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    amampanda

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    テスデイ
    テスカの独白
    暗いような甘いような短文

    大丈夫でしたら、どうぞ

    手を離してやれない 黒のテスカトリポカは戦いの神であり、戦う意思のあるもの全ての味方だった。
     単純な善悪ではない、血を流さず、逃げ惑い、正義を疑うものなどは戦士などでは無い。そんなものの召喚には絶対に応じない、だが、戦士なら応じてやらんこともない。
     ただし、神霊がサーヴァントになることは本来不可能だ。依代を用意すれば可能かも知らないが、どう考えても手間であったし、そもそも、神に望みは無かった。願いを叶えてもらう必要もなければ、聖杯戦争に参加する意義はどこにも無い。
     即ち、実際のところ魔術師がどんな触媒を使用しても、テスカトリポカを召喚するということは有り得なかったのだ。
     彼が特別の興味を持たない限りは。

     恐らくそのことを知っていたのかどうかは定かでは無いが、異聞帯──ロストベルトと言われる本来なら剪定されてしまった歴史の中に、テスカトリポカを召喚をしようとしていた者がいた。
     遥か遠く外宇宙の遺物によって、変質してしまったセムの男。人理から弾かれているために、土地を利用して、呼び出そうと術式を展開していることにすぐに気付いたし、冠位のサーヴァントを呼び出すには些か心許ない魔力量だった。
     そして、もちろん、一目見ただけで「人類」では無いことはわかった。英霊の座から見たその光景はまさに「虚」が人の形をしていたのだから。
     最初は応じる気などさらさら無かったのに、気まぐれに千里眼で見た男は、しなやかな野生の獣のような美しさを持ち、爛々と輝く紫の瞳の一切の迷いない鋭い眼光に、息を呑んだ。
    ───コイツは、戦士だ。間違いなく。
    そう思った時には、人間の器を作り、そいつを参考にした当世風の装いをさせ、召喚に応じていた。
     姿を見せれば、少しだけ驚いた顔をしたデイビットは、淡々とテスカトリポカに自身の計画を語ってきた。
     あの時ほど、愉快な気持ちになったことは恐らくケツァル・コアトルを罠に嵌めてやった時以来だった。
     惑星が砕ける時なんて、そう何度も見れるものじゃない。それだけで既に召喚に応じた価値は十分だった。
     デイビット・ゼム・ヴォイドは空洞であり、暗闇であり、それでも「人類」であったときの記憶も捨て置けず、己がすべきと思ったことが滅亡であっても果たそうと全てを注ぐ姿はまさに思った通りの本能のままに生きる獣のようだった。
     テスカトリポカはその生き様を好ましいと感じ、例え人理の敵になろうとも、最後までこの孤独な男と共にあろうと決めた。
     公平な神が聞いて呆れる。
     今、思えば、俗に言う一目惚れだったのかも知れない。
     



     「テスカトリポカ……?」
     不安げな声で、名前を呼ばれて一気に意識が浮上する。隣にはたった一つの焚き火を囲む元マスター。
     以前もかなり分かりやすかったが、更に感情が表に出てくるようになった。その変化も好ましいと思う。
     「どうした?デイビット、」
     「いや、その、起きたら、いつもは……」
    すぐに気付いてくれるのに、と徐々に羞恥を感じたのか、消え入りそうになった音はしっかりとテスカトリポカの耳に届いた。
     焚き火に照らされただけでは無い頬の赤みと、彼の年齢より幾分か幼なげな仕草だった。
     それを愛らしいと感じている時点で相当焼きがまわっている。まさに神が起こしたバグだ。
     死したマスターの魂を自身の領域に囲い込んで、休息を取らせる。本当ならたった一回の縁に、こんな過剰なほどに手をかけてやる必要は無い。そんな事は自分がよく分かっている。
     それでも、外宇宙の天使どもに取られるくらいなら隠してしまおうという感情はどう足掻いても無くせなかった。
     冗談めかしくいつか招待しようなんて、言ったことはあったし、退去する直前も「死者の楽園で会おう。」なんて格好をつけて消えた。
     デイビットが何処まで信じていたか分からなかったが、彼がORTの棺に落ち、肉体が水晶になり砕け散った瞬間、迷うことなく魂を攫った。
     「アイツに魂までくれてやる必要は無い。」表向きはそう言ったが、ミクトランパを眺めながら「本当に招待してくれるとは思わなかった。」と嬉しそうに笑うから、どうにも離してやれそうに無かった。
     「悪りぃな、オマエのことを考えてたんだ。許せ。」
     そう言って抱き寄せれば、大人しく腕に収まってくれる。教育の賜物だ。
     次の戦いまでと時間は有限だが、この愛しい男を陥落させるには十分に思えた。
     願わくはこの信頼と親愛を、恋情と性愛に書き換えて、永遠に切れない鎖で繋いでみせる。
     何度生まれ変わっても、何度でも迎えに行く。
     初めて生まれた感情、この薄暗い執着をいっそ心地よく感じながら、神はデイビットの額に口付けした。



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