Happy Halloween four Rabbit‼︎Happy Halloween four Rabbit‼︎
時はハーツラビュルのお騒がせコンビエーデュース事、エースとデュースがナイトレイブンカレッジの学舎を卒業して数年後の事。薔薇の王国内にある警察署では、今年念願の警察官としての第一歩を歩み出したデュースが苦悶の表情を浮かべていた。
というのも、署内では今月末に迫ったハロウィーンに向け詐欺犯罪撲滅の為のイベントが開催される事に決まった。新人警察官のデュースも、仮装をしての参加を言い渡された所だ。ハロウィーンでの仮装は、ナイトレイブンカレッジ時代に三年間して来たので慣れている。学園時代のハロウィーンでは、期間中観光名所と化すナイトレイブンカレッジに訪れる来校者の対応もこなして来たデュースには、上司からの期待の声も掛かっており、デュースとしてもまるで童心にかえった様に、ハロウィーンに向け日々心がそわそわと浮き上がっていた。
ハロウィーンに着る仮装衣装を用意されるまでは。
「え? なんですか? これ」
ブルーのダイヤチェックのジャケットには金色の丸ボタンや、ラッパを吹くうさぎが描かれたロゼットがあしらわれている。ジャケットよりやや濃いブルーのストライプ柄とダイヤチェック柄のパンツにはデュースを象徴するスペードやトランプのスートを形取ったワッペンが散りばめられ、コロンとしたシルエットの靴に、ふわふわしたうさぎの耳が生えたハット。この衣装には、見覚えがある。
「君が、時計の街のラビットフェスで優勝した時の衣装だよ。母君に問い合わせたら喜んで送ってくれてね」
母さん……なんでまだ衣装があったんだ……。
上司に渡された懐かしいラビットスーツを眺めながら、デュースは思わずそう口に出しそうになっていた。
デュースの苦悶の理由は他でもない、まさか十六の時に着たラビットスーツを、社会人になってから再び着る事になるという羞恥の事態に対して、だ。あの時も子供の頃に着たデザインを再び仕立て直したラビットスーツに気恥ずかしさはあったものの、学園から一緒にやって来た友人や先輩までもが一緒にラビットスーツを着てくれ、ラビットフェスに参加してくれた。それが素直に嬉しかったし、何より母を喜ばせたい気持ちもあった。だが、今回は何故またこの衣装を着なくてはならないのだろうか。
デュースが苦悶と疑念に満ちた表情を浮かべていると、上司が再び口を開いた。
「この衣装を着た君がラビットフェスで大活躍していたという話を、解析課の君の同期のトラッポラくんが教えてくれてね。今回の仮装も一緒に参加してくれるというから、楽しみだね」
やっぱりだ。
こんな辱めとも言える仕打ちを受ける羽目になるとは何か理由があっての事と思っていたがやはりこの件には、あの男が絡んでいる。デュースのナイトレイブンカレッジ時代からの悪友で、憧れの警察に入所してからもどういう訳か同期になってしまった腐れ縁、エース・トラッポラの所業に違いない。断ろうと口を開こうものの、上司はデュースのラビットスーツ姿を、部署内は勿論の事署内の多くの人が楽しみにしていると言うし、昨年は恐ろしいミイラ男やスケルトンの仮装に力を入れ過ぎてしまい、街の子供たちを怖がらせてしまったので、今年は路線を変えたいという話だった。
期待をされるのはやぶさかでは無いが、二十代にしてうさぎの尻尾と耳とはやはり恥ずかしい。十代の少年の頃ならばデュースのラビットスーツ姿を母親も写真を見せた学園の先輩もかわいいと褒めてくれた。しかし、心も体もあの頃よりすっかり大人になったデュースがこの衣装を着て、あの日の様な姿で居られるだろうか。
それに、今回は一緒にエースが居る。ラビットフェスがあった時、一緒に行きたいと言っていたエースは結局部活動が理由で来れなくなってしまった。お土産は使ってくれたものの、ラビットフェスの話や、デュースが着たラビットスーツの話はそういえばあまりした記憶が無い。なのに、活躍をしたなんて上司に話していたなんて。エースは一体どういうつもりでこの衣装を今更引き摺り出したのだろう。今更揶揄うつもりなのだろうか。今すぐにでも問い正したい気持ちでいっぱいになるが、未だ勤務中だ。
ハロウィーンについての打合せは前日の勤務時間終了間際、およそ一時間程で手短に行われた。事前に配られていた行程の確認と、衣装の確認。集められた会議室にはエースの姿も勿論あった。
