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    steam_mameko

    @steam_mameko

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    steam_mameko

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    エロに入る前と入ってからの文章が違いすぎるのは気にしちゃダメ!
    勢いで読んでくれ。
    そうよエロはファンタジー✨

    バニゼルちゃん「なんだ、これは……」
     開いた宝箱の蓋の中からぴょこりと飛び出した黒く長い耳に、リンクは首をひねる。
     ──ウサギ……?
     その形からか弱い小動物を思い浮かべる。が、確証はない。リンクはそれ以上考えるのをやめて蓋を閉めるとそれを小脇に抱え、少し離れた場所で草を食んでいる馬へと足を向けた。

      *

     ゼルダがハテノ村に訪れた行商から本を買ってきたのは数日前のこと。
    「ハイラル服飾辞典……ですか?」
     彼女の手元を覗き込むリンクの問に、ゼルダは美しい両の瞳をきらきらと輝かせてこたえる。
    「ええ、百年前のものです。なつかしくてつい、求めてしまいました」
     まだ残っていたなんて、と彼女がつぶやきながらぱらぱらと開く頁には、彼にも感慨深い衣服類が、事細かな図説とともに掲載されている。それは百年前のハイラルにあった様々な職種やそれに纏わる衣裳が、色とりどり鮮やかな色彩で描かれている辞典だった。
    「無闇に昔を懐かしむのはやめようと思っていましたが、これくらいはいいと思ったの」
     ゼルダの言葉に、リンクは深く頷く。過去に起きた何もかもを足枷にする必要はないと、彼も考えていたからだ。
    「よい本が手に入りましたね」
     リンクが微笑めば、ゼルダもまた、はいとこたえる。和やかなひとときにひとつの変化をもたらしたのは、小さな紙片だった。
     本の間からぱらりと落ちたそれを、リンクはつまみ上げる。そこには簡単な地図と、ここに何かありますと言わんばかりの矢印が描かれていた。
    「何でしょう」
     こんな物を見つけて、ゼルダの好奇心に火がつかない訳がない。
     明日にでも、いや今すぐにでもそこに行こうと言い出さんばかりのゼルダを制し、リンクは告げた。
    「俺が行ってきますから、どうかゼルダ様はここでお待ちを」
     ゼルダは残念そうに眉をしかめたが、すぐにお願いしますと言葉を添えた。これから準備をして二人で行くよりも、リンクひとりで赴いた方が余程早いと察したからだ。

      *

     リンクとゼルダがハテノ村のリンクの家で共に暮らしだして、季節がひとつ変わっていた。記憶を取り戻した彼との生活は、一見居心地がよいようで、案外そうでもなかった。
     主従の距離感は昔とさほど変わらず、その間を詰めようにも詰められず、ゼルダは彼への想いばかりを募らせて焦燥感を感じていたのだ。
     カカリコ村にゼルダを残し、ひとりそこを辞そうとしたリンクの後を追うと訴えた彼女をインパがゆるしたのは、何もこんな関係を維持するためではない。ゼルダのリンクへの想いを知っていればこそ、幸せになって欲しいとの親心だったのだ。
     ゼルダはため息をつきながら、リンクが持ち帰って来た宝箱に手をかけた。
     彼が帰ってきた際に一度開いが、その場ですぐに閉じてしまった。なぜならゼルダには、その中身がどんなものだかわかってしまったからだ。とてもではないが、リンクの前で広げて見ていいものではなかった。
     ──これは、きっと辞典に載っていたバニーとか言う……
     ありがとうございますとだけ声をかけて蓋を閉めると、ゼルダは宝箱を抱えてそそくさと二階へ上がった。リンクはしばらくぽかんとしていたが、主の機嫌を損ねたわけではないとわかると、特に何を問う訳でもなく他の用事を済ますべくその後家を空けた。
     リンクがいなくなった家で、ゼルダは再び宝箱の蓋を開く。案の定、ある特定の店で、そういった類の女性たちが身につけていた衣裳が顔を出す。なぜ、わざわざこれを後生大事に隠して地図を残したのかはわからないが、とても大切なものだったのだろうと察する他ない。
     黒い布で作られた、身体を覆うには余りにも小さい衣裳と、揃いの長い耳。単独で襟とカフス、それに蝶のかたちをしたタイ。ネット状の何か。ちょうどおしりの上あたりに配置されたふわふわとした丸いしっぽが、それとなく目を引いた。
     過去のゼルダとは対極にあった衣装。それが今、彼女の手の中にある。
     不思議な縁を感じ、ゼルダはそっと身体に当ててみる。もしかしたら、着られるだろうか。
     好奇心旺盛なゼルダは行動に移すのも早かった。なぜならリンクが家を開けている今が、最大のチャンスだったからだ。

