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    boro_hu

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    boro_hu

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    ユゴ(→)レオ。まだ続く。

    ユゴレオ「気高いくんのこと好きなの?」
     そう言い放ったのは人の多い食堂の片隅に座るイェルシィだった。彼女の前の席に座っていたユーゴは目を瞬かせてから手に持っていったカップを静かに置く。
    「ええと……? まあ、はい」
     気高いくん――気高いを口癖とする幼馴染のひとりであるレオの顔を思い浮かべる。
     突拍子のない問い掛けだが好きか嫌いかであれば、勿論好きだ。そうでなければずっと幼馴染として隣にいることなどできない。
     しかし、イェルシィはユーゴの答えに満足いかなかったらしい。目を瞬かせてから首を捻る。
    「うん? あーあー、そっちじゃなくて……ラブ?」
    「ラブ?」
     意図が掴めず思わず問い返す。困惑するユーゴの代わりのようにイェルシィの隣に座っていたマクシムが眉間に皺を寄せた。
    「こら、イェルシィくん。ユーゴくんが困っているだろう。それに聞かずとも彼らが固い絆で繋がれていることは一目でわかると思うがね」
    「そうじゃないんですって〜! マッキ先輩にちぃっとばかし早い話かもしれないんですけど!」
    「どういう意味!?」
    「はは……」
     遅れて食事を取りに行ったまま帰ってこないレオとセリアを待ち侘びる。人が多い食堂で空いている席がここしかなかったため、二人を待つ間ユーゴはひとりで彼らを相手にしていた。
    (レオじゃないけど、確かに話題に困るな…)
     人との距離が近いイェルシィをレオは若干苦手としている。というよりも彼女がわかりやすく女性だからなのだろうとは察せられた。今までレオの近くにいた異性はセリアだけ。長く一緒に暮らしてきて異性というよりも兄弟のように思える存在だ。だからこそレオは女性に慣れておらず、まごつくことが多かった。
     冷めかけのお茶が入ったカップを再び持ち上げて、妙な緊張で乾く喉に一口分流し込む。ほぼ同時にイェルシィが思いついたように手を叩いた。
    「あっ! 気高いくんにちゅーできる!?」
    「イェルシィくん!?」
     ――ユーゴが咽せたことを誰も責められないだろう。
     口にしたお茶が気管に入り苦しむ姿にマクシムが慌てた。
    「ほら! ユーゴくんもビックリしているじゃないか! 僕もビックリするよ!? キミはホントになに言ってんの!?」
     身を乗り出してハンカチを差し出すマクシムに礼を言って断りつつ、自分のハンカチで口元を拭った。そしてイェルシィに言われた言葉を頭で咀嚼して、やっと理解する。
    「え……? わ、わかりません……?」
    「ユーゴくんも真面目に答えなくていいんだよ!」
    「真面目に答えてもらわなくちゃ楽しくないじゃないですか〜! 恋バナですよ、恋バナ!」
    「またそれ!? その、こいばな? 要素はどこにあったのかな!? まったくキミはいつも突拍子のないことばかり……」
     イェルシィは林檎ジュースをストローで吸い上げて笑う。天真爛漫という言葉が似合う、明るい表情だった。向けられる彼女の視線が居た堪れなくなり、ユーゴは小さく身じろいだ。
    「あの……どうしてそんなことを? たしかに僕やセリアはいつもレオと一緒には、いますが……」
     ギョッとした顔をしたのはマクシムだった。
    「キミ、わざわざ掘り下げてしまうのかい?」
    「いや、勘違いされたままなのも居心地が悪いじゃないですか」
     ユーゴの言葉にマクシムは「ああ……」と神妙に頷いた。しかし、イェルシィは不服といった様子で頰を膨らませる。
    「別に隠さなくたっていいんだぜェ? 愛の形なんて人それぞれさ〜」
    「先輩のその妙な確信はなんなんですか……」
     もはや呆れの色が濃くなる。頭痛すら感じてきた頭を片手で押さえ、ため息を隠さずに漏らした。
    (レオのことは、好きだけど。それは幼馴染とか家族に向けるものだし。何より男じゃないか)
     セリアとの仲を疑われるほうがまだ理解できる。しかし不思議とそんな噂が立ったことがないのは、ユーゴとセリアの間にいつもレオがいるからなのだろう。
     実直で素直な分、レオは手がかかる。見守っていないと次の瞬間には自ら危険に飛び込んでしまうのだ。だから代わる代わるユーゴとセリアは彼に対して世話を焼いてしまう。困ったものだと何度肩を落としただろうか。
     ただ、それを嫌かと問われれば――。
     イェルシィが目を細めて、楽しそうに微笑んだ。
    「たっていっつも幸せそうな顔して、気高いくんの世話してんじゃん?」
     人の騒めきの奥から、レオとセリアの声が聞こえた気がした。
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