夏の日 ◆ 灰語レイちりん──と。
風鈴が鳴った。
窓から、爽やかな夏の風が入ってくる。
その風と共に、父上と──竈門炭治郎の声も運ばれてきた。
中庭で神楽舞いの稽古をしているのだ。
煉獄千寿郎は、纏めていた煉獄家の鬼殺資料を一旦机に置くと、暫し、風鈴の音に重なる、自分にとって最も大切な二人の者たちの笑い声に耳を澄ませた。
無惨を討った後、呼吸の技は神楽舞いとして生まれ変わった。
各々の呼吸の使い手が、技を取り入れた神楽舞いを完成させたのだ。
煉獄家の《炎の呼吸》の神楽舞いは父上が完成させた。
最後の務めだと笑った笑顔は、幼き頃に──母上と兄上がいた頃に見た笑顔だった。
──完成した全呼吸の神楽舞いを、一堂に会して披露することになったんです。輝利哉くんのお屋敷で──
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