      *

     順番にひととおりの衣裳を身につけ、最後に細長い耳を頭につけた。それは太めの黒いリボンに縫い付けられており、ゼルダはリボンの先をうなじに回すと髪の下で結びつける。
     着る前はどうかと思ったが、ことのほかしっくりとくる着心地に驚く。まるであつらえたかのようだ。
     ベッドの横に置いてある姿見の前に立つと、そこに映り込む自分の姿にゼルダの胸は高鳴った。着るものが変わると気分も変わると言うがその通りだと感じる。まるで、自分ではないようだ。
     誰も見ていないのをいいことに、ゼルダは鏡の前でいくつかポーズを取ってみた。正面を眺め、横からの姿をチェックし、首をひねって背中もくまなく確かめる。大きくてあまり好んではいなかったおしりも、ふわふわのしっぽのおかげで可愛らしく思える。動くたびに揺れる耳も気に入った。
    「ふふ……っ」
     ゼルダは頬を染めて晴れやかに微笑む。
     ──なんて素敵な気分なんでしょう。これは私だけの秘密にして、たまに楽しむのもいいかもしれません。
     となるとリンクに見られる訳には行かない。今日はここまでと長い耳をとめてつけているリボンに手をかけた時、ゼルダは異変に気づいた。軽く結びつけてあるだけのはずなのに、いくら引いてもリボンがほどけないのだ。それどころかリボン自体が頭から外れない。
     ゼルダは慌てた。慌てながら今度はカフスのボタンを外そうとするが、これもまた何かで固められたように動かない。襟も、蝶のかたちをしたタイも同じだ。胸をかくしている柔らかな布すらぴたりと張り付いたまま動かない。
     ──なぜ、どうして……?!
     予想だにしていなかった出来事にわたわたと焦るゼルダは、宝箱の底に一枚の紙を見つけた。なぜさっきは気が付かなかったのだろう。もしやこの窮地を救ってくれるヒントがあるかもしれないと急ぎその紙に書かれていた文字を読み、ゼルダは絶句する。

    『この服を脱ぐには、あなたを心から愛している人の協力が必要です』

     ゼルダは絶望のあまりその場にへなへなと座り込んだ。
     ──私を心から愛している人、ですって……?
     そんな人が、一体どこにいると言うのだろう。慈しんでくれた両親は遠い昔に亡くなり、娘のように可愛がってくれたウルボザももういない。私を愛してくれている人なんて、この国のどこを探してもいはしない。
     罰がくだったのだとゼルダは思った。すっかり浮かれてはしたない衣裳などを身につけてしまった自分が悪いのだ。
     彼女は絶望に打ちひしがれたままもぞもぞとベッドに潜り込み、頭から布団を被って泣き崩れた。もうどうしていいのかわからなかった。

