観音坂、森へ1
「お疲れ様でした。おっ、お先に失礼します⋯⋯」
お疲れ様でしたぁ、と間延びした上司の声を背中に受けて足早にエレベーターへと向かう。下の階への行先を示すボタンをカチカチと数回押しながら大きく息を吐く。
明日は休みだ。六連勤明けの、休みだ。やがてポンと柔らかな音と共にエレベーターが到着し、一階のボタンを押す。
「待って待って!乗りまーす!」
手を上げて駆け込んできた同僚に会釈をする。
「やっと金曜日ですねえ。今週もハードだったあ。ってかなんか観音坂さん、元気に見えますね!」
そう言って顔を覗き込まれたため曖昧に笑って受け流す。同僚はそれきり黙って携帯を見始めた。
明日は休み。休みなのだ。一二三に怒られてもいい。今日は贅沢にコンビニでアイスを買ってしまおう。マイリストに入れたままの海外ドラマの続きを一二三と観て、酒を飲んで、昼まで眠ろう。
7600