「よ、うさぎのデュースくん」
「逢って早々喧嘩売ってんのか? お前は明日は何の仮装をするんだ?」
「オレはこれ、定番のヴァンパイアマントです」
バラエティーショップで売っている服を指差し、エースは悪戯に笑う。今年は怖い仮装は避けるといいながら、定番の仮装は有りなのかとデュースは顔を顰める。しかし、他の人なら何を着ていてもいいが、デュースだけにこんな凝った衣装を着せ自分は市販品で楽をしようというエースの魂胆は気に食わない。
「僕だけうさぎの格好をさせて! お前も学生時代の衣装何か着ろ。えーっと、あの、妖精をもてなした時のとか、そうだ。ハロウィーンのスケルトンとか」
「はぁ? 用意出来ねぇだろ流石に。あーでも、アレなら」
翌日ラビットスーツを着たデュースの隣にやってきたのは、名目としてはヴィル・シェーンハイトの護衛役で着いて行ったという化粧の街で行われたタピルージュに出席した際にエースが仕立てて貰ったという服だった。
「それは仮装というより正装じゃないのか?」
「この服は狩人をイメージして作られたらしいから、これは立派な仮装」
しっかりとヘアメイクも済ませ、エースは嬉々とした表情でデュースの隣に立っていた。写真で見せて貰ったあの日のヘアセットよりは少しばかり大人になったエースに似合う様こなれた感じだが、目元には懐かしいハートのスートが描かれていた。
「ほら、子供たちがお菓子をくれなきゃ悪戯するぞってやってくるよ」
「おう」
エースとデュースの立っていたお菓子のプレゼントコーナーは大盛況で、あっという間にあたりは薄暗くなっていた。ハロウィーンのイベントは、夕方までお菓子を配ったり、音楽を流したり、子供も楽しめるイベントなのだが、夜は一転ランタンの灯かりの中フードやドリンク、アルコールを楽しめる大人のイベントに変わってゆく。デュース達も勤務時間が終わり、この後は警備にあたるスタッフとの交代の時間だった。
「スペードくんお疲れ様。いや、トラッポラくんも好評だったね」
「久し振りにこの衣装を着て最初は恥ずかしかったんですけど、似合っていると言われて安心しました。子供は素直だから、かわいいっていうのも褒め言葉をして受け取っていいですかね?」
上司の言葉に思わず頬を緩ませると、エースが横からやっぱり大きな口を挟んで来た。
「大成功だったでしょ? オレのアイディア。じゃあ、特別ボーナスへの査定しっかりお願いします、なんて」
「コラ! エース」
デュースが低い声をあげるも、上司は笑いながらその場を去ってゆく。ランタンの薄明りの中隣に立つエースを睨み上げると、エースはほんのりと頬を染めて小さく口を開いた。
「……似合ってんじゃねぇの?」
「お前は揶揄うのか?」
「……いや、あんとき言えば良かったな」
珍しく消え入りそうなエースの声は、まさかハロウィーンのゴーストの仕業だろうか。薄明りで互いの表情がよくみえない事を頼りに、デュースは思い切って口を開いてみた。
「大人になったエースは、少しはかわいいって言ってくれないのか?」
「……は?」
エースのキャンディーみたいな瞳が、大きく見開かれる。やがて薄明りの中でもわかるぐらい頬も同じチェリーレッドに染めて、エースは甘い声を返してくれた。
「……かわいい、」
「……ッ、ー!」
心臓をぎゅっと掴まれた様な熱と同時に、舌先に甘い痺れを感じる。少し舌で舐ると、その正体はキャンディーの様だった。目の前ではエースがジャック・オ・ランタンのキャンディーの包み紙をひらひらとさせている。
「なぁ、ちょっと寄り道して帰んねぇ?」
エースに放り込まれたジャック・オ・ランタンの顔を模したキャンディーの甘い味が口いっぱいに広がる。甘くて、喉の奥まで焼けてしまいそうだ。さっきまで耳まで赤く染めていた癖にエースは澄ました声をあげ、キャンディーでまろくふくらんだデュースの頬をそっと撫でた。エースの指先は、チョコレートみたいに甘い香りがする。それは、目元に描かれたカカオブラウンのハートの所為だろうか。それとも。
「お菓子をくれなきゃ、悪戯しちゃおっかな? デュースくん」
デュースが、エースと今よりももっと甘い関係になるのは、今よりももう少しだけ季節が進んだ先の話だ。
end
オンイベオフイベ共に楽しい数日間をありがとうございました!
タピうさかわいいですよね。タピうさ🥰
もっとたくさん書きたいです!