      *

     ほどなくして帰宅したリンクが二階で泣いているゼルダに気づくのに、さほど時間はかからなかった。
    「ゼルダ様、いかがされましたか?」
     階下から何度か問いかけたが、返ってくるのは泣き声のみ。心配になったリンクは「失礼いたします」と思い切って階段を上がった。
     布団が盛り上がり、細かに震えている。ベッドに歩み寄った彼の目に飛び込んで来たものは、布団の端から飛び出している黒くて細長い耳だった。それにより、彼女がどんな姿で布団に潜っているのか、大体の察しはついた。
    「ゼルダ様。いかがされました、なぜ泣いておられるのですか?」
     リンクは返事を待った。ゼルダは彼が諦めて下に降りてくれることを願ったが、いつまでも退くことなく待ち続ける様に根負けし、のろのろと布団から起き上がると先程の紙をリンクに手渡す。
    「──心から、愛する……」
     紙に書かれた文字を読む彼の声が、まるで死刑宣告のように聞こえた。
    「……あきれたでしょう……?」
     ベッドの端に座り、ゼルダはうなだれる。試しに再びカフスに手をやるが、やはりぴくりとも動かない。
    「罰が下ったのです。好奇心で一時でもこのような出で立ちになってしまった私を、女神は許してはくださらなかった……」
     一生このままの格好で過ごさなくてはならないなんて、とゼルダの心は再び暗雲に覆われた。
     恥ずかしくてリンクの顔を見ることが出来ない。いっそ罵ってくれたほうが余程楽だとゼルダは思った。だから彼女は気づかなかったのだ。この時、リンクがどんな表情をしていたのかを。
     リンクはゼルダの前に片膝をついた。目線を合わせようとしたが、ゼルダはうなだれたまま、決して彼を見ようとはしない。
    「ゼルダ様」
     穏やかな声にも関わらず、ゼルダの身体がびくりと震える。
    「ゼルダ様、お手を」
     ふるふると拒絶に首を横に降れば、細長い耳が彼の鼻先を掠めた。
    「どうかお手を……」
     目の前まで手を差し伸べられ、ゼルダは恐る恐る右手を彼の手に添えた。リンクは慣れた仕草でより優しくその手を引き寄せると、恭しく指の付け根にくちづける。いつもよりも、ずっとずっと長く。
    「あなたは、何もわかってはいらっしゃらない」
     ゼルダの手を握ったまま、リンクは語りかける。
    「そのような姿を、男の目に晒すだなんて」
     ゼルダは何も言い返せなかった。もとより見せるつもりなどなかったけれど、こうなってしまっては言い訳も虚しいだけだ。
     もう涙も出ては来ない。恥ずかしさと絶望感に力なく預けていた手を引こうとした途端、強く握られ、ぐいと引き寄せられた。
     はっと息を飲み、ゼルダはリンクを見る。彼の瞳に射抜かれ、身動きが取れなくなった。美しい青の奥底に焔が燃えている、それは間違いなく雄を匂わせるものだった。
    「やはりあなたは、何もわかってはいらっしゃらない……」
     リンクはゼルダをしかと見つめながら、失礼しますとカフスのボタンに手をかけた。ゼルダがいくら外そうともがいてもびくともしなかったそれが、彼の指によって呆気なく外れ、音もなく床に落ちる。
     ゼルダは震えた。
     目の前で起きていることが信じられなかった。もし紙に書いてあった事が真実ならば、これはすなわち、そういう意味なのだ。
    「これで、よろしいですか?」
    「……リンク……」
    「あなたはひどいお方だ……こんな事までして、俺を試そうとする」
     リンクの手が、次はタイと襟にのびる。これもまた難なく外れ、ゼルダの白い首筋がむき出しになった。
    「なぜです? なぜゼルダ様はそうやっていつも、俺の心を掻き乱すのですか……?」
     リンクの言葉にゼルダは混乱した。不測の事態に追い詰められ、心掻き乱されていたのはこちらの方なのに。
    「あの時だってそうだ。手の届かぬ方だと諦めてカカリコ村から去ろうとした俺を、あなたは放っておいては下さらなかった」
    「リンク……そんな、私は……」
    「この家でゼルダ様と暮らす日々が、俺にとってどれほど苦しいものだったか、あなたはおわかりになりますか?」
     手の内にある襟にくちづけると、リンクは苦しそうにひとつ唸った。ゼルダの香りが彼の鼻先を掠める。
    「これでもう、俺の気持ちはおわかにりなったでしょう……」
     満足ですかと問われ、ゼルダは唇を震わす事しか出来なかった。リンクはこのいきさつをゼルダの企みだと思っている。その上で、隠し持っていた想いをさらけ出しているのだ。
    「あなたはご自分でその衣裳を脱げない。それが出来るのは俺。で、よろしいのですね?」
     リンクは手に持っていた襟を、床に落とした。
    「脱がした後のお覚悟が、ゼルダ様はおありなのですね?」
     ゼルダの喉が鳴る。覚悟など、そんなものが出来ているはずがない。けれど、拒絶する意味を見いだせない。このまま彼の手の内に堕ちるのであれば、それでこそ本望ではないか。
    「男に服を脱がせて欲しいと願うなど、そう取られて然るべきなんです」
     ましてやそのような……と吐き捨てられ、リンクに見据えられながら震えているゼルダは、身につけている長い耳と相まって、今まさに捕食されんとしているか弱い小動物のようだった。
     こんなもの、今すぐにでも脱いでしまいたい衝動と、他ならぬリンクに脱がされる事実がゼルダを襲う。いくつかの段階を踏み越えてしまった感は否めないが、それでもこうなることを、彼と暮らしだした時からずっと夢見てきたのだ。だから断わる術などゼルダにはなかった。
    「構いません……あなたなら……」
     声を震わせながら訴える。
    「リンク。あなただって、なにもわかってはいないではないですか。なせ私があなたを追い、この村まで来たのかを……」
    「……ゼルダ、様……?」
    「すぐに脱がせて……覚悟なら、今しました……!」
     思い切って縋りつく。彼の胸元をぎゅっと掴んだ。
     お願いと押し付けた身体を息もできないほどに抱き締められたのは、そのすぐ後だった。

