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    ハイドウ リラ

    @rirah_lyrical

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    ハイドウ リラ

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    推し美容室に行ったら担当美容師の後輩のイケメン(とその客)に情緒を狂わされた話
    エスデュ
    らくがき
    何でも許せる人向け

    推し美容室があるオタク女(モブ)の話 私には推し美容室がある。
     今までは美容室なんて、その日の気分と次の目的地までの時間が合うところをその週の木曜日頃ネットアプリで探し、マツエク、美容室と買い物を土曜日に詰め込み、日曜日に所用というか一大イベントを過ごすのが常だったので、特に美容室に推しいうものを持ったことは無かったが、ある時偶然、この美容師のマジカメに辿り着き『#推しカラー』という投稿に目が留まってしまったのだ。
     ウィンクをしながら写真におさめられていたのは、推し美容師の後輩、エースくん。こっくりとしたテラコッタカラーの裾の一部を、その時はこれまた夜空を切り取った様な深いネイビーブルーに染めていた。
    『さり気ない推しカラーも任せて! 平日のお仕事中は、パパっと隠せるイヤリングカラーも得意です!』
     そう言いながら、ウェーブの掛かったボブヘアの彼は、鮮やかなオレンジの髪の中に秘密の色を隠していた。その投稿に惹かれ、私は次のイベントの前の日マツエクが終わった足でその美容室に向かっていた。
     私の担当になった鮮やかなオレンジ色の美容師の名前は、ケイト・ダイヤモンド。けーくんって呼んでね、と言われたのでそれから遠慮なくそう呼ばせて頂いている。
    それから二年。推し色のインナーカラーを左右別に入れろとも、平日はとにかく乾かすだけで保てる髪にしろとも、たまにどこどこへ行った話や、何かを飲み食いに行った話以外、休みの日は何をしているのか、ヘッドマッサージの後の、『ちょっと! 私ちゃん! 頭皮も首もゴリゴリだけど?! 一体何時間パソコン仕事頑張ったわけ~?』という驚愕にも、「あはは、うん、まぁ」でやり過ごす私とも程よい距離感で接してくる。髪型は扱い易く、髪色はいつも可愛い。
     そんな、けーくんの手厚いサービス以外にも、実はこの美容室に行くととても栄養価の高いイベントが発生するのだ。


    「エース、サイド切り忘れてるぞ」
    「どこ? あー、だから、この左サイドの頬にあたる髪はオレのこだわりなワケ。お前の顔こっち側にちょっと重みある方が良く見えるんだって。右にスートあった頃の名残かな? つむじの向き? とにかくー! ヘアスタイルはこれで完成。いーから、オレを信じて、な?」
     やや不貞腐れた物言いから始まった会話だが、 最後はお決まりの様にとびきり甘い。ストレートで用意されたアイスティーに、ミルクをひとひら入れてかき混ぜ飲み干すとちょうどいいくらいだ。
     甘い声をあげていたのは、いつかけーくんのマジカメに載っていた後輩美容師のエースくんだ。時々けーくんのマジカメに登場したり、時々ドライヤーのサポートに入ってくれる。明るく、話題も豊富で先輩相手にも物怖じしない、しかし愛嬌や年下男子特有の可愛らしさも忘れていないので、結果可愛がられる世渡り上手なタイプ……なのだと思う。
     ある日、恋は苦戦中。なんて、隣の席に座っていた若い女の子の前で肩を落としていたのを盗み聞くまでは。
    「そ、そうなのか? その……こうすると時々耳に掛けないといけなくて」
    「それがいいんじゃん! えっと……じゃなくて、とにかく……似合って……るから、パパっとシャンプーさせてくんない? オレ今営業時間外なんですけど」
     エースくんとやいやい話している男のお客さんにも見覚えがあった。最初にけーくんのマジカメでエースくんを見た時、後ろの方に映っていた夜空の様な藍色だと思う。
    2枚目にスワイプすると、#同窓生 #トリートメントモデルに来てくれました #エースちゃんシャンプーデビューに向け相方♡と特訓中。というタグが着いていた。このネイビーヘアの美人な男の子は一般の方らしく名前は知らない。だが、アシスタントデビューしたエースくんのマジカメに度々登場しているし、けーくんのマジカメにも登場している。
    「あ、わ、悪い。僕がこの日しか休みがないって言った為に……というか、僕は他の人に切ってもらうでも良かったんだが」
    休みの日なのに、わざわざ出てくるんだ。
    「はー? 何言ってんの? 前、言ったでしょ? 他の人なんて、ぜってーダメだかんな!」
    触らせちゃ、ダメ。なんだ。妙に何か含みを帯びた様な物言いに、思わずそちらに視線を送ってしまう。エースくんは、デュースくんのサラサラの髪の毛を触りながら、恨めしそうな視線を掌の中の髪の毛を眺めている。
    「うっ……やっぱり前言ったみたく、ハサミ癖とか、あるのか?」
    「そーそー、ぜってー触らせちゃダメ」
    「うっ……分かった」
     なにがどうわかったのか、絶対わかっていなさそうな返事をするデュースくんに鏡越しに熱視線を注ぐエースくん。もうこの展開に気もそぞろになってきたところで、エースくんは深いため息を吐き、デュースくんの肩に手を置いた。と、思ったら今度はくちびるが頬に触れるんじゃないかと思うぐらい顔を寄せている。
    「わかったぁ? ……じゃ、シャンプーいこっ」
    「……うん」
    なになになんだろう。今の含みは。間は。きっとふたりだけにしか解からない何かを感じ、わたしは宇宙を飛ぶ猫の様になりながら、ぼんやりと鏡越しにエースくんに手を引かれて、歩くデュースくんを眺めていた。
    「えーっと、……ちゃん大丈夫? おーい」
     気が付くと、けーくんが心配そうに私の名前を呼んでいる。何億光年か先の世界に飛んでいた私はふらふらになりながら、ふたりに遅れてシャワーブーズで目を閉じた。
    「なぁ、……きもちい?」
     フォッ!!???
     今 何 て 言 っ た?
     くちゅくちゅというねっとりとしたものを孕んだ水音と一緒に、エースくんの甘い声が響く。
    「んっ……んっ……んっ……きもち、えーすの、……ゆびっ」
    「お、……いった? きもちいね」
     ゆび。いった。ゆび………。もう私は何が何だかわからない儘心のキャンバスに感情の全てを書きなぐっていた。ああ、この情熱で仕事を何百日分もこなせればいいのに。仕事だけじゃなくて、あれも、これも。
     狂おしいまでに踊り狂わされた私は、ぼんやりする中髪の毛を飛び切り可愛く巻き上げて貰い、来月もデュースちゃんと同じ日に予約しちゃわない? というけーくんの悪魔の囁きにそそのかされ、トリートメントの予約をして帰った。


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