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    steam_mameko

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    大急ぎで書いたから変なとこは目をつぶってくれ!ヨロシクな!

     文化祭当日。
     ゼルダがその日初めてリンクの名を聞いたのは、まだ祭りが始まったばかりの校門、来賓受付ブースのそばだった。
    「生徒会長! リンク見かけなかった?」
     声を掛けてきたのは、リンクの同級生の男子生徒。生徒会会長であり文化祭実行委員長も掛け持つゼルダがファイルに挟んだチェック票に、受付問題なしとを書き込んでいた時の事だった。
    「いいえ。今日は見てないわ」
     と、ゼルダは答えた。

     今度は中庭の辺り。売店が並んでいる付近だった。
    「リンク? アイツならさっきウチでフランクフルト五本買ってったぞ?」
     暑そうに火の前でソーセージを焼く日焼けした男子が、訪ねる女生徒に大声で返事している。その女生徒も、リンクのクラスメイトだ。
     売店の脇にあるゴミ箱をチェックしていると、やはりゼルダにも知らないかと声がかかる。彼女の答えはやっぱりノーだ。
     次は昇降口の前。リンクなら購買のパンを抱えて走って行くのを見たと言っている生徒を見掛ける。
    「あんにゃろう! どこ行きやがった!」
     指さされた方向に走っていくのは、やはりリンクのクラスメイト。
     その様子を眺めながら、ゼルダは心中首を捻った。
    (確かリンクのクラスはカフェだったはずだけど、彼が居ないだけでそんなに困るのかしら……)
    『俺、ボウイやるの。ゼルダも来てね!』
     LINEのメッセージにもちろん行くねと返事したのは昨日のことだ。その彼が、なぜ姿を消したのか。

     その後もリンクの名と共に、唐揚げやら焼きそばなど売店で売られている食べ物の名前もついてまわる。
     ゼルダが校舎内を回り、リンクのクラスに近づくと、異様な光景が目に入ってきた。そこだけ異常に女子が多いのだ。ほぼ他校の制服か私服。中には中学生もいるようだった。
     きゃいきゃいと騒ぎながら彼のクラスが営むカフェの中を見ようと、まるで波のように蠢いている。
     思わず立ち止まると、仲の良い女生徒が話しかけて来た。
    「ゼルダちゃんも大変だよねー。あんなにモテモテの彼氏がいてさー」
     半ば呆れるような彼女の物言いに、朝からのリンクの行動がすべて腑に落ちた。つまり、彼はここから逃げたのだ。逃げたついでに、売店のものを食べ漁っているのだ。
     モテ男のリンクと学園一の美少女と謳われたゼルダが付き合いだしたのは一年と少し前。同じ学校の生徒達には有名な話で、皆諦め半分で暖かく見守っていたのだが、他校の生徒までは浸透していなかったらしい。
     ちなみに校内を見回っているゼルダの後ろに他校の男子生徒がそれなりの距離を置いてついて回っていることを、彼女はまだ気づいていない。