      🐰🐰🐰

     自分ではこの服は脱げない。
     それだけだと、ゼルダは思っていた。が、そうではないと気づいたのは、その直ぐ後のことだった。
     彼女の身体をきつく抱きしめていたリンクの手指が剥き出しの背中を滑り落ちた際、ゼルダの口から、自身も信じられないくらいに淫らな声がついて出たのだ。
    「ひゃあっ……あ、ああっんッ……!」
     自然と強く反り返る身体に驚いている間もなく、次の衝撃が襲った。ただ縫い付けてあるだけのはずの丸いしっぽにリンクの手が触れると、声は更に高くなったのだ。
     怪訝そうな色を目に乗せ、リンクはゼルダの様子を伺いながらふわふわとしたしっぽを弄ぶ。その行為に敏感に反応し、ゼルダは全身をおののかせた。
    「やっ、ダメぇ……しっぽ、触らないでぇ……あっあん……いやッ……」
     目尻を紅色に染めながら涙を浮かべ、息を荒らげて必死に言い募るゼルダに戸惑うリンクの鼻に、先程までの彼女の香りとはまた違う香りが届く。それはゼルダがすがりついて来た時に感じていたものだったが、徐々に強くなり、彼を惑わせた。いや、香りなのかも定かではない。リンクがそう受け取っているだけなのかもしれない。だが、その香りを嗅げば嗅ぐほどに冷静さを奪われ、まともな判断力が、硬い氷が水に戻るかのように溶けていく。視界がぐるぐると回るようだ。逆に見えてくるのは、下腹の奥底にしまい込んであった彼本来が持ちうる本能だ。熱くうねってとぐろを巻き、理性を食い尽くさんと牙を剥いている。
     嫌と言われれば言わる程に、彼の手は柔らかなしっぽを弄んだ。指先で摘み、揉みほぐし、手のひらで押しつぶす。これだけの反応を見せつけられて、どうして止められるだろうか。こんなことは有り得ないなどと囁く彼の『常識』は、鎌首をもたげた本能によって遥か彼方へと投げ捨てられた。淫れるゼルダが見たい。その思いだけがリンクを支配した。
    「リンクおねがい、もう、もういやぁ……」
    「嫌? もっと、の間違いでしょう……」
     逃げるようにくねる身体を強く抱き寄せると、リンクはゼルダの唇を奪った。思いとは逆のことばかりを零す口を塞ぎ、言葉ごと全て飲み込んでしまいたかった。
     これがふたりにとって初めてのくちづけだった。だが見えない力に押し流されるように行為を進めている彼らにとって、そんな事はどうでもいいものだった。重ね合わせたが最後、大きく口を開き、舌を絡め合い、互いが互いを喰らい尽くすよう、無心で貪りあう。それはまるで、腹をすかせ、からからに乾いた身体を引きずっていた旅人が、この世のものも思えぬ甘露をようやく口にしたかのようにすら思える有様だった。
     貪れば貪るほどに、頭の芯が痺れてゆく。ゼルダの柔い下腹に、ズボンの中で熱く立ち上がり、痛いほどに存在を主張しているリンクの男性器か押し付けられる。
    「はっ、ふわぁ……あッ」
     呼吸もままならないくちづけの間にも喘ぎは漏れる。
     自らの雄を誇張し、ゼルダに見せつけんとしている彼は捕食者そのものだった。長い耳を揺らし、美味しそうな香りを漂わせるウサギを腹の中に収めんとする、野生のオオカミ
     いたずらにしっぽを弄んでいた彼の手は、ゼルダの丸い尻をいいように撫でてキツく揉みほぐし、脚の付け根を指先でなぞってから、腿の間へと忍び込む。
    「……ひッ……」
     リンクの指は迷うことなくゼルダの最も弱い場所を押した。押して、撫でて、指先で引っ掻く。
     布の上からだというのに、彼女の秘密の場所がどのような状態なのかリンクには直ぐにわかった。それはもちろん、ゼルダにも。
     くっ、とリンクが喉の奥で笑う。
     途端、彼の指はその場所を覆っていた布を押し退け、ネット状の履き物の隙間を縫って、直接零れ落ちそうなほとに潤ったゼルダの秘密を直接刺激した。
    「あっあッ……ああああああ……!」
     リンクの背中に爪を立て、ゼルダは叫んだ。何かを訴えているようにも思えたが、最早言葉にすらなっていない喘ぎを上げ続ける唇は、互いの唾液でいやらしく光っている。
     ほんの少し力を入れただけで、リンクの節くれた指はあっさりとゼルダの中に収まる。まるでいざなわれているように彼は感じた。いや、実際誘っているのだ。か弱いウサギは、捕食者に食べられることを強く望んでいる。
     全てはこの衣装のせいだ。運命のイタズラでゼルダの元へとたどり着いた、ウサギを模した女性用の衣装。
     そうリンクが腑に落ちたのは、ゼルダの乳房のみを露わにしてベッドへと押し倒し、更に彼女の秘密を攻め立てている時だった。
     自分の手では簡単に剥ぎ取れた衣装が、ゼルダが襲い続ける快楽に身を捩りながら喘いでもビクともしない。あれだけ動けば布団と擦れてもっと乱れてもいいものを、彼が半端に脱がせたそのままに、彼女の身体に貼り付いている。シーツは拠れてしわくちゃになっているにも関わらずに、だ。
     何もかもが腑に落ち、これがゼルダのはかりごとではないと得心がいったのは、彼に残った最後の理性が成せた技だった。あとはもう、不可思議で抗いようのない力に飲み込まれ、流されてゆくしか、道はなかった。

