客も多かった過去を思い出すとどうにも落ち着かない。それがみっともないやきもちだとはわかっているが、どうにも我慢など出来るはずもなく、自ずとくちづけの時間は増え、お前は俺のものだと言わない代わりに、彼女が喜ぶような甘ったるい言葉を幾つも並べた。ぎゅっとしてとねだられ、最後は対面の体勢でゼルダを高みへと追いやった。
     それからしばらく、きゅっと抱きついていた細い腕の力が緩まると、リンクはゼルダの頬や額、鼻先や唇にくちづけを繰り返した。ゼルダがくすぐったそうにくすくすと笑う声が、耳に心地いい。
     お互い明日も早いのだからと、今夜はこれで終わりにするつもりだった。妻の可愛い姿を堪能した彼は、満足気に問いかける。
    「疲れたか?」
     リンクは愛らしい唇に短いくちづけを贈りながら訊いた。もう休もうと続けるつもりの問いかけだったが、ゼルダは何を思ったのかまだ向かい合って繋がったままの身体を僅かに離してはにかみながら首を傾げたかと思うと、ふにゃりと幸せそうに微笑み、こう言ったのだ。
    「もう一回、する……?」
     達した後の紅潮した顔で誘うようなセリフを吐くゼルダに、リンクは一瞬言葉を失った。彼の自制心を吹っ飛ばすには充分過ぎる破壊力だ。可愛い妻にそんな事を言われて、遠慮する男がいたらそいつは余程のヘタレだと彼は思う。
     まだ酔いが残っているらしいゼルダは、明らかに動揺しているリンクの様子はお構いなしに彼の両頬を手のひらで包むと、額と額をこつりと重ね合わせた。
    「……今日のリンクさん、とっても甘えん坊さんなんですもの……」
     ゼルダの言いように唖然とする。
     ──甘えん坊? この、俺がか!?
    「だって、帰る時に手を繋いだり、肩を抱いたりしてくれたし……たっくさんキスしてくるし……」
     ──いや、それは嫉妬から来たちょっとした独占欲で甘えている訳では……
     などといった言い訳も心のなかで叫んでいるだけなのだから、当然ゼルダには届かない。
    「だからね、甘えん坊さんなの。でも甘えん坊のリンクさんも大好きですよ」
     ふふ、と笑いながら続けるゼルダは、リンクにとって毒でしかなかった。飲み干して、全身に浴びて、永遠に毒されたままでいたいと思う甘美な毒。
    「わたしはいいですよ? でもあと一回だけって、約束してくださいね……?」
     リンクを甘えん坊だと言うくせに、
    「それ以上はムリですう」
     とぐりぐりと額を擦り合わせてくるゼルダの喋り方は更に輪をかけて甘えていた。
     甘えん坊と言われるのは些か不本意ではあるが、本人が二回目をゆるしてくれるのであれば、もちろんリンクとてやぶさかではない。
    「いい、のか?」
    「……はい。でも、お願いがあるの」
     なんだと問えば、ゼルダはもじもじと恥ずかしそうにしながらも素直に答えた。
    「その……、あなたが付けているそれを、しないで欲しいの……」
     ──俺が付けている、それ。
     現在素っ裸のリンクが付けているものと言えば、それは即ち彼自身に被せているものしかない。
     リンクは考えた。夫婦の間でこれを拒絶するとなれば、答えはひとつだけしかない。しばらくはふたりでいたいとの思いから使っていたが、彼女が望むのであればそれはそれで一向に構わない。
    「……欲しいのか?」
     リンクの問いに、ゼルダは可愛らしくこくりとうなずく。
    「だって、遠いんですもの……」
     妻の返答に、リンクの頭に疑問符が浮かぶ。
     ──遠い……?
    「ほんのちょっぴりの距離だけど、やっぱり遠いの」
     何やら話しが噛み合わない。
    「ゼルダ」
    「……ん?」
    「お前が欲しいものは、一体なんなんだ?」
     頭のうえにハテナを幾つも並べているきょとんとした顔も、また実に可愛らしい。
    「わたしが欲しいのは……えっと、……ん? あ、そっちも……か。つまりリンクさんが言っているのは……」
     独り言の後に、ごくごく小さな声で
    「……赤ちゃん?」
     と、呟くなり、ゼルダはぱっと顔を伏せてしまった。
    「それ以外に何があると言うのだ」
     頭からしゅうしゅうと音を立てて湯気が登りそうなくらいに赤面しているゼルダは、涙が浮かんだ瞳で上目遣いにリンクを見た。
    「それも、そうなの……とても欲しいの。でも、今欲しいのは、あなた」
    「俺?」
    「甘えん坊のあなたを、全部感じたいの。せっかく何も着ていないのに、それの分だけあなたが遠いの。だから、邪魔だなっ、て……」
     ──ちょっと待ってくれ……!
