すべては君の想うまま桜の花びらが頬を撫でるなんて
夢みがちの乙女じゃないんだから
でも
確かに当たったのだ
感触も覚えてる
何年も眠っていたココロが、あの子によって
「雑渡さん?
包帯巻き終わりましたよ」
どんぐり眼の少年がのぞき込む
青年というにはまだ幼い
そんな面影を残す不運の星の子こそ、忍術学園保健委員会委員長の善法寺伊作だ
「ありがとう、伊作くん」
丁寧に巻かれた頬の張り具合を確かめる
今まで触れていた指先の感触が名残りおしかった
「きつくはありませんか」
屈託のない笑顔を見せた
またココロの琴線が震える
そっと仕舞って蓋をしておく
「大丈夫だよ、本当にありがとう」
「よかった。お茶淹れますね」
「うん」
今日は手土産にカステイラを持ってきたのだ
何か理由を付けては手土産を持って彼の元を訪ねるようになった
大義名分はきちんとあるが、やましい名物の方が大いにあるかもしれない
それくらい彼の笑顔は心地よかった
この小さな安息地を守れるなら何でもよかった