     不思議な効力を携えた衣服。それはリンクにとって謎でも何でもなかった。なぜなら彼は、ゼルダを救う旅の途中、それらを幾つも手に入れていたからだ。
     殺人的な暑さを凌げるものや、寒さもまた然り。常より速く走れるもの、素早く登れるもの。防御力や攻撃力の上がるものまで上げ始めればキリがない。疑問を感じなかった訳ではないが、いつしか心強い味方として重宝するようになっていた。つまり、この衣装もその類のものなのだ。着けた者の身に変化をもたらすと言った点で、そう考えざるを得ない。
    「……ゼルダ様」
     リンクはゼルダの頬に自らのものをすり寄せると、荒い呼吸ながらも極力静かに囁いた。互いの肌が熱い。
    「相手が……俺で、このまま進めて……本当に、よろしいのですか?」
     理性はとっくに捨て去ったはずなのに、骨の髄まで染み込んでいた姫君をお護りするべき近衛騎士の精神が、こんな場面でするりと顔を出す。その反面、本能を露わにし野生の獣と化したリンクが、余計な事をと舌打ちをする。
     こうしている間にも息が切れる。口ではそう言いながら、その実目の前のひとが欲しくて欲しくてたまらない。既に下を脱ぎさりシャツを羽織っているだけの姿になっていた彼は、どくどくと血を巡らせ、早く貫かせろと激しく息づいている分身を片手で握り込み、無理やり黙らせた。
    「……いい、の……」
     声が震えているのは未知への恐怖なのか。それとも初めて知ったとめもどない愉楽のせいなのか。
    「いいの……あなたとなら……」
     ゼルダの指が彼のシャツの上を滑り、逞しく肉づいた胸を撫でる。たったそれだけでリンクの四肢が震えた。あの衣装は身に着けた者だけではなく、交わろうとする者にまで何かしらの影響を与えるらしい。
    「その代わり、聞かせて欲しいの。あなたの真実の胸の内を、あなたの、言葉で……」
     間近で重なる視線は熱く絡みついてくるものだった。潤みきった瞳が、真っ直ぐに彼を射貫く。
    「私は……何もかも捨ててここに来ました。欲しいのはリンク、あなただけだったから……」
    「……ゼ、ルダ……さ……」
    「私は、あなたが好きなの。もう……ずっと、ずっと前から……」
     リンクの喉が鳴る。今にも襲いかからんとする己の獣を必死に抑える。
    「あなたさえいいのなら、私を奪って。あなただけのものにして……私を満たして、あなたで、いっぱいにして……!」
    (これは、あの衣装が都合よく見せた幻覚なのか?)
     我が目を、我が耳を疑うが、違うとリンクは確信した。ここまで狂わされても自身の真実の胸の内だけは確かだったからだ。こんな状態になっても、やはり彼はゼルダを愛し、敬ってならなかった。ならばゼルダもそうなのだろう。
     全て許された。リンクはそう感じた。
     いや、元より全て許されていたのだ。ひたすらに近衛騎士てあらんとゼルダと距離を置いていた自分に、あの衣装が真実を教えてくれたに他ならない。
    「俺、も……っ」
     ますます息は上がるばかりたが、はっきりと伝えなくてはならない。今を逃したら、きっと次はない。
    「俺も、ゼルダ様をお慕いしておりました。あの頃から、ずっと……」
     期待にゼルダの瞳が煌めく。まるで星の海のようだ。リンクは深く息を吸い空っぽの肺を満たすと、ひと息に告げた。
    「愛しています、ゼルダ様。深く、深く、心の底から。この身の全てを捧げても惜しくはないほどに」
     ゼルダの腕が、汗の浮いた彼の首に絡みつく。大きな瞳から一筋だけ涙が零れた。
    「ならば奪って……! 私を、いますぐに」
