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    melonsoda_oishi

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    10/01WEBオンリーで展示する小説②です
    ショットさん誕生日ネタのサテショの短いおはなし
    10/02追記 パスワード外しました

    いっぱいに満たしてえーと…この状況は一体何なんだろう。
    目の前にはテーブルいっぱいに出された山ほどの料理と、その向こうでどこか不機嫌そうにこっちを見ているショット。
    「なんだよ、腹減ってないのか」
    「…いや、減ってる、けど」
    「じゃあ食えよ。金なら俺のおごりだから気にするな」
    休日の昼過ぎ、やたら真面目な口調のショットに「飯まだなら来い」と呼び出されたかと思ったら、無言の彼に引きずられるようにレストランに連れてこられた。呆然としている間に食べ放題コースを予約していたらしいショットが大量の料理を注文していて、今に至る。
    「…ショット、俺なにかやった」
    「何も。いいから食えって。」
    ここのレストランって美味しい分高くて、俺でも数えるほどしか言ったことがないくらいだ。何かの記念日というわけでもなく、サプライズにしては妙に機嫌悪そうな表情のショットの気持ちが推し量れず、俺はご馳走を前にしばし困惑した。何かいたずらでも仕込んでいるのかとも思ったが、このショットの表情は冗談めいたものではない。
    …が、それはそれとして空腹だ。休日だからって寝すぎて、今日は起きてから何も食べていない。ショットのほうを気にしつつも手前に置かれたハンバーグを引き寄せてほぼ飲み込むように胃に収める。肉を噛みしめると口の中にじゅわりと肉汁があふれて、食欲で頭がいっぱいになる。俺は一旦食べ始めるとどうにも止まらなくなるところがあるようで、気がついたときにはテーブルを埋め尽くしていた料理はほとんど空になっていた。
    一息ついて顔を上げると、向かいでアイスココアを飲んでいるショットの表情が、先程より少し凪いでいる。
    「…あの、ショット…」
    「お前ほんとすげえ食いっぷりだな。店の食材食い尽くしちまうんじゃねえの」
    俺はもう昼食ったからパフェ頼もっかな〜ケーキの新作あるじゃん、とメニューを眺めているショットは、先程までの不機嫌な様子と打って変わっていつもどおりの明るい彼で、俺はスプーンを握ったまま更に困惑してしまった。
    「…ショット、俺なんかやった」
    「ん」
    「いや、急にこんな食べ放題の店奢ってくるとかショットっぽくないというか…さっきあんまり楽しくなさそうだったし…」
    「いーや?サテツは悪くねえよ。つーか顔に出ちまってたかな…不肖ットさんだぜ」
    ショットは気まずそうに、アイスココアの氷をマドラーでかき混ぜている。
    「最近、お前ギルドいるときあんまり食わねえじゃん。家で食うからってさっさと帰ったりしちまうし、飯誘っても断るし…それでなんか、モヤっとしちまった。」
    「…あ」
    ギクリとしてしまう。たしかに最近、ここ2週間ほどの俺は、ギルドでは一番安いドリンクと食事を頼むだけで、退治が終わった後もどうしても空腹になったら早々と家に帰り夜食を食べたりしていた。
    「サテツ、今まで金欠でも飯を減らしたりはしなかっただろ?腹痛えのかって聞いても違うっていうし、スマホばっか見てるし…だからなんか、俺…」
    「不安にさせちゃった…」
    「…」
    ショットは うつむいてほとんど透明の氷だけになったグラスを見つめている。
    「チョコレートケーキでございます」
    「あ、俺です…」
    ショットの前に置かれたチョコレートケーキにより、しんみりしかけた雰囲気がなんだかワヤワヤになる。
    「…そうだよ、なんかお前、やっぱり別の女子とか好きになったんじゃないかって」
    「そんなこと」
    「…そうだよな、お前がそんなことするわけねえんだ…疑うなんてショットさんらしからねえよな。でも、俺、お前がそうやって腹いっぱい飯食ってるところ見ねえと落ち着かなくてさ」
    「それで俺を連行したと」
    「ま、そういうことだ。悪かったな付き合わせちまって」
    言葉にして少し安心したのか、ショットはチョコレートケーキを口に運ぶ。
    「…おいしい」
    ふ、とショットの表情が綻んで、今日初めて彼の笑顔を見られたことに気付く。
    ショットは普段の退治中は冷静で周りに気を配っているけれど、こうして美味しいお菓子なんかを食べているときはふわふわした優しい笑顔を見せる。俺はそんなショットの笑顔を見ていると噛みつきたいようなたまらない気持ちになるんだ。
    「ショット…ごめん、俺、ショットが嫌で飯を断ったりしてたわけじゃねえんだ」
    「ダイエットとか?」
    「えーと…」
    それは2週間くらい前、ギルドでのことだった。
    「う~んどうしよう」
    俺は翌月に差し迫っているショットの誕生日に何をあげようか悩んでいた。
    ショットは甘いものが好きだからスイーツにしようかと思っていたのだけれど、つい先程ドラルクさんが
    「ショットさん、来月誕生日だろうケーキのリクエストがあればこのドラちゃんに任せたまえ」と話しかけているのを聞いてしまった。どんな高級スイーツもドラルクさんの手作りの前には勝てないだろう。
    ショットに好きだって言って彼が受け入れてくれたのが去年の冬だから、これが恋人になって初めての誕生日だ。俺は器用な方じゃないけれど、ショットが少しでも喜んでくれるようなものをあげたい。普段身につける服や靴なんかはどうかと考えたけれど、ショットの好みのものを俺一人で揃えられる自信はない。
    いっそ彼に欲しいものを聞いてしまおうか、いや、それはなにか違う気がする…。隣でメロンソーダを飲んでいるショットに視線をやると、彼は雑誌の広告を眺めていた。ギルドに置かれていた旅行雑誌のようで、よほど気になるのか、広告をまじまじと見つけては何か考え込んでいる。
    ショットは旅行に興味があるのかもしれない。旅行をプレゼントするのもいいかもしれないな、とこっそりショットが見ている雑誌を覗き込んだ。
    「…あ」
    それは東京にある高級ホテルのスイートルームだった。内装なんてお城の中みたいで、一泊で俺の1ヶ月分の食費くらいある。
    「…おい、どうかしたのかサテツ」
    「アッいや、なんでもねえ」
    俺は給料の大半が食費に消えてしまう。ショットが見ていたホテルに一泊するお金なんてあるはずもなかった。それでもショットが高級ホテルに泊まりたいというのなら、絶対叶えてやりたい。
    それで、俺は少しでも貯金をするため食費を削ることにした。
    「…それで、飯の誘いとか断ってたのかよ」
    「ウン…まだそんな貯まってねえけど」
    ショットは安心と呆れの混ざった表情で、空の食器の山になったテーブルを眺めている。
    「無茶してたんだろ…よっぽど腹減ってたんじゃねえのか?」
    「…正直お腹はぺこぺこだったけど、ショットをびっくりさせたくて…」
    「あーそれだけどなサテツ、お前多分勘違いしてるぞ」
    「…え?」
    「だって俺、別にそのホテル泊まりたいってわけじゃねえし」
    ショットはスマホを取り出して少し操作すると、画面を俺に向けた。
    「俺が見てたのは、こっち。陰になってて見えてなかったんだろ」
    ショットがこちらに向けたスマホ画面には、「ホテルのスイーツビュッフェ記事特集」の字。
    「スイーツビュッフェ…」
    「そ。うまそ~だなって思って見てたんだわ。どうせだったらお前も誘おうかなって思ってたのに、お前最近様子変だし」
    「ひぃ~ごめんなさい」
    完全にすれ違っていたことに気付いた俺はジャンピング土下座の勢いで謝った。
    「全く心配したんだからな。罰としてスイーツビュッフェにつきあえよ」
    テーブル越しにショットの手が伸びてきて、小さい子どもにするように俺の頭を撫でる。
    「…ショット、俺、おれ、勘違いしてお前に心配かけて、ばかみたいだ…」
    「ばかじゃねえよ。お前も俺を喜ばせようと思って、腹減ってんの我慢してたんだろ?そういうとこ、好きだぜ」
    「う、うぅ~…ショット、好き…」
    「へいへい。まだ食べ放題の時間残ってるから、早く注文しな。お前は腹いっぱい食ってるのが可愛いよ」
    「へ、か、かわ…」
    ショットの優しい笑顔を見ていると、俺は吸血鬼でもないのに無性に首筋に噛みつきたくなり、その欲求をかき消すように運ばれてきた料理にかじりついて思考を霧散させた。


