最悪軸たいみつ③ 12月15日は、先日大寿と三ツ谷が行き合った美術展を再訪することで意見が一致した。あの展示室での抱擁のあと、終盤の作品をまともに見れていなかったからだ。帰り際、仕事の処理に少し手間取り、待ち合わせ時間ちょうどの到着になった大寿を、三ツ谷は入口につながる中庭で寒さに肩をすくめて待っていた。マフラーに埋まった口元と薄く色づいた鼻先は7年前と変わらないあどけなさをたたえている。大寿は待たせたことを詫び、そのまま手の甲で冷えた三ツ谷の頬を撫でた。「ここ外だよ」。咎める声に表情を変えないまま「関係ねえよ」と返すと、三ツ谷は呆れと愛おしさが入り混じったような表情で大寿を見てほほえんだ。
「……おまえ、いつから絵なんか見るようになった」
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