     リンクは素早くゼルダにくちづけると、彼女の纏っていた衣装を剥ぎ取った。黒く長い耳と片方のカフスのみを身に着けて横たわるゼルダの姿に、思わず喉が鳴る。大きく膝を割り腰を進めると、彼女の入り口に涎を垂らし続けている自身をあてがった。
    「奪います。あなたは、俺のものだ」
     返事をする間もなく侵入して来た圧倒的な質量に、ゼルダは大きな瞳をめいっぱい見開く。
    「んっ……あ、ああああああ……リン、あっあぁ……ッ」
     奪う、と口にしたリンクに迷いはなかった。彼は真っ直ぐにゼルダの奥へと押し進み、衣装の効力でたっぷりと潤い解れていた彼女はそれを難なく受け入れる。
     初めてならば痛みを伴ったであろう強引さも、全てが気も遠くなるような快感へと直結し、ゼルダを翻弄した。
     だが、それはリンクも同じだった。少しでも動けばたちまち達してしまいそうな程の快楽。なのに彼の腰は止まることを忘れたかのように動き続け、解放される一歩手前の状態に彼を置く。
     おかしくなりそうだ。と、ふたりは感じた。
     でも止められない。それも、わかっていた。
     ゼルダはリンクの背にしがみつき、汗をふくんだシャツを握りしめるしかなかった。リンクはゼルダの身体を逃がさないとばかりに深く抱え込み、彼女の耳に口を押し付けて好きだと言い続けていた。
     肌と肌がぶつかり弾ける音と、淫靡以外の何物でもないぐちゃぐちゃと濁った水音。荒い呼吸。好きだと繰り返し彼女の名を呼ぶリンクの声。悲鳴に近い喘ぎをとめどなく零しながら、時折彼の名を呼ぶ掠れきったゼルダの声。激しく絡み合う、若い男と女。
    「あ、あんっ……あ、あっああ……あ」
     自身の身体に何が起きているのか理解が追いつかず、ぼろぼろと涙を流していたゼルダが「ダメ!」と叫んだ刹那、全身を硬直させて仰け反る。それが合図となり、限界寸前を保ち続けていたリンクは、ゼルダの中に一気に欲を解き放った。
    「う、わ……あ、ああ……」
     何かが爆発している。としか形容出来ない感覚を、リンクは味わっていた。止めどもなく爆発し続け、不規則な収縮を繰り返しているゼルダの中に無限に吸い込まれてゆくようだった。なかなか終わらず、リンクは自身の身体を支えきれずにゼルダに覆い被さると、彼女にしがみつき四肢を痙攣させながら、やがて長い射精を終えた。
     激しく脈打つ心臓の音が耳にうるさい。きっとこれはふたり分の鼓動だ。極限まで己を追い詰めてここまでたどり着いたふたりが、胸を合わせているからこそ感じられる、生命の在処の奏でる音。
     身体を起こすこともかなわず、リンクはその音を聴いていた。ゼルダもきっとそうなのだろう。今だ繋がったまま身動ぎもしないひとときは、ひどく満ち足りたものだった。が、そんな時間を、ゼルダのすすり泣く声が遮る。
     なんとか身を持ち上げたリンクは、ゼルダを覗き込む。虚ろな瞳に涙を貯めて、彼女は泣いていた。
     喜びと驚き。自身の身の上に何が起きているのか理解し切れないが故の混乱。そして絶望からくる涙。
    「わたし……私、初めて、なのに……」
     なのに何故、と絶句するゼルダに、リンクは再び頬を寄せた。
    「俺もです。俺も、初めてでした」
     知識の中にある『初めて』とはあまりにかけ離れた体験に、ゼルダは戸惑っていた。初めての者が、特に女性が、意識も朦朧とするほどの快楽を得るなど、聞いたことはない。
    「全ては、あの衣装のせいです」
     低く落ち着いた声がゼルダの心に沁み入り、落ち着きをうながす。
    「そうでなければ説明がつかない。俺もおかしくなったし、現にいまもまだおかしいままです」
    「……リンク、も……?」
    「ええ」