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    Replies from the creator

    melonsoda_oishi

    DOODLEモブ→Δットさんのお話
    微妙にモブショもしくはショモブっぽいかもしれない
    夢のつもりで書こうとしたけど夢っぽくはないです
    誘蛾灯ぱちり、カメラ越しでも美しいあのひとをシャッターにおさめる。もうこれで何枚目だろうか、俺はあのショットと呼ばれている吸血鬼に恋をしていて、彼を隠し撮りしてはその写真を集めているのだ。このためだけに吸血鬼も撮影できるカメラを購入し、長くつらい仕事が終わった後、毎晩のように彼が通る路地裏に潜んでいる。いくら昼間に仕事で苦しいことがあっても、自室に帰り、彼の整った横顔や仲間に見せる優しい笑顔を眺めているとどんな苦痛も忘れられた。隠し撮りなので、その笑顔はこちらを向くことは決してないけれど。これが悪いことなのはわかっている。だがそれでも構わない。可愛らしさの中にも美しさのある、あの姿を眺めていられるだけでいい。あの蒼白い肌に触れてみたいし、端正な肢体を組み敷いて、歪んだ表情を見てみたい。いや、彼に覆い被さられたい。彼になら血の一滴まで吸いつくされても構わないと思うようになっていた。きっと心優しいショットさんですら、こんなストーカー行為を許してはくれないだろう。それでも、忘れることなんてできないくらいには自分は彼に心奪われてしまっていた。
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