     やれやれとため息をつきながら、ゼルダは敷地のはずれにある自習棟へと向かった。ここは文化祭の出し物はなく、静かなものだった。
     ひと息つこうと建物の影に入ると、突然そばの扉が開き、その中へと連れ込まれた。
     腕を握られた瞬間に、だれの仕業かわかった。リンクだ。
     名を呼ぶ一瞬も惜しいと言わんばかりに、彼はゼルダを思い切り抱きしめると、まるでお湯につかった時のような、間の抜けた声を出した。
    「あーーーーーーーーー、落ち着くぅーーー」
    「落ち着くじゃありません。皆探してましたよ?」
    「だってあんなの聞いてないもん」
    「来てくれたお客様の相手をするのが、今日のあなたのお仕事なのでしょう?」
    「そんなこと言ったってさあ、俺、女の子はゼルダしか興味ないもん。手紙とかプレゼントとか貰っても困るだけだもん」
     それにさぁ、と続けるリンクをそっと盗み見る。制服のシャツに黒い紙で作った蝶ネクタイが可愛い。一応カフェの店員風にしてあるのだろう。
    「ゼルダは俺がほかの女の子たちと仲良くしててもいいわけ? 嫌じゃないの?」
     唇を尖らせて拗ねる様子につい愛しさが増してしまい、ゼルダもリンクを抱き返した。
    「もちろい良い気持ちはしません。でもクラスメイトに迷惑をかけているリンクはもっと嫌です」
    「うーーーーーー」
    「今日だけは目をつぶりますから、ボウイさんのお仕事頑張って、ね」
    「ううううううううう」
     暫し唸っていたリンクがふいに顔を上げたかと思うと、いきなりゼルダの唇を奪った。彼にとっては欲しいものを手に入れただけなのだが、ゼルダにとってはいきなりに感じてしまう。しかもここは人目につかないとはいえ学校内なのだ。
     慌てつつもすぐ離れるかと思っていたゼルダの思惑とは裏腹に、リンクの唇は一向に離れようとはしなかった。何度も角度を変えて、夢中でゼルダの唇を自分のそれで感じている。
     大好きなリンクからのキスが嫌なはずがない。初めは驚いていたゼルダも、徐々に身体の力が抜けてゆく。
     暫くして納得したのか、最後にペロリと彼女の唇を舐めて、リンクは離れた。
    「んー、やる気出た」
    「そうですか?」
    「うん。何食べても出てこなかったんだ」
    「それでは私はデザートですね」
     リンクが今日食べたであろう食べ物の数々を思いながら笑うと、もう一度軽く唇が触れる。
    「違うよ。ゼルダは俺の栄養源。とびきり最っ高のね」
    「私、あなたの栄養……なのですね」
    「本当はもっと欲しいんだけど、今日は無理だから我慢する」
     彼の言うもっとの意味が分からずキョトンとするゼルダの丸い尻を、リンクはくるりとひとなでした。
    「きゃ……っ!」
     意味がわかった途端、ゼルダの頬が熱を持つ。真っ赤に熟れた彼女の頬を指でつついてから、リンクは身体を離した。
    「やる気があるうちに行くよ。あとこれ、ゼルダの好きなパンが売り切れそうだったから買っといた」
     購買のものらしいシンプルなクロワッサンのサンドイッチを手渡したかと思うと、リンクは身を翻す。
    「ついでにゼルダについてまわってた野郎共も追い払っとくから安心してね」
    「え……? 誰ですか?」
    「気づいてなかったの? そっかー、そんなとこも好き! 文化祭終わったらいっぱいしようね」
     返事も待たずに出ていくリンクの背中を見送ると、ゼルダはその場にへなへなと座り込んだ。
    (もっと欲しい、とか……いっぱいしようね、って……つまりそう言う意味、ですよね……)
     リンクとゼルダ。ふたりが全て許しあったのはひと月ほど前、夏休みも終わりの頃だった。ぴったりと重なった心と身体が嬉しくて、離れ難くて。けれど高校最後の夏は部活と文化祭準備で埋め尽くされて、そんなふたりきりの時間を過ごしたのは本当に数える程で、経験と呼ぶにはまだまだで。
    「我慢、してたのよ。私も……」
     蚊の鳴くような声で呟くと、ますます熱を持つ頬を両手で包み込む。いつもひんやりと冷たい手のひらも、この熱は早々下げられそうにはない。
     ふと見ると、彼から貰ったパンの袋にハートの形をしたシールが貼られていた。そんな彼の優しさがやっぱり大好きで、ゼルダはゆるゆると立ち上がると落ちていたファイルを手に取る。
    「私もやる気を出さなくちゃ」
     シールにそっと口付けて、ゼルダはその場を後にした。その後、彼女をつけまわす男子生徒の姿を目にすることはなかった。
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