     心中リンクは叫んだ。
     これまでにももっと欲しいとねだられはしたが、こんな風に己を求められた事があっただろうか?
     甘ったれた口調で『もう一回?』などと訊いてくるのはもしかして酔いのせいなのか? ならばたまには酒を勧めるのも悪くないのか? いやいや、元はと言えばあの客が飲ませたからこうなった訳であって……だとしたら俺は嫉妬心を抱いたアイツに感謝すべきなのか!?
     そこまで考えたその次の瞬間、『全部感じたい』なんてゼルダのいじらしいセリフは、彼の脳内で『もっと感じさせてやる』に置き換わる。
    「わかった。全部お前にくれてやる」
    「ホントに? 嬉しい……!」
     いっぱいキスしながらして下さいね、と勢いよく抱きついて来たゼルダを抱えながら後ろに倒れると、彼女の中に行儀よく収まっていた彼自身がすぽりと抜けた。
     リンクは身体を半回転させてゼルダをベッドに寝かすと、見せつけるように目の前で『不必要なもの』を抜き取り、ゴミ箱へとほおり投げる。
    「これでいいか?」
     ゼルダははにかみながらこくりとうなずいて手を伸ばしそれを掴むと、リンクはその上からゼルダの手ごと掴み、半ば起ち上がりかけていた自らの性器を扱いた。そうしながら身を屈め、ゼルダの唇をいやらしく食む。
     握っているものが徐々に硬くなっていく様子に我慢できないのか、吐息混じりに喘ぎながらゼルダの腰が揺れているのが見て取れ、リンクは自らを握っていた手を、彼女の秘密の泉へと忍ばせた。
     いつ触れても優しい感触だった。この優しさが、リンクを『楽園』へと導いてくれる。
     互いが互いを愛撫しながら深く貪るようなくちづけを繰り返していると、口の端から漏れる吐息が湿り気のあるものへと変わった。ゼルダの腰が、小さく跳ねる。
     リンクが指を抜き取るのと同時に唇を離すと、蕩けた瞳がこちらを見上げていた。
    「……早くぅ……」
     と涙声でねだられ、もう我慢できないのと続けられ、リンクの中で多分理性とか名付けられている筈の何かが、ぷつりと音を立てて彼の闇の中へと落ちて行った。
    「ゼルダ……。一回で済むと思うなよ」
    「そんなぁ、だって……約束……」
    「それよりも、お前が欲しいものをたっぷりと感じる方がよっぽど重要だ」
     リンクにうつ伏せにされながら、ゼルダは既に流されつつある自分を感じていた。せっかくねだったのだからと、彼の言い分にほだされる。
    「リンク、さん」
    「……なんだ?」
    「あのね、大好き……」
     ──いま、このタイミングでそれを言うのか!?
     背後から覆いかぶさり今まさにゼルダを刺し貫こうとしていたリンクは、今宵の妻の度が過ぎる可愛らしさにすっかりやられてしまっていた。明日の朝が早いだとか、そんなのはただの言い訳に過ぎない。こんなゼルダを思う存分味合わなければ、絶対明日は後悔するに違いないのだ。
    「ゼルダ……」
     甘ったるく妻の名を呼ぶ。
    「お前が欲しかったものだ。たっぷりと、感じてくれ」
     リンクはゼルダの入り口に性器の先を宛てがうと、じりじりと腰を進めた。
    「ひゃ、あっ……ああ……ッ」
     無防備な白い背中がひくひくと震えるのを見下ろしながら奥の奥まで貫くと、リンクはゼルダの肩と胸に腕を回し、ぴたりと身体を寄せた。
     強くシーツを掴んでいる手に目を細める。挿入れただけですっかり感じ入ってしまっているゼルダと、底知れない柔らかさを直に感じてしまったリンクは、快楽の波が去るのを待つとやがてゆっくりと動き出した。
     焦れったいほどの抽挿が、余計に強い快感を生む。
    「リンク、さ……あッ隊長……それダメぇ」
     最早リンクの呼び方すらも定まらなくなってきたゼルダは、まるで泣いているように喘いだ。
    「気持ちいい……気持ちいいよぅ……」
     取り憑かれたように繰り返すゼルダに俺もだと返し、余り持たないかも知れないとうなじにくちづけながら語りかける。
    「でもこれだけでは終わらせないから、な」
     涙を流しながら何度もうなずくゼルダの頬をぺろりと舐め、リンクは一気に腰の動きを早めた。
     それから暫く、ゼルダの嬌声とふたりの荒い息遣いが途切れることはなかった。
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