     あれだけの射精をしたのにも関わらず、彼の分身はゼルダの中で硬く立ち上がったままだった。初めてのゼルダは気づかないだろうが、一度萎えて然るべきなのだ。なのに息さえ整えば、まだ幾らでも続けられそうな気すらしている。
     自分だけではないと知り少しでも安心したのか、ほうと息を着くゼルダの動きと共に、彼女の頭の上で黒く長い耳が揺れる。つい先程まで、攻め立て続けるリンクに翻弄され、揺れていた可愛らしいウサギの耳。
     リンクはついと手を伸ばすと、それに触れた。ただ愛しく可愛らしいと感じるものに触れたいだけだったのだが、それがいけなかった。
    「……、きゃ……ッ」
     初めは動いた自分に反応しているのかとリンクは感じた。だが爪先で耳を引っ掻くと、事態は一転した。ゼルダの『中』が、強く締まったのだ。
    「あ、耳……っ」
     ぞくぞくとした震えがゼルダからリンクに伝わる。彼女の内側からも、彼自身に感じているのだと告げて来る。つまり、しっぽと同じなのだ。
     そうと気づくと、リンクの手は止まらなくなった。ウサギの耳を弄りながら、本物の彼女の耳に口を押し当て、
    「気持ちいいのですか……?」
     と、問う。
     反応を見れば聞かずともわかる。けれども聞かずにはいられない。目の前のひとがか弱く震えるウサギならば、食べてしまえと本能が囁く。
    「あっ、や、いや……リンク、そんなことされたら……」
     嫌と口にしながらも腰が揺れている事を、ゼルダはわかっているのだろうか。欲しいと、もっと欲しいと強請っている事を、気付いているのだろうか。
     指では長い耳を弄りながら、舌を彼女の耳の中にねじ込むと、さっきまでぐったりとしていた身体がびくんと跳ねた。リンク自身を収めている彼女の秘密から、じゅわりと熱い液体が溢れる。
     胸を弾ませながら、もの欲しそうに見上げてくる潤んだ瞳。リンクの腹の底が熱くなる。どうせ狂わされたのならば、まだこのまま狂っていてもいいではないか。
    「俺は、あなたを奪った。あなたは俺のものだ」
     ゼルダが微かにうなずく。
    「ならばあなたも俺を奪えばいい。好きなだけ自由にすればいい……」
     白い喉元が、ごくりと音を立てて上下した。
    「好きな……だけ?」
    「……そうです。あなたの、好きなだけ。幾らでも……」
     どうしたいですか? と問う声を、ゼルダは夢見心地で聞いていた。驚きはしたが嫌ではなかった快楽の渦に、再び飲み込まれてもいいのだ。まだ足りない。もっと欲しいと訴えている身体の声に、素直に従ってもいいのだ。そうしようと、リンクが誘ってくれているのだから。
    「……リンク」
    「はい」
    「………………もっ、と……、して……」
     ようやく空気を震わすほど小さいおねだりだったが、リンクの耳にははっきりと聞こえた。もっとあなたか欲しいのと続く言葉に、彼はくちづけでこたえた。
     白く柔らかい彼女の脚を肩に担ぎ上げると、リンクはゼルダの手を取り、シーツに縫い付ける。
    「……っ、ああああああっ……!」
     身動きも取れぬ苦しい姿勢で、更に奥まで貫かれ、ゼルダの目の前にいくつもの星が弾けた。
     本来であれば、何度も回を重ね、いくつも経験をし、ひとつずつ覚えていく全ての段階をすべて飛ばして、ふたりは身を重ねる悦びを知ってしまった。知ってしまったからにはもう、後戻りは出来ない。互いで互いを奪い合い、与え合うしかないのだ。
     過ぎた快感に焦点の定まらぬ視線を漂わせているゼルダの唇を、リンクは塞いだ。途端に絡まり合う舌に呼吸もままならないが、それでも構わなかった。もっと、もっとあなたが欲しい。白く塗りつぶされてゆく意識の中で、ふたりはそれだけを考えていた。

