Touch「じゃあ、やりますね」
炭治郎が言った。
二週間に一回炭治郎と杏寿郎の間で行われるそれは、まるで儀式のようだった。
風呂上がりの皮膚と爪が柔らかくなっている時がいい、と言われているので、風呂に入って髪を乾かしてから臨んだ。
炭治郎の職業はネイリストだ。男性ネイリストはまだ少数だが、明るく人好きのする性格でセンスと技術もあり、固定客が少なくない。
杏寿郎は教師なので流石にネイルはできないが、甘皮の処理や爪をヤスリにかけて保湿するのはできる。
炭治郎は定期的に杏寿郎の爪の手入れをした。
「甘皮を取っていきます」
炭治郎はニッパーで少し伸びた杏寿郎の爪の甘皮を切り取っていく。
初めて甘皮を切られていった時は正直少し怖かった。少しでも間違えば肉も切られそうだからだ。もちろん、炭治郎を信頼していたが、実際やられると。
2293