     二度目の終わりを迎えても、やはりリンクが衰えることはなかった。三度目にゼルダを背後から貫きながら、彼はまだ残っていた耳とカフスを彼女の身体から取り去った。思った通り、三度目が終わった時点でようやく部屋は静かになった。陽はすっかり傾き、オレンジ色の光が夜のそれと入れ替わろうとしていた。

      *

    「あの衣装……どうしましょう……」
     ふたりで横たわるベッドの上。リンクの胸に甘えながらゼルダが訊く。あの衣装のおかげでリンクと結ばれることが出来た。ならばもう必要ないのではないかとも思うが、こうなれた記念と手元に残しておいてもいいのではとも感じる。
     そんなつもりで訊ねたが、彼から返ってきた返事はまた別の思惑があるものだった。
    「……もう、着ませんか?」
     それは、と戸惑うゼルダの身体の稜線を、リンクは手のひらで撫でた。
    「着た方が……?」
    「とても、可愛らしかったので」
     ただの衣装ではないのだ。着たらどうなってしまうのか良くわかった上で、リンクはもう着ないのかと訊いている。
     ぞくり、とゼルダの背中を何かが駆け上がった。今日の経験をもう一度味わいたいと願っている自分が、確かにいる。
    「あなた、が……脱がしてくれるのなら……」
    「もちろん。あの衣装を身に着けたあなたを見られるのも、それを脱がすのも、俺しか出来ないでしょう?」
     ゼルダはふわりと笑った。つられてリンクも笑う。
     どんなかたちであれ幸せな結末を手に入れたふたりは、喜びのままに笑い合い、身を擦り寄らせてくちづけを繰り返した。この夜が明ければ新たな明日がやってくる。そこにはもう、今朝までのふたりはいない。村はずれの小さな家に住んでいるのは主と従者ではなく、恋人であり、やがて夫婦となるふたりなのだから。

      ***

    『この服を脱ぐには、あなたを心から愛している人の協力が必要です』

     衣装が収められていた箱にあった紙のこの文章が変わっているとふたりが気づくのは、やはり次の日になってから。始まったばかりの蜜月の夜に夢中のふたりの瞳には、お互いしか映っていない。
     すべては約束されたハッピーエンド。百年前の本を手に入れた時から始まっていた、小さな奇跡。

    『ね。上手くいったでしょう?』
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